第6話 信長、桶狭間の戦い

時代は戦国時代なのだが、技術力は現代よりも高く、宇宙にも行けるほどだった。

世界の核戦争に巻き込まれ、地球は放射能に包まれてしまった。

各国は、領土を地球から切り離し、ロケットエンジンで打ち上げた。


人類は、宇宙に出たのだ。



宇宙歴史0年。


人類は、宇宙に出ても戦いを続けた。

新型兵器、宇宙鎧侍を開発して、全宇宙の覇権を争うようになってしまった。


人は、滅びなければ、戦うことを止めないのだろうか?



ここは宇宙尾張。信長の清州城。


「大変だ! 大変だ! 一大事です!」


信長の元に火急の報せがやってきた。


「うるさい! 何事だ!」


信長も騒がしくて気分を害する。


「い、い、い、い、い!?」

「い、だけでは分からん! はっきり申せ!」

「今川義元が攻めてきました!」

「なに!?」


寝耳に水とは、まさにこのことであった。ついに駿府、遠江、三河を支配する東海帝王の今川義元が本格的に尾張攻めを始めたのだ。


「駿府から今川義元、自ら2万5000の兵を引き連れて、尾張に侵攻中です。」

「2、2、2、2万5000だと!?」


信長は、今までの戦と違い、桁外れの兵士数に驚きを隠せない。


「つ、ついに来たか・・・今川義元。」


信長は、いつかは対決する日が来るとは思っていたが、まさか、こんなにも早く来るとは思っていなかっただろう。


「軍議を行う! 全員を集合させろ!」

「はは!」


こうして、今川の大群とどう対応するのかの軍議を行うことになった。


「宇宙鎧侍生産工場へ向かう!」


信長は、宇宙鎧侍生産工場へ行く。



ここは宇宙尾張。宇宙鎧侍生産工場。


「サル! サルはどこだ!」


信長は、工場全体に響き渡るように、大声で叫ぶ。


「はい、殿、お呼びですか!?」


サルが慌てて、信長の前に現れる。


「サル、聞いておるか?」

「今川義元が攻めてきたことですね?」

「そうだ!」


信長だけでなく、宇宙鎧侍生産工場、宇宙尾張の町中は、今川義元が攻めてきた、話題でもちきりだった。情報の漏洩であった。


「サル! 例のものは用意できているか?」

「殿の宇宙鎧侍に新兵器を実装しておきました。」


サルは、なにか新兵器を装備させたみたいだ。


「違う! 俺が言っているのは、強襲兵器の方だ!」

「はい! 数も十分確保できています。」

「おまえは軍議に参加しなくてもいいから、2000機に例のものを付けろ!」

「2000機!?」


何かは分からないが、信長には奥の手があるみたいだ。


「殿? 2000機はご冗談ですよね?」

「サル、死にたいか?」

「2000機、やらせてもらいます!」

「よし! それでいい。」


信長は、サルに無茶苦茶な要求をする。


「いつ頃できる?」

「10日もあれば・・・。」

「5日でやれ!」

「5日!? 無理です!?」

「サル、丸焼きになりたいか?」

「5日でやらせていただきます!」


信長が生きている間、サルの受難は続く。



ここは宇宙尾張。信長の清州城。


「軍議を始める!」


信長の号令で、軍議が始まる。


「どうする?」

「どうする?」

「ああでもない!? こうでもない!?」


軍議は、紛糾した。それもそのはず、今川の軍勢は2万5000。それに対し、尾張は、どんなに集めても5000なのだから。


「降参しましょう!」

「そうだ! 戦うなんて、自殺行為です!」

「やめましょう! 死にたくない!」


反対意見と。


「今川がなんぼのもんじゃ!」

「武士らしく、戦場で死にましょう!」

「相手が多くても、戦ってみないと分からないじゃないか!」


交戦意見。


「・・・。」


さすがの信長も即断即決とはいかなかった。余りにも今川との数の差があったからだ。約5倍の敵に戦いを挑めと言うのが無理な話である。


この頃の信長の家臣は、森、柴田、林、池田、河尻、佐々、前田、佐久間、丹羽などであった。信長オールスターと考えれば、半分くらいのメンバーである。


今川義元は、宇宙駿府から、宇宙尾張まで、わずか5日でたどり着いた。その間も信長は軍議を繰り返すが、結論はでなかった。



ここは宇宙尾張。今川義元は水掛城に入った。


「これより尾張の織田家を滅ぼすぞ!」

「おお!」


今川の勢ぞろいした家臣は、血気盛んである。弱小の尾張の織田家を倒して、手柄を立てようという楽勝ムードが漂っていた。


「いけ! 松平!」

「はあ!」


ついに今川の尾張侵攻が、本格的に始まった。本体は到着したばかりだったので、三河駐留部隊だった、松平元康に出撃命令が下された。



ここは宇宙尾張。松平元康の陣営。


「殿、先陣ですか?」

「仕方がない。我々は、今川の中では、いつ死んでも構わないのだから。」


松平は、三河松平氏の人質として、今川に与している。この頃の松平家の家臣は、石川家成、酒井忠次、そして、初陣の本多忠勝だった。


「忠勝、怖いのか?」

「いいえ。早く手柄を立てたくて、うずうずします。」

「無理はするな、死んでしまっては意味が無い。」

「分かりました。」


この時、のちの猛将の本田忠勝は13才だった。桶狭間の戦いが初陣になった。


「殿、我らの宇宙鎧侍があれば、戦場で死ぬことはありませんよ。」

「そうだが、油断をするなということだよ。」


松平元康は、安全に安全に無理はしないで石橋を叩いて渡ることを選択する。だから幼少期からの人質人生でも生き抜いてこれた。


「相手が、吉法師なら、なにを考えているか分からないからな。」


松平元康と信長は、幼少期を共に過ごした仲のいい友達だった。それだけに戦いたくはないという思いもある。しかし、戦わなければ自分が生きてはいけない。


「これが戦争ということか・・・。」


松平は、独り言のように、寂しくつぶやく。


「殿、なにか言いましたか?」

「いや、我々の任務は、大高城に兵糧を届けることだ。大した戦闘にはならないと思うが、気を引き締めていくぞ。」

「おお!」


松平元康は、松平専用の宇宙鎧侍に乗って出陣する。酒井と石川も専用機を持っている。初陣の本田は普通の宇宙鎧侍だった。カラーは、今川に属しているのでオレンジカラーだった。やはり松平と酒井、石川の専用機は普通の宇宙鎧侍と何かスペックが違うのが感じられた。


松平は、兵糧の補給部隊として、宇宙尾張に出陣して行った。



ここは宇宙尾張。信長の清州城。


「・・・。」


信長は、動かなかった。動けなかったと言うべきなのかもしれない。今川軍が目前に迫っても軍議は進まなかった。


「殿! 明日には今川が本格的に攻めてきますぞ! 攻めるのか、籠城するのか、ご命令ください!」


家臣たちの問いかけに、信長は答えることが出来ない。


「殿!」

「殿!」

「殿!」


家臣たちは、大国の今川を相手にする恐怖と不安から、信長に強く詰め寄る。


「・・・。」


そんな所にサルが現れた。


「殿、2000機に取り付け作業完了しました。」

「そうか! でかした! サル!」

「お褒め頂き、ありがとうございます。」


信長は、軍議が紛糾する中、ニタニタ笑っていた。またサルは、不眠不休で働いたので、バタっと倒れ込んだ。


こうして、織田家の桶狭間の戦いの決戦前日の軍議は、戦の方針も決まらないままだった。



ここは宇宙尾張。今川義元の水掛城。


「よくやった! 松平!」

「お褒め頂きありがとうございます。」


松平元康は、大高城に兵糧を無事に届けた。城の周囲にいた織田軍は、ほぼ松平の乗る宇宙鎧侍、たった1機に全滅させられた。


「明日は、一気に信長のいる清州城まで落とし、尾張を手に入れるぞ!」

「おお!」


今川軍は、元から楽勝モードだが、今日の松平の勝利に、浮かれまくった。


「明日の作戦を伝える!」


今川義元は、機嫌よく明日の作戦を指示する。


「朝比奈泰朝の軍が鷲津砦を攻めろ!」

「御意!」


今川の大将、名門の朝比奈家がついに動く。


「松平は、丸根砦を攻めよ!」

「はい! かしこまりました!」


松平も最前線に送られる。


「本陣も水掛城から大高城に移動するぞ!」


今川義元も前線に近い、大高城に移動する。そのために松平に兵糧を運ばせたのだった。


「全軍で清州城を包囲するぞ!」

「おお!」


勝つことだけ、負けることを考えない、今川軍の士気は意気揚々と高かった。


(ここで「人生50年」が使用可能か、カドカワ・カクヨムと小説家になろうに、権利関係を問い合わせ中。なぜ聞くか? 小説家になろうは、警告なしで1発削除を行うからだ。)


(小説家になろうから連絡あり。著作権は50年だそうな。OKをもらった。もともとコーエーテクモも使ってるしね。)


(この時点で、調べ物が多くて、1話10万字で書くのが大変だった。しかし、間が空いて考えると、10話目、10万字で本能寺の変まで、いけるのか、不安。作者が書くのがしんどいので、続編を止めた。本能寺の変を10話でなく、9話目に来るように、確実に完結できるように、構成を見直した。)



桶狭間の戦い、決戦、当日。


ここは宇宙尾張。今川義元の水掛城。早朝3時。


「進軍開始!」

「おお!」


今川義元の号令で、ついに今川の尾張攻めが始まった。先陣は松平元康が丸根砦を、朝比奈泰朝が鷲津砦を攻撃する作戦である。



ここは宇宙尾張。信長のいる清州城。


「zzz。」


信長は、まだ寝ていた。


「殿! 一大事でございます!」


家臣が信長の寝所まで、大慌てでやって来る。


「ん・・・んん!? なんだ、騒がしい!?」


信長は、目を覚ます。


「今川が攻めてきました! 丸根と鷲津の砦を攻めるつもりです!」


その報せを聞いて、信長は突然立ち上がり、喜んだ。


「ついに来たか!」


これまで今川の尾張出現にも、動じなかった信長が静寂を破る。


「能を舞う! 準備せよ!」


信長が気合を入れようとする。きっと家臣は、そんなことしている場合じゃないでしょう!? と、ドギマギしていただろう。


(幸若舞、敦盛。作者、不明。制作時期も不明。平家の頃にはあったらしい。改めて書くが、小説家になろうの運営に問い合わせると、「著作権は50年」と返信あり、OKは頂いた。)


「人間50年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり・・・。」


信長は、幸若舞の敦盛を舞う。ただ無心に、ただ踊る。


「飯を食え!」


信長は、湯漬けを立ったまま食べる。ご飯にお湯をかけて食べるものらしい。


「戦の準備を知ろ!」


信長と家臣たちは、今川との命懸けの戦いに赴く準備をする。SFなので、体に鎧兜を身に着けるのではなく、パイロットスーツを着る。


「どうか勝たしてください!」


信長は、家臣たちを連れて、熱田神社に武将たちを連れて、必勝祈願。最後は、神頼みであった。


「我々は、これより善照砦に移動する。」

「おお!」

「全員、宇宙鎧侍デッキに集合!」

「おお!」


ここからが信長SFである。宇宙鎧侍デッキに来た家臣たちは、壮大な光景を目にすることになる。


「これは!?」

「サルに5日で取り付けさせた。1夜城とはいかなかったがな。ハハハハハ!」


信長とサルが密かに進めていたSFが準備万端であった。


「信長、出陣する!」


こうして信長軍は、戦に赴いた。



ここは宇宙尾張。今川義元の水掛城。


「報告します。」

「うむ。」

「丸根砦で松平さまが、織田の武将、佐久間を討ち取りました。」

「うむ。」

「鷲津砦で朝比奈さまが、籠城する織田軍を壊滅させました。」

「うむ。」

「丸根、鷲津の両砦に続き、中島砦も陥落させた模様です。」

「うむ。わかった。」


報告を聞いている今川義元は、笑顔を隠せなかった。自然に笑いがこみ上げてくるのだ。今川は、連戦連勝であった。


「この本陣を大高城に移動させる! 一気に尾張を手に入れるぞ!」


今川義元は、相手を甘く見て、油断してしまった。今川軍の最前線に兵は2万。本陣には5000もいればよい所だった。また戦闘にならないと思われた本陣には、戦闘経験者の猛将、手練れはいなかったと思われる。


「雨か? 天も今川の勝利を泣いて喜んでいるぞ! ホホホホホ!」


この時、雨が降り始めた。もし今川義元が油断と調子に乗っていなければ、進軍はしなかっただろう。どんな相手でも、軽んじるなということである。



ここは宇宙尾張。今川義元の本隊がいる桶狭間。


「雨が強くなってきて、前が見えませんな。」

「これは晴れるまで止むしかないな。」

「止んでからでも、織田ぐらい、楽勝でしょう。」


今川の本陣は、激しい雨で視界が悪くなり、雨宿りをしていた。この時、今川義元の側には、約300人の兵士しかいなかったという。


「尾張を入れれば、領地が4つになるのう! ホホホホホ!」


今川義元も本陣を前進させるぐらいなので、織田の軍勢など気にしていなかったのだろう。


ボ。


なにか音が聞こえたような気がした。


ボボ。


今川義元は、音が近づいて来るような気がした。


「何の音だ?」

「さて?」


音の正体は、誰にも分からなかった。


ボボボ。


しかし、音は近づいてくる。


「なんだ? 鳥か? イノシシか?」


今川義元には、何の音かは分からない。


「信長だ!」


その時、降りしきる雨の中、今川の陣中に現れたのは、尾張の宇宙鎧侍だった。背中には、ロケットブースターを装備している。これがサルに2000機に装備させた秘密兵器であった。


「な、な、なに!? 織田軍だと!?」


今川義元は、目を疑った。突然、目の前に織田軍団があらわれたのだ。しかもロケットブースターを付けた機体が、2000体も。


「ど、ど、どこから現れた!?」


今川義元は、動揺する。それもそのはず、織田の軍勢がどこから現れたのか、分からないのだ。



信長の作戦は、こうだ。


丸根砦と鷲津砦で今川の主力を足止めして、時間を稼ぐ。その間に信長は、ロケットブースターを装備した、強襲部隊で、戦場の上を飛び超え、手薄な今川の本陣まで攻め込んできたのだ。


「今川義元! 見つけたり!」


信長は、戸惑っている今川義元を見つけた。


「おのれ! 信長め! こうなったら宇宙鎧侍で勝負を着けてやる!」


今川義元は、自分のオレンジカラーの今川義元専用の宇宙鎧侍に乗り込む。大将機らしくスペックは、今川家では1番良い性能である。輝きもオレンジーが虹のように7色くらいトーンで分けられた、豪華な色使いだった。


「雑魚は・・・引っ込んでろ!」


今川義元に織田の宇宙鎧侍が挑んでいくが、簡単に切られて破壊されてしまう。


「私を舐めるなよ!」


腐っても今川義元。駿府、遠江、三河を支配し、東海の覇者と言われるだけのことはあり、宇宙鎧侍の操縦もなかなか上手だった。


「俺がやる!」


信長が今川義元との直接対決を挑む。


「おまえのせいだ、おまえのせいで、私の計画が無茶苦茶だ!」


今川義元は、信長に対して怒りまくっていた。


「邪魔する者は、俺が全て斬り捨てる!」


信長も数では負けているが、総大将の今川義元の首を取れば、この戦いに勝利できる。気合の入り方が違った。


「いくぞ!」

「こい!」


両者は突進し、刀と刀を交える。激しい火花が飛び散る。


「織田如きが! 織田が今川の邪魔をしていいと思っているのか!?」

「今川が織田の邪魔をしてるの間違いだろう!?」


信長と今川義元は、何度も何度も刀をぶつけ合う。


「今川の大群を見たら、戦わずに負けを認めぬか!」

「諦めなければ、数が少なくたって、勝てるんだよ!」

「私の上洛する計画を・・・よくも、よくも台無しにしてくれたな!」

「上洛のことより、今は自分の命を心配した方がいいんじゃないか!」


信長は、今川義元がこの期に及んでも、織田家を弱国とみなし、眼中にない物の言い方に怒りを覚えた。


グイン!


信長の感情の高まりに、空け者システムが起動する。信長の宇宙鎧侍と剣の刃が赤い炎のようなオーラに包まれる。


「なんだ!? 信長が燃えている!?」


今川義元は、初めて見る宇宙鎧侍の変化に、驚くしかなかった。


「くらえ! 必殺! 信長斬る!」


信長の赤い刀の必殺の1撃が今川義元を襲う。分かってくれていると思っておるので、今更と思っているのだが、「信長斬る」とは「信長kill」とかけている。


「ギャア!? 私がこんな所で、夢果てるのか!?」


今川義元は、最後の言葉を言った。


ドカーン!


今川義元のオレンジカラーの宇宙鎧侍が爆発した。


「今川義元、信長が討ち取ったり!!!」


信長の声が戦場中に聞こえるような大声で叫ぶ。


「おお! 今川義元を討ち取ったぞ!」

「我々の勝利だ!」


信長軍で歓喜の声が上がる!


「殿!? 殿が殺された!?」

「信じられん!? 一旦退却だ!」


今川軍は、錯綜する今川義元の死亡情報に、2万の大群は混乱する。ただ今川の兵士たちは、戦地に取り残される危険があるので、今川軍は一斉に撤退を始めた。


「今川が退却し始めたぞ! 我々の勝利だ!」

「エイエイオー! エイエイオー!」


織田軍は、勝利に歓喜の声をあげた。兵力差5倍以上の絶対に勝てない戦いに、信長は勝利したのだった。


「100%充電完了。」


信長は、火縄銃にロケットブースターをつないで、エネルギーをチャージしている。火縄銃には、いつもの10倍以上のエネルギーを充電で来た。


「ハイメガ火縄銃、発射!」


小高い桶狭間の山の上から、とてつもない隕石の熱エネルギーのビームを発射する。


ドカーン!


撤退する2万の今川兵に向けて放たれた。


「ギャア!?」


今川義元を失った今川軍は戦意喪失、ただ逃げることしかできなかった。今川軍2万の兵は、半減の1万くらいになってしまった。今川軍は、宇宙駿府まで退却するしかなかった。


「終わったな。俺たちの勝利だ!」


桶狭間の戦いは、信長のロケットブースター奇襲により、織田家の勝利で幕を閉じた。誰もが予想しなかった番狂わせが起こったのである。



ここは宇宙尾張。大高城。


「さっき上空を飛んでいったのは、渡り鳥ではなく、吉法師の軍勢だったのか。」


松平元康は、信長が空を飛んで奇襲するのが見えていたようだ。


「殿、我々もここにいては危険です。」

「そうだな。」


松平の家臣は、石川、酒井と初陣の本田であった。


「どうしたものか?」

「このまま織田に投降してはいかがですか?」

「それでは、今川義元の時と同じく、こき使われて危険な任務ばかり押し付けられるだろう。」


松平は、この時、自分たちの身の振り方を考えた。そして、閃いた。


「独立しよう。今川義元が死んだ今、我々が今川に従う理由が無い。それにバカ息子の氏真では、今川をまとめることはできないだろう。」

「今川の三河の岡崎城を奪うというのは、どうですか?」

「それはいい。もともと松平の領土だからな。」


こうして松平の軍勢は、宇宙尾張から宇宙三河に移動する。


「でやあ!」

「どりゃあ!」

「とお!」


松平の軍勢は、織田軍に遭遇したり、今川の残党と戦いながら移動した。



ここは宇宙尾張。今川の岡部元信が籠城する鳴海城。


「私は信じないぞ! 殿が討たれるなどあるもんか!」


岡部元信は、孤立無援だが、織田軍の攻撃をことごとく防いでいた。


「困ったな、なんで落とせないんだ!?」

「無理に攻めても、こちらの被害が増えるだけです!?」

「鳴海城を手に入れれば、宇宙尾張から完全に今川を追い出せるのに!?」


織田の家臣たちは、岡部の奮闘ぶりに困り果てていた。


「俺が直接、話をつけよう。」


ついに織田信長、自ら岡部と話をつけようとする。


「岡部、どうすれば城を明け渡してくれる?」


信長は、籠城する岡部に大声で呼びかけた。


「殿の首を寄こせ! それが条件だ。」


岡部は、死しても今川義元に忠義を尽くしていた。それがパワーになり、籠城しても陥落させることが出来ないのだった。


「分かった。義元の首を、そなたに返す。」

「いいだろう。城から出て行ってやる。」


こうして信長と岡部は和議を結び、岡部は今川義元の首を持って駿府へ帰った。



ここは宇宙三河。松平元康は岡崎城に着いた。


「おお、岡崎城だ!」


松平たちは、身構えるのだが、誰もお城から出てこない。


「おかしいな?」

「殿! 空っぽです! 岡崎城には、誰もいません!」

「なに! 本当か!」


こうして、松平元康は、労せずに旧松平領の岡崎城で独立を果たした。


「私は、独立を記念して、名前を徳川家康に改名しよう!」


ついに徳川家康が誕生したのである。



ここは宇宙駿府。今川氏真の駿府城。


「父上! うええええん!」


氏真は、父、今川義元の死に涙を流し叫び続けた。


「殿、軍備を整えて、宇宙尾張の織田家へ、仇討ち合戦をしましょう!」

「そうだな! 父上の敵を討ってやる!」


その時だった。火急の報せが入る。


「一大事です! 越後の上杉謙信が関東攻めに南下してきます!」

「なんだと!?」

「甲斐の武田から援軍要請がきています!」


今川義元の死は、今川、武田、北条の3国同盟の綻びをもたらした。敵対する越後の上杉謙信が攻めてくるというのだ。


「殿、義元さまの死があり、駿府、遠江、三河という領内も不安定になっています。ここは自国の治安の安定を優先させた方が良いのでは?」

「そうだな。」


そこに、また火急の報せがやって来る。


「殿! 一大事です!」

「今度はなんだ!?」

「松平元康が三河の岡崎城で独立を宣言し、三河を制圧しました!」

「なに!? 松平が謀叛だと!?」

「はい。名前も徳川家康と名乗っているそうです!」

「くそ! 松平め! あれだけ可愛がってやったのに!?」


信長は、尾張を、家康は、三河をあっさりと平定した。総大将の力量で、領地の統一するスピードが、こんなにも違うのだ。


「私に、どうしろというのだ!?」


これだけ不幸が続くと、一から自分で成功してきた訳ではない氏真では、何をどうしていいのか分からないのだ。生まれだけよく、苦労も努力もしていない氏真では、今川家が滅びるのも時間の問題だった。



ここは宇宙尾張。信長の清州城。


「よく来た。竹千代。」


宇宙三河で今川家から独立した、徳川家康が来ていた。


「その呼び方はやめろ! おまえのことも吉法師と呼ぶぞ?」


信長の幼名は、吉法師。家康の幼名は、竹千代である。


「いいよ。吉法師は、別に恥ずかしくない呼び名だもん。」

「おいおい!? それでいいのか!?」


信長と家康は、子供の頃に遊んだ記憶があるので仲良しだった。


「それでは改めて。よく来た、松平元康。」

「だから徳川家康に改名したと言っている!?」

「え!? 人質止めたの!?」

「あのな・・・ハハハハハ!」


信長と家康は、こんなバカな話し合いができるほど、仲が良かった。


「すまん、今は徳川家康だったな。」

「そうだ。」

「まさか、おまえと一緒に戦える日が来るとはな。」

「私もだ。死を選ばず、耐えに耐え抜いてよかったと思っている。」


2人は考え深かった。


信長は、織田家による尾張の内乱の日々。やっと尾張を平定できたと思えば、大大名の駿府の今川義元が攻めてきた。数で負ける信長は、奇策、奇襲の連続でなんとか乗り切ったのである。SFらしく、科学技術を向上させて、次々と新兵器を開発していく。


家康は、幼少期から今川家に人質として、屈辱に耐える日々を過ごしてきた。それでも家康は腐らずに、表には出さないが、裏で自分の才能を磨いてきた。おかげで三河に秘密の宇宙鎧侍生産工場を持ち、独立と共に、高い開発技術力で、三河を平定した。


「それでは、宇宙尾張の織田家と宇宙三河の徳川家は、これに同盟関係を結ぶ!」


パチパチ、両家の家臣からも拍手が起こる。織田家と徳川家は、利害関係の一致から、同盟を結ぶことになった。


徳川家康は、三河を平定したが、隣国に駿府、遠江に今川家。信濃に武田家と自分よりも強大な隣国に囲まれていた。これをなんとかするためにも、西の尾張の織田家と同盟を結べば、西を考えなくて良くなる。今川と接していて、強国と隣接するのは大変と知っている信長が裏切ることは、まずないからだ。武田は、今川義元が死んだ隙に、越後の上杉謙信の南下を食い止めなければいけなので、大名になりたての徳川の相手をしている暇はなかった。家康は、今の間に遠江を今川から奪いたいのだった。


信長は、義父である斎藤道三が殺した、美濃の斎藤義龍を討たなければいけなかった。また、同時期に、伊勢志摩にも進出している。これは東に今川義元という脅威を排除したから可能となったのである。今は東には、信頼できる徳川家康がいてくれるので、東の心配をしなくて良くなった。


これから、信長の快進撃が始まるのであった。


つづく。

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