悪役令嬢?既に詰んでいるので冒険者になろうと思う

琳太

第1話 私は誰、ここはドコ?






 通常なら学園の舞踏室で催される筈だった卒業生の為の記念式典。

今期の卒業生にはここ、オルフェリア王国の皇太子がいた為、今期の卒業記念式典は三月末に、王宮の舞踏室で大々的に行われることになった。


「エレーニア=ディヴァン侯爵令嬢、お前との婚約を破棄する!」


 おう、まるで婚約破棄断罪イベのようなセリフだな。金髪碧眼のいかにも“王子様”なイケメンがこっちを睨んでいる。どっかで見た顔だけど、う~ん、外人に知り合いはいないしハリウッド俳優でもない。どこで見たんだろうか?


「どうした、エレーニア、言い分があれば聴いてやろう」


 なんで上からなもの言いなんですか、この王子様風イケメンは。それにエレーニアって誰よ?え?私ですか?いや私はそんな名前じゃなくって倉橋くらはし衣瑠えるっていう名前の日本人ですよー(棒読)


 おりょ?なんか赤毛にブラウンの瞳のいかにも騎士って感じのマッチョイケメンと銀髪翠眼のショタ心に突き刺さる美少年に両腕を掴まれました。チョットぉ離してよねっ、勝手に女性に触れるのはセクハラなんだよって言おうとして横向いたら、綺麗な銀髪がふわりと顏にかかる。

 銀髪のウイッグなんて持ってたっけ?いやウイッグ自体持ってないけどね。


 眼の前で私を睨んでる王子様風イケメンとその腕にしがみつくピンク色の綿菓子のような(スゲーなその色)フワッフワヘアーの女の子。王子様風イケメンの横には青髪(ええ、染めてる?いやウイッグかもしくはコスプレかっ)紫眼のメガネの秀才風なイケメン…………

 なんかどこかで見た事ある様なないような。外人イケメン集団に知り合いなんていないし、あるぇ?


(ちょっと待って…)

 と、言ったつもりが口から出たのは


「お待ちください……」


 え、声が違う、セリフも違うしなんか変。


「姉上、ここは一旦退るべきでしょう」


 銀髪美少年が私に向かって話しかける。姉上って誰ですかあなた、ウチの弟は小学三年生の生意気ざかりの鼻垂れガキンチョで……

 なんて考えていた時に部屋の壁にある大きな鏡が眼に入った。


 ここはオルフェリア王国、王宮の大舞踏室で正面には舞台の様に三段ほど高くなった壇上、そこに王子様風イケメン達がいる。マッチョイケメンと美少年二人に腕を掴まれているのは黒髪の平たい顔の日本人倉橋衣瑠ではなく銀髪の美女。華美ではないがそこはかとなくゴージャス感漂うシックな紫色のドレスは見事なスタイルを強調しつつも下品でなく……あれぇぇ?どこかで……


 あ、思い出した。これ一時期ハマってたライトノベル【悪役令嬢転生、フラグは折らせていただきます】の巻頭カラーの構図。

 よくあるテンプレ小説だけど絵師さんが秀逸で大好きだった。主人公のエレーニアは乙女ゲーム【悠久のオルフェ】の悪役令嬢だった。エレーニアに転生した日本人女子高生が、死亡エンドや娼婦落ちエンドを回避して行くって、ざまぁをしつつハッピーエンドを目指すストーリー。


 と言うことは目の前の王子様風イケメンは王太子のラインハルト殿下、隣の青髪眼鏡イケメンは宰相の息子のナルサリス=ヘイレン。そしてピンク綿菓子ヘアーの女の子は【悠久のオルフェ】のヒロインのリリア=ダイクン男爵令嬢。


 え、でも私今エレーニアなの?まさか、乗り移った?いや取り憑いた?まさか……まさかの転生ですか?え、チョット、まってえ、え、えええぇぇぇっ!!!


 どゆこと?誰か説明してぇぇっ!

















 



 あの後、美少年(弟)とマッチョイケメン騎士様に引っ立てられ侯爵家の馬車に押し込めらた。馬車の中では正面に無言の…いや1人ブツブツ言ってる美少年(弟)と2人っきりだが会話は無く、屋敷に到着後は使用人に自室へ閉じ込められましたがな。

 侯爵である父は本日不在と言うことでお叱りは明日以降に持ち越しのようだ。

 なんか疲れてすごく眠い、中世ヨーロッパ風の豪華なお部屋にベッドがある。天蓋付きじゃないのね。残念だ。よし飛び込め。


 バフンッ


 思ったより硬かった。日本のベッドマットや羽毛布団の方がやらかいぞ。あ、もう眠気限界、おやすみなさい、ぐぅ~〜すぅ〜〜






 チュンチュン……ッチチチ…

 


 あたーらしーいーあーさがきたーー

  目が覚めた。うん、中世ヨーロッパ風の豪華なお部屋に豪華なベッドです。四畳半の和室にパイプベッドじゃない。

 寝て起きたら『昨日さー悪役令嬢に転生する夢見ちゃったよ、テヘペロ』って言う予定だったんだが。やっぱり天蓋は付いてない。昨夜も思ったが天蓋付きベッドに一度は寝て見たいよね~。


「知っている見慣れた天井ですわ」


 いや『知らない天井だ』って言ってみたかったんだけど、異世界転生モノのお約束ってことで。でも本当は知らない天井じゃなかったからかセリフが修正された。エレーニアの寝室だし、ココ。昨日使用人に閉じ込められたけど寝る前に見たし、ていうか天井だけじゃなく部屋も記憶にある。

【悪フラ】の挿絵にあったエレーニアの寝室。リアルにするとこんな感じになるんですね~。

  と、感心してる場合じゃありません。とりあえず現状把握。まずは自分確認。


 名前、倉橋衣瑠16歳高校2年。趣味読書(ライトノベルとネット小説)とゲーム、カラオケ。家族は両親と弟の4人。

 うん、覚えてる。だけどそれとは別の記憶がある。


 名前、エレーニア=ディヴァン。16歳オルフェリア王国の王立学園の三年生。デイヴァン侯爵家の長女で家族は両親と弟(銀髪翠眼の美少年だ)でオルフェリア王国王太子であるラインハルト殿下の婚者……だった昨日まで。


 どゆこと?衣瑠の記憶があるけどエレーニアの記憶もあるってことはやっぱり転生したのかな。で、婚約破棄断罪イベ中に前世の記憶を思い出したと。衣瑠の記憶思い出したけど熱はない、うん。

 でも私いつ死んだの?死んだ記憶ないけど。

 あれ、ラノベでエレーニアに転生した日本人の女の子の名前なんだっけ?思い出せないや。まあ、今はいいか。


 ラノベでは学園にゲームヒロインのリリア=ダイクン男爵令嬢が転入してきた時に、主人公の女の子エレーニアが前世の記憶を取り戻すのよね。で、フラグを折りバッドエンドを回避しつつハッピーエンド目指すと。でも昨日すでに婚約破棄イベントじゃん、回避できないよ。ええっとその場合はどうだっけ。ゲームのラインハルト殿下のルートだと侯爵領地にある湖の辺りの塔に幽閉だったっけ?

 小説は回避して幽閉免れてたよな………………………


 チョットまて。

 そもそもこの世界は小説【悪役令嬢転生、フラグは折らせていただきます】なのか、乙女ゲーム【悠久のオルフェ】なのか、どっち?


 乙女ゲーム【悠久のオルフェ】は実際にあったゲームじゃない、当然やったことないから、小説で語られた部分しかわからない。


 小説の方としたらすでに婚約破棄断罪イベは終了した。今更フラグの折ようが無いし、ラノベとはストーリーが変わってしまってる。

 乙女ゲームの方だとしたら、ラノベの中でゲーム内容はちょっとしか語られておらずゲーム内容自体がわからない。


 やばい!もしかして詰み?詰んだのか。

 もちつけ、いや落ち着け私。


 とにかく整理、 まず、ゲームの解っているところだけでもあげてみよう。




 乙女ゲームの題は【悠久のオルフェ】


 主人公はリリア=ダイクン男爵令嬢、現在16歳でエレーニアと同学年。

 ダイクン男爵は恐妻家で奥さんが亡くなった後ようやく妾であったリリアの母親を屋敷に迎えた。そしてリリアを正式に引き取ったのが一年前の15歳の時、そこでオルフェリア王立学園に転入してきたという設定。テンプレだな。


 プレイヤーはこのリリアになって一年後ラインハルトの卒業までにイケメンとらぶらぶになる恋愛シュミレーションゲーム……の筈。


 攻略対象は4人。隠しキャラもいるが小説には出てこなかった。


 金髪碧眼の王太子ラインハルト=オルフェント

 18歳。一途で突っ走り気味で若干おバカ。あ、これラノベ設定か。


 銀髪翠眼の美少年クリストフ=ディヴァン

 15歳。侯爵令息、エレーニアの弟。明るく爽やか、天使の笑顔でショタコンキラー。


  赤髪ブラウンの瞳の騎士ヴァンヘント=バルス(名前を呼んでも破滅しないよ)

 18歳。マッチョで騎士団長の息子で一見堅物っぽいが実はタラシ。


 青髪紫瞳の宰相子息ナルサリス=ヘイレン

 17歳。強大な魔力に悩める青年、気をつけないとヤンデレ化する。


 オルフェリア王立学園は貴族の子息令嬢が14歳から18歳までの5年間通うことになっている。

 婚約破棄断罪イベはラインハルトルートの、ラインハルトやヴァンヘント達5年生の卒業記念式典で起る。

 ラインハルトの取り巻きであった攻略対象と婚約者であるエレーニアは当然式典に招待されているという流れで。

 エレーニアはラインハルトやクリストフのルートのライバルキャラでリリアがラインハルトとくっつくと幽閉のち自殺だったと思う。

 弟のクリストフルートだと侯爵家から追い出され娼館落ち。ヴァンヘルトやナルサリスのルートはよくわからない。


 ゲームは 料理バトルやら釣りバトルやら魔法対戦、従魔召喚対戦、魔物狩りモンスターハント、ミニダンジョンRPGなどがあってステをあげつつ攻略対象の好感度を上げる………『共に一狩行きませんか?』って誘い文句あったがそれはどうかと思うよな。

 恋愛シュミレーションゲームじゃなくってアクションゲームかよ!って一人ツッコミいれた覚えがある。



  小説の方は10歳で前世の記憶に目覚めたエレーニアが熱を出し寝込んだところから始まる。目覚めた時はすっかり女子高生の記憶が戻り、自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生した事を自覚する。そしてフラグを折り、イベントを回避しハッピーエンドに…アレ誰とくっついたんだっけ?好きだったはず・・のラノベ、ところどころ思い出せない。


 しかし小説であろうとゲームであろうと幽閉が決まってしまった今、自殺しないで済む方法を探すことが最優先か。


 ……


 ……


 まてよ、魔法対戦に召喚獣対戦ってことはこの世界魔法ありか!

 うん、エレーニアの記憶にあるよ、魔法。ヒャッホーウ!魔法だ、魔法!

 エレーニアが使えるってことは私も使えるってことじゃん、ヤッタネ………って言ってる場合じゃねーよ。幽閉自殺回避しないと終わるじゃんかよ。




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