第15話 お宝発見!
廊下の先のどん詰まりにぽつんとある開かずの扉。
扉本体は木でできた引き戸になっていて、持ち手はヘコんだふすまの持ち手のようになっている。その手前の廊下の両脇は木張りの壁が長く続いていて、窓や明かりもなく薄暗い。
「ここの扉なんだけどな。引き戸の取っ手のところを押すとカチッと音がするんだけど……」
それでも開かないと、彩友香はガッカリしていた。ふむ……。
俺は取っ手の丸い部分をグッと押す。カチリと音がして何かの仕組みが動いたようだ。その状態でミカゲは念入りに、廊下の壁をチェックする。タローはというと、床に持ってきたポータブルDVDをセットしようとしていた。
「なにサボろうとしてんだ! 気になるからそれは休憩時間までしまうこと!」
彩友香は、タローが出したポータブルDVDを仕舞おうと床に手を伸ばす。
カコン。
軽い仕掛けの音がして、床の木の節目が沈む。節目模様の部分がスイッチになっていたようだ。
「そしてこっちもか」
コンコンと壁を細かく叩いていたミカゲは音が鈍い部分を調べ、木の模様に隠れた小さな四角い板を押す。
カタカタカタ……と壁が鳴り、天井の板が斜めに下がり階段が現れる。
「あ、あった――!」
扉はフェイクであり、本当の隠し部屋は階段の上にあった。天井の上の空洞を見ると、昼間なのに真っ暗だった。
「スイッチが3つとはなぁ。すげぇ仕組みだ」
感心したようにミカゲが言う。
俺もこの屋敷の作りはすごい、と思った。複雑な仕組みが壁の向こうで動いていると思うとワクワクすんぜ!
彩友香が階段を登っていく。俺とミカゲがそのあとに続き、タローはDVDを一生懸命にしまっていた。俺たちの通常運転である。
「ま、真っ暗だべ……」
階段を上がった先の部屋は、真っ暗で壁すら見えない。ただ高さが2m弱ぐらいだった。それがわかったのは、ミカゲの髪の毛が天井に触っていて、ミカゲはそれにびっくりしたからだった。
「髪の毛が天井に触って嫌なところだな、ここはよ」
「こう真っ暗だとなにがなんだか……」
「ま、前に進んでみるべ……」
彩友香が少しづつ前に進んでいく。
こんなときに昨日倒した影なんかでないよなぁ、出たら3人ともアウトだろ……と俺は考えた。
「むぐはっ!!」
彩友香が変な声、というか叫び声? を出した。その声に俺は必要以上にびっくりしてしまった。だって影が出たら、ってちょうど考えてたんだもん!
っていうかそもそも、その彩友香の叫び声はおかしいだろ……。
「……大丈夫?」
ミカゲはいつ頭をぶつけるかとヒヤヒヤしていたし、タローはまだ階段を上がってきていなかったので、俺が心を落ち着かせて彩友香に声をかける。
「う、うん。なんだろ、これ……」
と彩友香が何かを見つけたとき、俺の胸がボウっと青く光った。俺はペンダントを取り出すと部屋全体が青い光で満たされる。
その光で部屋の全貌が明らかとなった。
部屋は3畳ぐらいの大きさ。高さは予想通りの2m弱。床は木張りだけど、壁と天井は白い土壁で塗り込めてあり、窓が一切ないところだった。まさに隠し部屋という感じの雰囲気である。
「おお、2階にあるけど、雰囲気は地下室だねぇ」
と感心して声を出した。
周りの壁は音を吸収する素材で出来ているようで、俺の声はあまり響かない。
「こ、これは……忍者セットだべ!」
先ほど彩友香が触ったのは、綺麗に折りたたまれた忍者の衣装であった。その他に小刀が2本と鎖鎌、いろいろな形の手裏剣みたいなものが袋に乱雑に入って置かれていた。
「あとは何もないようだな。お宝っていうのはそれか」
キョロキョロと、部屋全体をミカゲが見回して確認する。青い光は部屋に入ってから光っているから、ここが龍脈の出入り口のはずだが……。
やはりここの勇者じゃないと道はひらけないか。
俺とミカゲは部屋を探りたかったけど、それより彩友香は忍者セットに我慢が出来なくなったようだった。
ガッと床に置かれたセット一式を彩友香は持ち出し、俺たちを引き連れて素早く回転扉の前まで戻ってきた。
「裏の部屋で着替えてくるから、そこで待ってて」
顔を真っ赤にし、先ほどの忍者セットを抱きしめながら彩友香はくるん、と回転扉の向こう側へ行く。
タローは彩友香が入っていった扉にべったりと張り付き、舐め回すように解錠の部分を探していたが、見つからなかったようでひどくガッカリしていた。
30分後。
ミカゲのタバコが5本目に突入し、俺とタローはリリスたんがメイドに取り付いた怪人を必殺技で浄化したあたりをポータブルDVDで見ている途中で、彩友香が回転扉を開けて出てきた。
「に、似合うべか……?」
そこには、深い紺色の本格的な忍者衣装に着替え、髪の毛をポニーテールに結った凛々しい彩友香がいた。残念黒ジャージの頃とは違って、かなりよく似合っていた。
「サイズがあたしにぴったりなんだべ! これ!」
「た、大変よく似合っているぞ、リリス!」
タローがリリスたんの親玉の口調を真似て、彩友香を褒め称える。
こういうときだけ行動が早いよね、タローは。
その言葉に彩友香は気を良くしたのかふふん! と鼻息を荒くし、胸を張りこっちを見る。
「あ、似合ってるよ……ハハハ」
「いいんじゃねーか?」
……カチッ。
ミカゲのタバコは6本目に突入した。
俺も口調がサクヤっぽくなったけど、不意打ちで女子の服装を褒めろだなんてものすごく高度な技術だよ。少なくとも俺とシアンはそういうことが苦手だし。
だけど俺たちの適当な返事にも、彩友香は満足した様子でくるくると何かのポーズをとっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます