デススナイプの正体
決意表明を全校の前で行った日の放課後、俺はSD専用の校舎の裏へ行った。
「あ、シン。来たね」
「なんだよ、舞。急に呼び出して」
「少し話があってさ」
「なんだ?」
「今日のあの魔術。何か分かる?」
シンは考えるように顔を歪ませる。
今日のあの魔術。それはシンが《
「なあ、舞。学校のセンサーの範囲はどのくらいだ?」
「センサーは500mよ」
「この学校に探知系の魔術を使える奴はいるか?」
「いるよ。それでも約2キロが限界ね」
「そうか。それでも2キロ以内は完全にビルや住宅街だ」
考え込んでいると舞が静かな声で尋ねた。
「なんでシンはあれに気づけたの?」
「俺を疑ってんのか?」
「そうしたくはないけど、そうせざるを得ないもの」
舞は苦虫を噛み潰したような顔をして言った。
「あんまり言いたくないと言ったら?」
「あまり期待しないほうがいいわね」
「はぁ。しょうがないか。そろそろ言おうかとは思ってたんだがな」
「ごめんね。でも、この学校の委員長として聞かなきゃいけないから」
「俺さ。実は
「
「それも
舞は驚きのあまり口を半開きにしている。
それも無理はない。魔力眼はこの魔力に満ちた世界のあらゆる魔力を可視することができる特殊な眼で、普通ならモノクロで映るものなのだが彩眼はその魔力を色付きで見ることができる眼だ。
世界中の人間分の1の確率を引き当てた上に千年に一度が重なった人間が目の前にいるのだから。
「な、そ、それを信用しろというの?」
「じゃあ、舞はなんで今 《
「えっ!?」
動揺を隠しきれていないと言うように舞は小さく声をあげた。
「指摘されたからって両足に
「はぁ、もういいよ」
「信用できる?」
「するしかないでしょうが」
舞は、ビシッとシンの頭を軽くチョップする。
「でも、なんで今まで私に勝てないときがあったのよ」
「だって舞は
「へぇ、じゃあシンと戦う時はそうするね」
「やめてくれ」
ひとしきり笑うと舞は真剣な面持ちでシンに言った。
「今日の魔術。また、あるかもしれない。それが誰の仕業かもわからない。こちら側が持ってる情報は皆無よ。何かわかったら教えてね」
「もともとそのつもりだよ。
「うん。じゃあ、今日はもういいよ。ありがとう」
「おう。あ、舞」
「ん?何?」
「少し厄介な事になるかもしれない」
その瞬間、舞の表情に一瞬、本当に一瞬だけだったが緊張が走ったのが分かった。
「どういう事?」
「なんでかわかんないけど今日一日中親指が
「そう…。とりあえず何かあったら連絡して」
「おう」
そうして、シンと舞は別れた。
シン:帰路
「はぁ、ほんと今日は疼きっぱなしだな」
するとシンの上空で
「!?」
パチパチパチ
「流石の反応速度ですねぇ」
「誰だお前」
シンは愛刀である『妖刀桜』を顕現させる。
「おやおや、刀を納めてください。私は今は戦う気は無いですよ」
「じゃあ、今度戦うのか?」
「・・・それはどうでしょうかね」
「肯定だな。それで?あんたは誰で、俺に何の用だ?」
「自己紹介が遅れていまいました。私は
「そんで、何の用だ」
シールス・クラッツはよくぞ聞いてくれたと言わんばかりにニヤッとした。
「今日の砲撃はいかがでしたか?」
「あんたらだったのか、あれを超遠距離からぶっ放してきたのは」
「ええ、約4キロ先から撃たせていただきました」
「あんたが撃ったのか、あれ」
「ええ、私はスナイパーの類が得意でしてね」
「スナイパーじゃなくて新しいなんかだな、その異常さは」
「お褒め頂き感謝します」
「おう、ポジティブで何よりだ」
「それじゃ、私はこれにて失礼しますね」
「そうか、もう二度と俺の元へ来るな」
「それはできませんね。あなたは私たちにとって大きな罪に等しい」
「ハッ、
「それではまた今度伺いますよ」
「は?いや、ちょ…」
ヴォン…
転送魔法だろうか、もしくは幻影だったのか一瞬で消えてしまった。
それにしてもまずい。非常にまずい。あんな魔術とスナイプ技術を持ったものが学校に乗り込んできたらひとたまりもない事になるだろう。
「指の疼きが止まった。嫌な予感ってこれだったのか?それとも…」
シンは空を仰いだ。
空は何も知らぬとでも言うかのようにただただ雲が流れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます