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◇ ◇ ◇ ◇



 神様の力ってやっぱり便利だよねぇ。

 行きたいところに道をつなげれば迷わず行ける。


 土石流の跡をなんとか元に戻し、みんなで綾芽達のところまで移動した。


 んん? おおっとー?


 地面に横たわる人や縄でしばられてる人。

 みんな見たことない人達ばっかりだから、ここの町の人なのかな?


 あ! 綾芽発見!


 少し離れた所に、こちらへ背を向けた綾芽、それから海斗さんと夏生さんの姿もある。


 こちらに気づいた二人に、シーッと口に指をあて、そーっと綾芽の背後にしのび寄る。タイミングを見計らい、勢いよく飛びつ……



「綾芽っ! ……んっ!」



 ……けなかった。


 ひどい。けるなんて酷い。

 しかも、襟首えりくび掴むなんて、首まるやつやん!



「あー堪忍かんにんなぁ。襲われる思ったんでつい」

「気づいてたくせによく言うぜ」

「なにっ!?」



 気づいてた、だって? 姿消すんだった!


 ……あ、でもあんまり力を使うなって約束だったや。


 なんか色々使っちゃったけど、言わなきゃ分かんないよねー。


 ……黙っとこ。



「どうせ力使ったんだろ? 薫に宿の厨房ちゅうぼうで何か作らせるか」

「へへー」



 ばれてらー。



「……んん?」

「どーしたよ」




 夏生さんのお言葉はありがたいし、いつもならそうなんだけど。


 なんか今回、あんまりお腹いてないかも。おにぎりとか食べてたからかな?



「お腹、あんまり空いてないから大丈夫。薫くん、怒るだろうし」



「こんな時間に!」って。前も怒られたしなぁ。


 私は同じてつは二度まぬ女だからね。学習できる子だから、うん。



「空いて、ない?」

「ちっともか!?」

「え? ちっともかって言われると、そりゃ少しは減ってるけど、我慢がまんできないほどじゃないかなぁ。へへっ。力を使ってもお腹空かなくなったって、それって成長したってことかな?」



 千早さまー! すごくない!? ちゃんと特訓の成果出てますよー!


 ブンブンと神様達や離れたところに立つ千早様に手を振ると、怖い顔でにらまれた。


 ちょ、調子にのってごめんなさい。

 み、みんな怖いってば。そんな睨まないでよ。


 りゅ、劉さーん!

 いやしの劉さんはいずこへー!?


 視線に耐えきれず、されどどこかに行く気にもなれず。仕方ないから自分の目をふさぐことにした。



「おい、これ大丈夫なのか?」

「分からぬ。見立て通りだとまずい」

「全くまずいように見えねーんだけど。冥府の神さんなんだろ? 寿命じゅみょうが縮んでるかどうか分からねーのか?」



 えっ!? 

 じゅ、寿命? 縮むっ!? 誰がっ!?



「分からぬわけでもないが、コレは見えぬ」

「……まぁ、気持ちは分からんでもないが」



 物騒すぎる会話が耳に入ってきたんですけどー!



「誰の寿命が縮んだのっ!?」

「……俺だ」

「……まったくなー。神さんとこに一人で乗り込んでったって聞いた時はきもが冷えたぜ」



 なんだ、そういうこと。

 冗談にアノ人いれちゃったらダメだよ。なんでも本気に聞こえるんだから。



「もう一回聞いてもかまへん? ほんまお腹空いとらんの?」

「うん! 明日の朝ご飯、なんだろね?」



 あ、でも、あるのかな? こんなことになっちゃってるし。


 帰るよねー。絶対。


 まだまだ来たばかりなのに、残念だけど仕方ない……と、諦めなきゃいけないってのは分かってるけど。


 もう少しみんなとゆっくり旅行したかったなぁ。



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