第10話 冒険者になろう
ふ~~ん、気持ちいい、やっぱりお風呂はいいわぁ、生き返る~
そう、お風呂、ただいま入浴中。ビルさんに紹介して貰った宿はちょっと小金を持つ商人や下級貴族なんかも泊まる『金の猫足亭』というお宿、お風呂は金の猫足付きのバスタブじゃなくて大きめの桶ですが。それでもお風呂はお風呂、肩まで浸かれる深さがあるのだよ。
【悪フラ】の世界は日本文化に近いものがある、食べ物しかり、風習しかり、日本人の衣瑠が風呂好きなのは当然(一部、昔し汚ギャルと呼ばれた者達の様に風呂嫌い人種もいるが)だが今世のエレーニアもお風呂好きだった。
「はふ~」
湯船に浸かりながら今後の予定を考えよう。
まず外せないのは【冒険者ギルドで冒険者登録】楽しみだな、wkdkが止まらないw
次に【資金の確保】これは盗賊のおかげで幾分か懐が潤ったが宿代もかかるし必要だ。この『金の猫足亭』一泊二食つけたら1日1万メルかかる。お風呂のお湯は別料金だが私は自前なので問題なし。厩舎は二千メル、ただしレイディを連れてったら他の馬がビビったので長期は無理かもしれない。一度返すか?
後は【パパンに手紙を書く】事、置き手紙し忘れたからな。一応生きてる事知らせといた方がいいと思う。あの仕打ちにもきっと何か私には計り知れない事情があったかもしれない。
そうだ【イチニの街を観光】と言うのもアリか。よその領都なんて滅多に来ることなかった…って言うかイチニ自体初めて来たんだよ。エイデ辺境伯領は隣の領だけど来ること無いんだよ。反対のデュナン領はうちのディヴァン領と王都の間にあるから頻繁に通るけどそれでもデュナン領都にも数える程しか行ってない。通らせてもらうのに毎回挨拶なしってわけにいかないからね。
そして最後は【お買い物】だ。大変かもしれないが、一度インベントリの中を確認せねばならない。コレ一番やりたく無いけど無駄な買い物避けるためには必要よね。はあぁぁぁ。しかし時間がかかりそうなのでこれは後日としよう。
まず、さっさと終わりそうなことから。お風呂終わったらお昼ご飯食べてからまず【パパンに手紙を書く】
早く冒険者ギルドに行きたいけど、不在がバレて捜索されてもウザいし。この世界には郵便システムがある。名は
スワロウホークってツバメなのか鷹なのかはっきりしろよと言いたい。スワロウホークは仕込む事で決まった都市間を行き来する。イチニの速文屋に手紙を託せば王都の速文屋にスワロウホークが飛んで行く。速文屋から目的の場所までは人の手で配達されると言うわけだ。スワロウホークの飛行速度は時速100キロも出るらしい。どこの領都も王都との便はあるはずだ。冒険者ギルドに行く前に速文屋へよろう。さて、手紙の内容だな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
親愛なるお父様へ
突然の出奔をおゆるしください。
王太子に婚約破棄され悪評のついた自分に、今後良い縁談があるとは思えません。
このままではお父様だけでなく、いずれ侯爵家の後を継ぐクリストフにも迷惑をかけてしまいます。
私はこのまま侯爵令嬢の身分を捨て、一人の人間として世の中を見て回りたいとおもいます。
どうぞ私のことはいなかったものとしてください。けれどエレーニアは決して家族のことは忘れません。どこにいようともお父様の娘であり、かつ矜持を持って生きて行く所存です。
お父様、お母様、そしてクリストフ。皆様の健康と侯爵家の今後ますますの繁栄をお祈りしております。
エレーニア
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
此処まで書いたら早々連れ戻しには来ないだろう。折角のファンタジー世界への転生、テンプレ求め…ゲフンゲフン。見聞を広める為世界を見て回ると言うのはいい考えだよ。
5歳で婚約してからやれお妃教育だの、勉学で首位を取れだのぎゅうぎゅうの生活を強いられて来たエレーニアに息抜きが必要よね。
あ、出かける前に厩舎寄って行こう。
レイディの様子を見に行ったら『あたちも一緒に行くのなのヨ』って一緒に行きたがったけど、門の所での事もあるし、あんまり連れ歩かない方がいいと思って、ワシャワシャフィーバータイム(早い話がなでくりまわすだけ)と、角猪の肉でご機嫌とってお留守番を言いつけておいた。
宿の主人に速文屋の場所と冒険者ギルドの場所を訪ねておいた。ちょうど宿→速文屋→冒険者ギルドの順でいけそうだ。まず速文屋に向かいつつイチニのメインストリートをぶらぶらしつつGO!
速文屋で無事手紙出しました。たけえよ速文。王都のディヴァン侯爵邸まで三千メル。配達確認(受取り証にサインもらって戻って来る)までやると更に千メル。100円未満で全国どこでも届く日本の郵便は安いのか?
さて、イチニのメインストリートは東西と南北の十字になっていてクロスする中心に大きな施設がある。当然冒険者ギルドの建物もここだ。
木造三階建、中央の大きな入り口は両開きの扉が今は開けっ放しになっている。ワクワク。
中に入ると大きなフロアーは入り口近くの一部が二階まで吹き抜けになっていて左右に階段がある。突き当たりにカウンター。ワンスペース2メートル間隔位に仕切られており、カウンターの上20センチくらいから天井まで鉄格子がはまっている。オープンカウンターじゃないんだね。それが5つほどあり、いちばん右のカウンターだけ低くなっていて幅も倍ほどある。あ、上に買取って表示があった。
右の壁側にいくつか背の高いテーブル。いかにも冒険者って人が2、3人話をしてる。椅子はないんだね、座り込んで長居しないようにしてるのか。そして左の壁側にはボード。おっきなボードがいくつもあり依頼書らしきものが貼られてます。
く~~~っ、やっぱりこうでないと。隣に酒場がないのが残念だけど。(酔っ払いが絡んでこれないじゃんか)
ま、普通取引所って言うか仕事斡旋するハローワークみたいな場所に酒場がある方が変だよね。
お昼過ぎと言う時間のせいか人は少なく5ヶ所あるカウンターも二人くらいしか人がいない。片方がやや頭部が寂しげなオジさん、もう片方は50歳位オバさん………
お胸様の偉大なギルドの看板的な美人の受付嬢は居ないのか。はあぁ………
ソリャあね、荒くれ者も多い冒険者を相手にするんだから経験値の浅いオネエさんじゃ荷が重いよね。うん、しかたない。
気をとり直しオバさん方のカウンターへ行く。
「見ない顔だね。ようこそ、冒険者ギルドイチニ支部へ。用はなんだい」
気さくな感じだが肝っ玉母さんのような女性だ。
「冒険者登録をしたいんですが」
少し驚いたような顔をするオバさん、変な事言ってないよね?
「あんた冒険者ギルドに来るのは初めてかい?ギルドの説明は聞くかい?登録時の説明ってのがあるんだ」
「では、お願いします」
「ロッタ、新人説明入るから受付入っとくれ」
オバさんはカウンターの奥に声をかけると、奥から30歳くらいのオバさ…オネエさんがでてきた。今寒気がしたぞ。奥から出て来たオネエさんが私を見てニッコリ微笑む。
「チョットこの娘に『説明』するんで」
オバさんは奥に引っ込んだと思ったら紙束と水晶玉の様なものをカウンターに置く。
「私はランダ。イチニ支部では古株さ」
「エルと言います。よろしくおねがいします」
そしてランダさんは紙束を私の方に向け色々説明してくれた。
1.新規登録の際
この
今持って来た水晶玉の様なものがそれか。これで盗賊とかの罪状確認もするのか。
2.新規登録料は1万メル。
ギルドカードを紛失した場合、再発行は5万メル。これはカード自体が魔道具なので初回発行は格安に設定されているらしい。あと、死亡した冒険者のギルドカードを回収して来ると1枚につき1万メル貰える。これは盗むとバレるのでそう言うので小銭稼ぎはできない。
3.ギルドランクは10段階
下からGが見習い
F、Eまでが初級
D、Cが中級
B、Aが上級
S、SSが特級
SSSが帝級、ここまでくれば英雄と言われる。だが現在この国にはいないとの事。
免許証サイズのギルドカードは色が違うのでぱっと見でも判別できる様になっている。
Gが白、E、Fが赤、D、Cが銀、B、Aが金、S以上が黒。
ランクアップにはそれぞれ試験がある。内容は様々でGからFに上がるには依頼を10連続で成功する。F、Eが上がるにはは一段上のランクの依頼を5連続で成功する、D以上はギルドの指定する依頼を達成すると言う具合だ。
4.依頼を受けられるのは自分のギルドランクの1つ上まで。
ただしパーティーの場合は2つ上、クランの場合は3つ上まで受けられる。パーティーとは冒険者2人以上、クランはパーティが3つ以上組める事。6人パーティーを2・2・2で分けてクランとして依頼を受けることもできるが、相応外の依頼を受けても失敗して違約金を確う羽目になるだけなので勧めはしない。
5.理由なく1年以上依頼を受注しなければランクが下がる。
怪我などで活動できない場合などが理由として認められる。またSランク以上適応されない。
6.依頼料は表示されている金額の1割を手数料としてギルドがとる。ギルドはそこから税金を納めるので冒険者は直接税を納める必要は無い。
1割と言うのはそれなりに大きいかも。
7.ギルドからの指名依頼、強制依頼というものがあるがこれを拒否すればペナルティーがある。
ペナルティーの内容は罰金だったり、ランク降格だったりする。
「とりあえずこんなところかね。またわからなければいつでも聴きにおいで」
助かった。【悪フラ】はどちらかといえば恋愛よりのラノベでフラグを折って幸せを掴む話。冒険者という職業があることは書かれていたが、実際になるわけでは無いので詳細な設定は書かれていないのだ。ただ漠然とかってにイメージしてただけで確かめてなかった。受付嬢オバさんは用紙に書いてあることを補足しながら説明してくれた。
「これは申込書、字はかけるね?」
差し出された用紙を受け取り、首を振って頷く。
「名前、年齢、出身地、職業、職業はいくつ書いてもいいけどカードの表面に表示されるのは1つだけ。これは
ランダさんの顔を見て首をかしげる。どうゆうこと?
「魔術師と表示しておきながら魔術系のジョブもスキルも持ってなかったら、魔術師を欲しがったパーティメンバーが何て思う?」
「ああ、そう言うことですか」
「あと、表には賞罰が表示されるけど表面は非表示には出来ない。ジョブとスキルなんかは裏に表示されるけどこれは任意で非表示にできるから見られたく無いものは消しとくんだね」
「細かな説明ありがとうございました」
「これも仕事のうちさ」
私は用紙を持って後ろのテーブルで記入することにした。
申請書を記入する少女を眺めるランダにロッタが声をかける。
「また、毛色の変わったお嬢ちゃんですね。おおよそ冒険者っぽく無い」
「ああ、かなりいいとこのお嬢さん、いや貴族の令嬢かもしれないよ。『字はかけるね』って尋ねたら素直に頷くし」
平民の識字率は低い。冒険者になる者は家業を継げない次男三男や一攫千金を求めて田舎を出てくるものが多い。その場合ほぼ字は書けなくて代筆を依頼する。冒険者になればギルドで字を習うことができる。これは字が読めなければ依頼書が読めないからだ。
ギルドでは字の他、計算や各種武器の扱いなども低価格で教えている。これは新人冒険者の生存率を上げるためだ。
「イチニにとどまってくれれば面白いかもしれないけど…」
「ギルドマスターの勘って奴ですか?」
「いや、先輩冒険者の勘さ」
ニヤリと笑うとランダをカウンターに残しロッタは先ほどまでの業務に戻る。
「よし、こんな感じかな」
名前:エル
年齢:16歳
性別:女
出身:ディヴァン領
職業:魔法剣士
その他:得意武器・長剣/魔法属性・風、水、火、土
そう、職業魔法剣士にしました。『魔法チョット使えるよー、でも魔術師程じゃないよー』アピール。当分パーティ組む気もクランに入る気もないけどどこでどうなるか分からないので魔法使っても怪しまれないようにって事で。火と水は野営に絶対使うし、風と土は結界張るから。他人に見られる確率の高いの書いときました。
「これでお願いします」
申請書をランダに差し出すとサッと目を通して
「へえ、魔法も使えるのか」
「ええ、まあ」
「んじゃ、ここに手を置いておくれ」
この魔道具が鑑定機とか言う魔道具か?ランダさんは申請書を鑑定機の中(水晶玉を載せている台かと思った)にスルスルと入れて行く。懐かしのタイプライターに紙をセットするのに似てるね。それが終わると白いカードをセットした。差し出された水晶玉に手を置くと魔力が吸われる感覚と共にぽわっと青く光った。光が消えると水晶玉の下からカタカタカタカタと音が聞こえた。見ると申請書がちょっとづつ吐き出されて行く。
「鑑定機で表示されたスキルを確認したらギルドカードを渡す。カードにもその用紙と同じ情報が記憶されている。カードに魔力を流せば記憶された魔力と照合されて個人認証される、その時スキルを表示するかどうか設定しな、魔力を流せば再設定はいつでもできるよ。その用紙は持って帰っていいからね」
魔法が使えなくても魔力は誰でも持っている。魔道具には魔力を流して起動するタイプと、この鑑定機や、判定球のように触れることで勝手に魔力を感知して起動するモノもある。
用紙の内容が自分のステータスと違いがないか確認する。
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