60話 「狂気の人形」
私は後悔した。何せ道から外れたことをしてしまったからだ。
「ヒガンバナお姉様! このあとどうしたら良いんですか!?」
隣で妹のスイカズラがパニックになりながら私に問いかけてくる。
私は何も答えることができずに呆然とするしかなかった。
私達姉妹はどこで間違えたのだろう。昨夜のことを思い出しながら私は後悔した。
⎯⎯⎯
入浴した後のことだ。
「あとはボタンちゃんとバラちゃん、あの子達を制裁しなきゃね」
「そうですね、特にボタンちゃんは一回私達が厳しく注意したことがあったのにまた問題を起こしたから今度は徹底的にやらないと」
私達姉妹は妹のボタンとバラが繭様に対し許されないことをしたのでどうするか話し合った。
特にボタンは言うことを聞かないので徹底的にしつける必要がある。
早速行動に移りたいがどうやって呼び出そうか悩んだが先ずは濡れた体を手入れするのが先だと考えられない後回しにする。
……。
私達は心春お姉様に体を手入れしてもらった。
「はい、ヒガンバナちゃんきれいにしましょうねぇ」
心春お姉様は手際よく私の足のパーツを外す。
「……んっ」
パーツをはずされる瞬間いつも変な感じがする。
心春お姉様はそんな私の気など知らずに私を手入れしてくれる。
この人がお父様の跡を継ぐんだ……。
わたしは心春お姉様を観察した。心春お姉様は私達と作りが違う、同じ人形だが心春お姉様の方が人間に近い。
何で心春お姉様がお父様の跡を継ぐの? 心春お姉様はお父様に直接造られてないのに……私達の方がお父様の跡を継ぐのが正統じゃないの? 何故なのお父様……。
「ん? どうかしましたぁヒガンバナちゃん」
「……いえ、何でもないです」
私はなんてことを考えてるんだろう。
自己嫌悪する。
その後胡蝶ちゃんが来て一騒動を起こしたがこのあとのある出来事で私達姉妹は理性を失った。
……。
ボタンとバラは反省していなかった。二人は騒動を起こしたのにも関わらず久我様と二人でお風呂に入っていやらしいことをしていた。
この事を心春お姉様の部屋の前で聞いた。
分からない……妹達が何を考えているのか分からない。
怒りが沸く。
私とスイカズラはお父様に認められるように頑張っているのにそれを嘲笑うかのように妹達は身勝手な行動をする。それが私達の行動が無駄なことをしていると言っているようで腹が立つ。
私とスイカズラは静かに心春お姉様の部屋の前から去りボタン達の部屋に行く。
「んふふ、それじゃあバラゆっくり休みなさい……後でまた来るわ」
「はぁ、はぁ……わかりましたボタンお姉様……はぁ、はぁ」
バラの喘ぎ声が終わるとボタンが部屋から出てきた。
「あっ……これはヒガンバナお姉様とスイカズラお姉様何かご用で?」
ボタンは私達にわざとらしく質問する。
「そうよ、毎夜にこの部屋の前を通るとバラの苦しそうな声が聞こえるから心配できたの」
「かわいい妹のバラをあなたが苛めるからかわいそう」
ボタンは怖い顔をして私達を睨む。
この子はバラのことになると必死になる、そこをつつこう。
「お姉様方も夜にお互いを痛めつけあっているのでボタンはお姉様方の体が心配ですわ」
……こいつ。
そうだ、ボタンは以前たまたま私達の行いを見たのだ。それ以来ボタンは私達を警戒している。
「心配してくれてありがとう……それよりボタン、あなたまだ体の手入れをしてないでしょ?」
「心春お姉様はもうお休みされてるから私達が変わりにしてあげるわ」
「いえ……大丈夫ですわ、それじゃあ私は帰るのでお姉様達お休みなさい」
一筋縄ではいかないようなのでやりたくなかったが脅すことにする。
「バラはちゃんとあなたが手入れしてあげたの?」
「えっ?」
「私の予想だとあなたはバラを綺麗にしてあげるどころか汚してしまったように思えるのだけど……クスクス」
私とスイカズラでバラの話題を出すとボタンはあからさまに動揺する。
「やっぱりあなたじゃダメねここはお姉様である私達に任せなさい」
「久しぶりにバラと触れあいたいわ」
「やめて!」
ボタンが叫ぶ。
うまくいった。
「…………ヒガンバナお姉様達のお世話なります」
「あらそう、最初から素直に従いなさい」
「さぁ、私達の部屋に行きましょう」
ボタンの手を引き連れて行く。
……。
「さぁ、ついたわボタンちゃん楽にして良いわよ」
「失礼しますお姉様」
「今体を手入れしてあげるわね……スイカズラ、ボタンちゃんの体のパーツを取ってあげて」
スイカズラは私の指示に従いボタンの腕のパーツを外し始める。その際ボタンは嫌そうな顔をした。
私はタオルを出しボタンの体を優しく拭いてあげる。
「ねぇ、ボタンちゃん何故繭様にあんなことをしたの? もしかしてあなた女の子が好きなの?」
「いえ、そういうわけではなく……実は繭様がバラの体を洗おうとしたので嫉妬してしまって……んっ」
スイカズラがもう片方の腕を外す。
「へぇ、それで繭様に意地悪しようと思ったのね……悪い子」
引き続き私はボタンの体を優しく拭いているとボタンが体を震えさせているのに気がついた。
「あなたバラと一緒に久我様とお風呂に入ったそうね、何故?」
思わず手に力が入る。
「っ、それは私は大我様のことが好きで……」
……嘘ね。
「あなた妹の恋人を横取りするつもりだったの? ……最低ね」
「あなたは淑女じゃないわ淫売よ!」
私とスイカズラはボタンに言葉責めをした。
「……るさい」
「何か言ったかしら?」
「うるさいって言ったのよヒガンバナお姉様!」
まずい……これ以上逆らわれると怒りで手を出しそうになってしまう。
「何故大我様とお風呂に入ったかですって? そんなの胡蝶が羨ましかったからよ! あの子だけ愛されるなんてずるいそんなの許さない!」
ボタンは観念して語りだした。
「私達はお父様に愛されてないわ、だって私とバラが一番美しいのに、私達で十分なのに……なのに、胡蝶を造ったわ」
私達がお父様に愛されていない? そんなの聞き捨てならない。
「そうよ、きっとそうよ……お父様は満足なされてないから自分の納得の行くまで姿形の同じ私達姉妹を造ったんだわ! 私はそれが我慢できない、だから胡蝶から大我様を奪ってこの家から出ようとしたのよ!」
ボタン……やめて、それ以上言わないで。
「ヒガンバナお姉様達もそうなんでしょ? お父様に認められないから自己嫌悪で体を傷つけてるんでしょ、そんなことしても無駄よ、だって私達はお父様の失敗作なんですもの……くくく、いつまで経っても認められないわ」
「やめてぇ!!」
私は我慢出来なくなり後ろからタオルでボタンの口を塞ぎなが体を押さえつけた。その時ボタンの頭から髪飾りが落ちたが気にしないことにする。
「スイカズラ、ボタンの両足を取って!」
「んーん!?」
ボタンは暴れるが両腕がないので難なく両足を取れた。これでボタンは身動きが取れない。あとはタオルを口により深く詰め込みボタンをしゃべれなくさせる。
「スイカズラ、先に土蔵にボタンのパーツを持って行って……私はいつもの日課をやってからボタンを担いで行くわ」
「わかりましたヒガンバナお姉様」
スイカズラは大変そうにボタンのパーツを持って出ていく。
深夜で他の姉妹達は寝ているので見つかる心配はない。
私は着物を脱ぐとタンスから鞭をとりだした。
「……お父様……申し訳ございませんヒガンバナは悪い子です……んんっ」
バシンっ。
自分の体に鞭を打ち付ける。
体に伝わる痛みが反省の証だ。
バシンっバシンっバシンっ!
「すみません……いっ、ボタンちゃんが悪い子になったのは私のせいです……んんっ……反省しますからお父様ヒガンバナを許してくださいぃっ!」
胸、背中、太ももへと鞭を打つ。その間ボタンは私のことを恐怖の面持ちで見ていた。
……。
「さてボタンちゃん行きましょうか……よいしょっと」
着物を来て懐に愛用の鞭をしまうと私はもがくボタンをかついで土蔵へ向かった。
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