12
お城の楽部の人達が雅やかな楽の音を響かせ、
大儺の儀に招かれた人達は今か今かと待ち構え、始められた演奏に皆の期待が
ピーッと
「本気で清めたってわけ?」
「え?」
隣に立つ千早様の視線を追うと、斎場が設けられた庭園がある南のお屋敷の屋根に、紺色の狩衣を着た神様、そして北のお屋敷で会ったお爺さん、 それから後もう二人、危なげなく立ってこちらを見下ろしていた。
ここには
……見えてないんだ。正しくは、見せようとしていない。
「ちはやさま、あれ」
「まさしく高みの見物ってわけね。……僕はこんな事しているってのに」
さらに不機嫌さを増す千早様はどうやらまだまだお怒りは消えぬよう。それでもやっぱり嫌だと逃亡しないのは責任感の強い千早様らしい。文句は止まることを知らないけれど、それでも人の為と動いてくれるのだからやっぱり良い神様だ。
「ほら、行くよ」
「あ、あい!」
気づいたら先に斎場へ入る上卿役や殿上人役の人達はもう
陰陽師役が祭文を
この祭文は簡単に言うと、
祭文は神社や地域それぞれだし、当然私の実家である浅葱神社とも少し違う。まぁ、おおよその文言やニュアンスは似通っているし、要は悪い鬼は出ていけということだ。
つまり、悪い鬼じゃなければそうしなくてもいいってことでしょう?
陰陽師役の祭文奏上が終わった後、方相氏役が矛で盾を三回打ち鳴らす。
「鬼やろう!」
方相氏役の大声に合わせ、カランカランと私達もそれに合わせて振り鼓を振る。それから逃げ
とうとう鬼役が朱門の外へと追い出された。
方相氏役に続いて千早様も外へ出た。本当なら自分に続いてくるはずの私が朱門をくぐってこないから千早様も桐生さんも振り返って私の方を見てきた。
「あしきよを のぞまぬおには ふところへ うけしおんぎを ひとはわすれじ」
私が
本物の鬼であるお二人がこんなに優しくて綺麗で、なにより人のために心を
鬼役の人の隣に立ち、
鬼役は方相氏役によく似た鬼の面をつけている。典型的な角に
手を伸ばし、その鬼の面をはぎ取った。
……ちょっと、ちょっと。鬼役ってやっぱり綺麗な人から選んだんですか? 顔面
どうしたもんかと傍にいる千早様と桐生さんに助けを求める視線を送ってみた。
「僕は知らないよ。自分でやり始めたんだから、最後までやれば?」
「ハハハ。チビはどうしたいんだ?」
うぅ。そうじゃない。
そうじゃないんだよ、千早様ぁー。
「おります。おろしてくだしゃい」
「響の言う通り可愛いかどうかは分かんねぇけど、面白いヤツだな、お前」
「ほ、ほめことばとしてもらっときます!」
響様のこと知ってるってことは、なるほどなるほど。そうですか。やっぱりそちら側の方でしたか。人間のイケメンさん達はもうお腹十分なんだもの。でも、そちら側の存在なら納得できる。
……神様ってば、結構な
「で、あいつらも言ってる通り、この後どうすんだ?」
鬼役のイケメンさんがニヤリと笑い、腕組みして見下ろしてくる。
本当はこの後もう一つ向こう、南のお屋敷の門まで出て終了となる。でも、ここは斎場の出入り口の朱門のすぐ外。このまま行くかどうするのか。完全に試している目つきだ。
「うぅ」
この儀式に参加している人はてっきり人ばかりだと思って油断してた。
だって、響様を知ってるからって良いそちら側の住人なのかは分からない。あの、ほら、例の男、皇彼方だって良いか悪いかの
このイケメンさんと一緒にこの後を続けて良いのか迷ってしまう。
「……ちなみにソイツ、響のストーカーだよ」
「えっ!?」
「なっ!」
まごまごしていると、千早様が爆弾発言をかましてきた。
それを聞いた桐生さんは、急いで私の肩を抱いて自分の方に引き寄せた。
「おい、こら! 嘘つけ! いつ俺があいつのストーカーになったんだよ!」
「あぁごめん。毎日毎日約束を取り付けているわけでもなく会いにきては要らないものを贈りつける
「それも違ぇ!」
え、えっと、収拾つかなくなりそうなんだけど、どうしたもんかなぁ?
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