第4話 助けたルージュと組む?
「うぅ・・・」
横たわった女性の体を汲んだ水を染み込ませた布で拭いているピコハン・・・
大事な部分は一応布で隠してあると言っておこう。
そんな彼女は呻きながら意識を取り戻したようだった。
「起きたか?意識はハッキリしているのか?」
蜘蛛の毒を打ち込まれている場合も考慮してピコハンは意識の確認をする。
特にこれから冬がやってくるという事もあり麻痺毒系の毒の可能性が高いと考えていたピコハンの予想は当たらずとも遠からずと言う感じであった。
まだ知らないがダンジョン内は気候が年間通して安定しており暖かい場所は年間通して暖かいモノなのだがそんな事はまだ知らないピコハン。
それでも一度に食べきれない獲物を生かして捕獲しておけば保存食として長持ちさせる事が可能だと言うのは自然の摂理的にも常識であった。
実際にピコハンの住んでいた村でも保存食として秋に捕らえられた動物を殺さず生かしたまま冬も捌いて食べれるようにしていたのを知っていたからだ。
「わ・・・私・・・生きてるの?」
「あぁ、安心してくれ。別に変な事はしてないから」
殆ど裸の状態で大事な部分だけ布で隠され寝かされ体を拭かれているので普通なら悲鳴を上げてもおかしくない状況ではあったが先程まで死を覚悟していた彼女はそんな事はどうでもよく生きていると言う事だけが全てであった。
実際にダンジョンに12名で入ってあの大蜘蛛の巣に紛れ込んでしまい一気に全滅して次々に仲間が死んでいくのを目の当たりにしていたのもあり自分が生きているのが奇跡だと実感していたのだ。
「いつっ・・・」
「あっまだ動くなよ、ずっと変な体勢のまま固定されてたから体がおかしくなってるんだな。」
ピコハンの祖父が亡くなる時に寝たきりだったので定期的に体を動かしてやらないといけないと父親が話していたのを思い出したのだ。
ピコハンは悩む、このままここで療養させるのは無理だ。
そもそも寝る場所も簡易的なものであるし、これから冬が来たらピコハン一人ではとてもここでは生活出来ないのは目に見えていた。
「どうしたらいい・・・」
「すまないな、私のせいで困らせてしまったな・・・」
ピコハンの独り言を自分の事と勘違いした女は二度と見れないと思っていた太陽に照らされた草に手を伸ばす。
その草を撫でてその指の匂いを嗅ぐ・・・
太陽の匂いに生きている実感を感じているのだろうか・・・
「私はルージュ、君の名前を聞かせてもらえないか?」
「俺はピコハンだ。」
「そうか、ピコハン・・・すまないが君の住んでいる場所まで連れて行ってはくれないか?」
「悪いがそれは出来ないんだ。俺は村から捨てられた。」
「それ程強いのにか?!いてて・・・」
ピコハンが一人であの大蜘蛛を倒すのをその目で見ていたルージュは驚いて動こうとして痛みで悶える。
実際問題、現在のピコハンの戦闘力は普通の大人4人以上であった。
もっとも本人にはその自覚はないのだが・・・
「俺はダンジョンに捨てられたから村には戻れないんだ。」
「人捨て・・・か?」
「あぁ・・・」
ルージュも当然それは知っている、現代日本で言えば戸籍的なモノまで抹消されるこの制度は国で認められているのだ。
それが常識なのだから仕方ないだろう。
だがルージュにとってそれは逆にチャンスでもあった。
「なぁ・・・ピコハンと言ったな?私と組まないか?」
「組む?」
「あぁ、実は私の父は商人をやっていてなダンジョン産のアイテムを取り扱っている。」
「・・・」
「君くらいの強さがあればダンジョンから宝を拾ってこれるだろ?それを私が父を通して売買をするというのはどうだろう?」
「その見返りにそちらは俺に何をしてくれる?」
「住居を用意すると言ったらどうする?」
その言葉にピコハンは驚いた。
だがルージュも適当に言っている訳ではない、実際にあの場所までたった一人で行けて大蜘蛛を倒し死に掛けの自分を担いで外まで連れ出せる人間。
それがどれ程の価値があるのかルージュには分かっていたのだ。
「それに、君が望むなら私の事も・・・」
「俺はそういうつもりで助けたわけじゃない」
「そうかっそれはすまない」
ルージュ的には衰弱した今のガリガリの体を提供すると言っても頷く筈が無いなと納得したが、ピコハン的には恩義とかそう言ったものではなく、純粋に好きだからと言う事で人を受け入れたいと考えていたからだ。
少し、いやかなり妹の影響があったりするのだが本人にその自覚はない。
「でもその提案は物凄く助かる・・・」
「そうか、まぁとりあえずここでこうしてても始まらないからピコハンが捨てられた村まで私を連れて行ってくれないか?」
「だが俺はもう村には・・・」
「お前は私の恩人だ、村長さんに私の方から話をさせてもらって一時的にでも入れてもらうさ」
「・・・分かった。いつ行く?」
「出来れば今がいいが・・・くっまだ動けないか・・・」
そんなルージュに洗って干していたルージュの服を渡し着替えさせる。
「着替えたら俺が負ぶって連れて行ってやるよ」
「そうか、すまないな本当に・・・そしてありがとう」
その後、着替えたルージュを背中に背負いピコハンは数日振りに自分が10年過ごした村に戻るのであった。
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