新年準備は人も人外も忙しなく
1
◇ ◇ ◇ ◇
「ひとーつ、かみさまのちからはむやみにつかいません。ふたーつ、かってにおでかけしません。みーっつ、オヤツはいちにちひとつまで。よーっつ、おさけはぜったいにのみません!」
「なんか、これを聞くと帰ってきたなーって気がするな」
「ふふん」
そうだろう、そうだろう。寂しかっただろう?
東のお屋敷に帰ってきたよ、私!
この鴨居を見上げるのもだいぶ久々だもんなー。
えっと……もしかして、月単位で久しぶり!? 色々ありすぎて、あっという間だったからなぁ。
本当はまだもう少し奏様のところで修行を続けるべきだったけど、やっぱり
大広間に置かれた
後は、綾芽や綾芽と一緒に都の見回りに出かけている人達だけだ。
「……あ、いたいた。チビ、
「つくるっ! もちつきっ!」
「まだ言い終えてないでしょ。ま、いいけど。綾芽達が帰ってきたら当番表更新してるからって言ってね。餅つきはその後だよ」
「はーい」
薫くんに言われて毎日の日課を思い出す。
久しぶりの当番表。
私は今日、何に当たるのかなぁ。
「それっ」
「ぎゃっ! つめたいっ!」
ヒュッとなった私を見て、皆が笑っている。
……やったな?
「あやめがかえってきたらいいつけてやろうかなぁ」
「あっ、卑怯だぞ」
「ひきょーでいいもんねー」
べーっと
そのまま榊原さんは私の体を抱き上げて炬燵の中に入ってきた。
元々冷え性なのか、どこもかしこも冷たい榊原さんが
「さかきばらさん、ほんとつめたいねー」
「ん? あぁ、俺は心が温かいからな。ついでに広い」
「うっせぇよ!」
「勝手に言ってろ」
榊原さんがニカリと歯を輝かせながら笑みを浮かべる横で、榊原さんと仲が良いおじさん達がチャチャをいれてきた。
「なんだよ。体が冷たい奴は心が温かい
それ、私も知ってる。
自分の手をニギニギすると、ほんのりじんわり温かい。
これって、裏を返せば私の心は冷たいってこと!?
……ショックー。
「お前は子供体温だから関係ねーだろ」
「……そっか」
てっきりテレビに夢中かと思いきや、海斗さんはしっかり私の行動を見ていた。
「あ、雅ちゃん。綾芽さん達、もうすぐ帰ってくるみたいだよ」
「ほんとう?」
障子をあけて入ってきたお兄さんが、ミカンの
「もう橋の
「いってくる!」
門の方から門番さんが誰かと話す声がする。
今日の門番さんは真面目なおじさん二人だから、お互いと話すとしてもここまで聞こえるくらいの大声にはならない。きっと帰ってきた綾芽達と話してるんだろう。
私は榊原さんの膝の上から抜け出し、玄関に走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます