月下少女

@Re0128pop

 第一話 青白くわたしの心を照らしながら

 月が出ていた。

 今日は満月だった。

 わたしは自分の部屋から、その大きな月をずっと眺めていた。

 月は青白く光り、あたりの暗闇をぼかすように照らしていた。

 その光が、わたしの部屋にも容赦なく入ってきてひどく散らかった狭い空間を照らしていた。

 あまりにも月がまぶしいので、わたしはうつむいた。そのまま月に背を向け部屋を見渡す。

 床には学校の制服のスカートや下着が放り捨てられ、色とりどりのビーズが転がっていた。

 部屋の机には使い古されたノートとペンがあった。

 そうだ。わたしは此処で最期の親への手紙を書こうとしていたのだ。世間一般でいう『遺書』なるものである。

 

『遺書』なんて建前だけで、はっきり言って何を書けばいいかわからなかった。

 あんな家族に言い残すことなんてなかった。

 世の中から見ればきっとこれは単なる「反抗期」というものなのだろう。

 皆、「親死ね。」とかよく見えない友達たちに向けて遠まわしにSOSを求める。面倒な連中だ。

 誰かに励ましてもらい心の闇が晴れるのであれば、それはきっと反抗期だ。

 しかしわたしは違う。

 自分勝手で、人の話を聞かず、暴虐的な母。

 そんな母を相手にし、心が壊れてしまった父。

 父の罵りに耐え切れず、家出をし犯罪を犯し、気づけば帰ってこなくなった兄。

 簡単に言って我が家は崩壊していた。きっとわたしも三人称視点で見れば、欠点だらけで、お世辞にも『いい人』とは言えないだろう。

 

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