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◆ ◆ ◆ ◆
チビの父親が指した場所に着いた俺達は、早々に人柱にされかけている男を見つけていた。
ぐったりとしているものの、意識はちゃんとはっきりとしている男をここにいる中で一番の力自慢の
ありがとうございますありがとうございますと繰り返し言い続ける男の肩は小刻みに震えている。
助けが来るかどうか分からない絶望的な状況で、よく今日まで気狂いにならなかったもんだ。
普段なら野郎相手には絶対ごめんだが、男の肩をポンと安心させてやれるように叩いた。
「よし。お前はこのまま街外れにあった看板のところで待機だ。黒木と瑠衣を今から向かわせるから一緒に都に戻れ。おい、あと四、五人ついとけ」
「「はっ」」
巳鶴さんから来た情報じゃ、代わりとばかりにあの二人を
夏生さんから指示を受けた穂積とその他数人が指示された場所に散っていく。
こうなっちまったら温泉旅行どころじゃねーからなぁ。
……チビはすんげー楽しみにしてたから、怒ってんだろーな。
でかくなってもちびっちゃくても怒る時はいっちょ前に怒るチビの姿が簡単に想像できて、こんな時だってのにほんの少し笑みが
それを不思議そうに見てくる俺の部下達。
笑った理由を言うと、皆、深々と頷き、同意してくれた。
今のところ、まだ町の奴らに気づかれた様子はない。
……っとぉー?
「……へへっ。おいでなすったぜ?」
ガラ悪そーな奴から一見普通のおっさんまでわらわらと集まって来て、悪役よろしく鉄パイプやらバットやら持ってやがる。
さて、こいつらにはちーっとばかり
「夏生さん、こいつらの相手していーのか?」
「「始末書は?」」
おっと、綾芽と考えてることがかぶった。
そりゃそーだよな。
もしこいつらに危害を加えたってことで始末書書かされるんなら、少しは考えねぇといけねーからな。
せっかくの休暇中に余計な仕事を増やしたくもねーよ。
「……俺は今から橘に現状報告を三分いれる。その間に起きたことは見てねぇし聞いてもいねぇ。じゃあ、かけるからな?」
おっし! ウルトラ三分タイム来た!
……っつーことで。
「うちの子、今回の旅行をえらく楽しみにしてはったんですわ。不機嫌になるんやないかって、自分の心痛どーしてくれはりますのん?」
「ひいっ!」
おーっ。
綾芽のヤツ、早速手近にいた男に
人間が“悪魔”に
「海斗さん!」
……っとと。へへっ。
鉄パイプ振り下ろされてきたんだ。
一般人でも正当防衛って言えるよなぁ?
三分? 不機嫌さMAXの綾芽がこの場にいるからして、そんな時間必要ねーと思うぜ?
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