セウスベルグの飛獣騎兵

飛瀬貴遥

セウスベルグの飛獣騎兵

セウスベルグの飛獣騎兵 プロローグ

 その場所は一面が空に包まれているようだった。

 上を見ても下を見ても、ただただ青が広がっている。

 男はその中を一歩踏み出す。

 ぱしゃん、と小さい音を立てて足下が揺れた。

 何気なくそれを見ると、足下に映るそれが空の青を映した水面だと気付いた。

 ゆるやかに波紋が広がっていくのを静かに眺める。それほど時を置かずして水面は平静を取り戻した。

 見るものが無くなった男は、再び足を動かしはじめた。

 ぱしゃ、ぱしゃ、と音を立てながら、何もないその場所をただ歩いていく。


 しばらく歩みを進めていると、突然、ごう、と風がうねった。

 その直後、頭上を何かが飛び去っていく。

 はっとして空を仰ぎ見ると、遠くに影が見えた。

 瞬時に鳥だと思った。それがどんな鳥だったのかまではわからなかったけれど。


 ――ただひとつだけ、その鳥はとても大きいのだと、一瞬だけ落ちた影を見て、そう思った。


 見たことのない風景。

 見たことのない大きな鳥。


 ……さて、ここはどこなのだろう。

 そう思った瞬間、全身から力が抜けていき、世界が暗転した。

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