第43話 村へ帰還、そしてルージュと・・・

「あっ村長!」


ピコハンはクルスとシリアを連れて村まで戻って来ていた。

門番は以前ピコハンが見込んだあの男であった。


「ただいま戻りました」

「ご無事で何よりです村長」

「なんか口調変わってません?」

「はははっルージュさんから門番町に任命されましたからね」


門番の男の後ろには後輩と思われる男性が2名敬礼をしていた。

ルージュが日雇いで新しく雇ったとの事で盗賊対策も万全となっていた。


「兄ちゃん本当に村長なんだ・・・」

「あれ?村長もしかしてそっちの二人は・・・」

「あぁ、クルスとシリアだ。ダンジョンに人捨てにあってたのを助けてね」


前回の獣人の子供に続き孤児院に子供が増えると言う事に嬉しそうにする門番町。

だがやはり人捨てにあったという事実は子供達には心の傷として残る、それを思い出し表情を一変させてクルスとシリアの前でしゃがみ込む門番町。


「お前達も大変だったな、ピコハン村長が認めたんだ。ここはもう君達の家だからな」


その言葉にシリアのクルスと繋いだ手に力が入る。

ピコハンが言った事が本当で自分とクルスが共に生き延びれるという事に感動しているのだ。

それに気付いたクルスはピコハンのズボンの裾を引っ張る。


「ん?」

「ピコハン村長、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「おっおぅ・・・」


突然対応が変わった二人に驚きながらも3人は村の中へ入っていった。

クルスとシリアは孤児院の方へピコハンの案内で連れて行かれそこで挨拶をしようと思ったのだが・・・


「うわぁ~」

「ここに本当に住めるの・・・」


二人が驚くのも無理はない、孤児院と言うかもう旅館みたいになっていたのである。

これには流石にピコハンも驚いたのだが二人が先に声を上げた事で喉まで出かかった声を止める。

ピコハンギリギリで面目を保ったのである。

その後、二人を預けピコハンは久方ぶりの自宅へと戻る・・・


「ただい・・・まっ?」


そこにはルージュとアイが並んで立っていた。

ピコハンの顔を見て嬉しそうに微笑みながら両手を広げる二人。

どちらへ飛び込むか賭けでもしてるのかと読んだピコハンは二人の間に進み二人の手を握る。


「ルージュありがとう、あの助けが無かったら死んでたかもしれないよ」

「ううん、無事でよかった」

「アイ、体に異変は無いかい?困った事は無かったかい?」

「うん、ありがとうピコハンさん」


どちらも選ばなかったピコハンだったがその3人を嬉しそうに見詰める女性が後ろに立っていた。

ユティカである。


「と言う訳で村長はどちらも選ばなかったので私の勝ちですね」

「バッバカッ!」


ユティカの台詞にルージュが突っ込みを入れる。

どうやら予想は当たって賭けをしていたようだ。


「それじゃ今夜の村長の相手は私が・・・」

「駄目・・・それは許さない」


ユティカの言葉から賭けられていたのはピコハンの夜の相手と言う事が判明したが、それよりも予想外なアイの自己主張に驚きの目を向けるピコハン。

その視線に気付き頬を染めてアイはいつもの笑顔に戻る・・・

少女とは言え女は怖い生き物であるとピコハンが知った瞬間でもあった。

その後はユティカの作った夕食を4人で頂きピコハンが風呂に入っている間に誰がピコハンの服を洗濯するのか合戦のせいでピコハンの着替えが用意されてなかったりと色々な事があった。


そして翌日・・・

ピコハンはルージュと共に魔物解体場へ来ていた。

そこには今回の収穫で在るワニの尻尾と猫の死体が在った訳だが・・・


「これ、やばいですね・・・」

「錬金術師に売れば一生遊んで暮らせる額になるそうですわ」


あの葉のついた魔物は全部鉄の素材として売られ残りの2体の魔物の価値がとんでもないという話に盛り上がっていた。


「特にこの猫の素材はやばいらしいですよ」

「あ~なんか滅茶苦茶でかい馬車みたいなのコイツが丸まる操ってましたからね」

「村長、こいつ売る形で良いですか?」

「それは任せるよ、ルージュに後は話しておいて」

「分かりました」


ピコハンはそれらの買取金額についてもルージュに丸投げする事にした。

そのお金で村をもっと大きくしてくれるだろう。

そしてルージュの顔を見るとピコハンは顔を真っ赤に染める。

今朝から直視しないようにしていたピコハン、実は昨夜ルージュがピコハンの部屋にやってきて・・・

アイとユティカには内緒なのであった。

その後、村の様子を見て周り孤児院で獣人の子供たちと二人が仲良く遊んでいるのに笑みを浮かべながら頷いていたら・・・


「村長、おっさんくさいよ」

「うるせっ」


ルージュの突っ込みに照れながら返事を返すピコハン。

本人達は普段通りしているつもりだが周りから見れば何かあったのはバレバレであった。

アイも今朝から気付いてはいたが口には出さない、今回ルージュがピコハンの命を救った事も知っているし前回自分が本当の意味で奇跡の救済を行なってもらったので今回はルージュに譲ったのである。

でも次回は・・・

そう考えるアイはおませさんであった。

そんなアイが待つ自宅へ戻ったピコハンだったがそこへ門番長が走ってやってきた!


「村長!領主様が来られてますが・・・」

「領主・・・」


ピコハンはオズラック領土の領主キャベリンの事を思い出す。

アイを侮辱され謝罪させる為だけに領主の家まで襲撃を掛けた事もあったあの領主である。


「分かりました。会いに行きましょう」


そう言いルージュと共にピコハンは村の門へと向かう。

さり気なくルージュがピコハンと手を繋いで歩いているのに気付く門番長はピコハンに向けてサムズアップをしているのだがピコハンがそれに気付く事は無かった。

そして、辿り着いた門の詰め所前にて馬車を停めてその中で待っているキャベリンと再開したピコハン。


「お久しぶりですね、キャベリンさん」

「ピコハンさん、お疲れの所悪いんですが・・・お願いがあって来ました」


あの事件以来ピコハンに対する態度が領主だけでなく関係するもの全てで変わった事に内心笑いながらピコハンは領主の話に耳を傾ける・・・


「森の地割れ内にダンジョンが発見されました」


それはピコハンがいつも行っているのとはまた違った場所のダンジョンの発見報告であった。

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