悲しくて海
鐘辺完
合間に脚注入るバージョン
ひとはどうして哀しくなると海をみつめに来るのでしょうか。
また歌詞から引用してるけど。
※歌詞は渡辺真知子の代表曲のひとつ
『かもめが翔んだ日』 作詞:伊藤アキラ
なぜ悲しいのかよくわからない。とりあえず今、心配事はあるにはあるが、その心配はおいとくことにして割り切ったはずだ。
でもなんとなく悲しい。
だから海へ来た。
海っていっても大阪湾だし、そんなにきれいじゃない。対岸に関西空港が見える。離着陸する飛行機。あの中に乗ってる人それぞれも悩みを抱えているのだ。とか言ったらなんでみんなそんな悩んで苦しんでるのに生きてるん? 滅んだほうがいいんじゃないのか。いや、そう考えるのはよくない。病んでいる。どうせ人は苦痛を避けるために今という刹那を生きている。
死ぬことへの恐怖はないが、死に至る苦痛が怖い。話がつながってないような気もするが、病んでいるから仕方ない。
いや「仕方ない」とかいうのもよくないか。
海に向かって「バカヤロー!」とか大声で叫ぶとかなかなかやる場所ないぞ。ぜんぜん人がいないところでやればいいけど、近所に漁港もあるし民家もある。近所迷惑だ。
しょうがないからとぼとぼ海岸を歩く。なんか歩くだけでも人はささくれた気持ちを和らげる効果があるとかなんとか。セロトニンだっけ? そういう物質が心を安定させてくれるんだったような。セロトニンで合ってたっけ? ドーパミンでもエンドルフィンでもなかったことはわかってる。グリセリンはまったく関係ない。オキシトシンってなんやったっけ? オキシジェンは酸素だったっけ?
※セロトニン
神経伝達物質。「快楽物質」「幸福物質」とかも言われる。
20分くらいの散歩などの軽い運動で分泌されるらしい。
「ドーパミン」「エンドルフィン」「オキシトシン」も神経伝達物質。
「グリセリン」は甘味量・保存料・保湿剤など、食品添加物や衣料品などに使われる。粘度の高い液体。
※オキシジェン
「oxygen」。酸素のこと。通常カタカナでは「オキシゲン」と書くが、『ゴジラ』(1954年)において登場する「オキシジェンデストロイヤー」のイメージが強くてこう表記されている。
話がそれた。それてもまったく問題はないんだが。むしろ悲しい気持ちを、そんな系統のカタカナ単語を並べて遊んで紛らわせることができるならいいじゃないか。
ノコギリンとかグロンケンとか。これは『帰ってきたウルトラマン』の怪獣だ。
なんか話に困ると特撮ヒーロー系の話に持っていく癖は良くないかもしれない。特に指摘はされたことはないが。
ノコギリンにノコギリはなくてグロンケンにノコギリがついてる。何を言ってるかよくわからない人は検索してみてくれるといい。ノコギリンはノコギリの代わりにグロンがついてるわけじゃない。
※ノコギリン
別名:昆虫怪獣 『帰ってきたウルトラマン』第26話「怪奇!殺人甲虫事件」 登場。
おおむねクワガタムシな姿。
※グロンケン
別名:八つ切り怪獣 『帰ってきたウルトラマン』第27話「この一発で地獄へ行け!」 登場。
両手が回転ノコギリになっている。一回前に「ノコギリン」が登場したのにその次の回にノコギリな怪獣が出てくるんだから混乱してもしょうがない。
グロンてなんやねん?
検索したら『ウルトラマンタロウ』に登場する怪獣だ。『帰マン』より後の作品なんで、グロンよりグロンケンのほうが先に登場してるから、グロンケンにグロンはついていない。それは間違いない。
※グロン
別名:木枯らし怪獣 『ウルトラマンタロウ』第32話「木枯らし怪獣!風の又三郎」登場。
ずんぐり体型の単眼の怪獣。グロンケンの「グロン」部分ではないことはすぐわかる。もちろんまったく無関係。
海に来てこんなことをひとりで考え続けている自分が可愛いと思う。こんなときに自分を愛せるんだ。こんなどうでもいいこと言ってるときの自分しか愛せないのはあんまりよくないけど。
人と雑談してるときもだいたいこんな話になったりするけどね。こういう話に付き合える人というのはそんなに多くない。だから友達が少ないのか。ほとんどいないのか。
あ、やっぱりどうでもいいこと考えてるほうが精神衛生にいいや。
海は広いな。広いっても関西空港が正面にあるし、その向こうは淡路島だし、太平洋側どころか、日本海よりもさらに狭い。関空までの距離なら、琵琶湖の湖岸からの眺めのほうが視界に占める水面の面積が広いかもしれない。そういえば昔、滋賀県にいた知り合いが「滋賀県民はさみしくなると琵琶湖をながめに行く」とか言ってた。
小さなもんだ大阪湾。いや、関空あるからやけどね。もうちょっと大阪市のほうに行けばもうちょっと広いんだが。
海を見ていると、気持ちが紛れる。
悲しくて海 鐘辺完 @belphe506
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