3



「パ、パパさんっ!」



 あー恥ずかしや。

 ものすっごい早口で言い切った。


 ……ん? なんだなんだ? ポトリポトリと何かが上から落ちてくる。

 ぬぐってみると……水?


 上を見上げると、アノ人が例の無表情のまま静かに目から涙を流していた。



「すげぇ。チビのやつ、神さん泣かしてやがる」

「なかせてないっ! わたしのせいじゃないよっ!」



 聞き捨てならないことを言わんでくれるか、海斗さんっ! 

 あなたもどーして泣いてるのさっ! おかげであらぬ事を言われてます。心外です。オコです。



「雅が……吾子あこが自ら我をパパさんと……」



 ……どんだけ呼ばれたかったの。恥ずかしいからやめてよ。ほら、これで涙拭いて。


 ……あ、これ台拭きだ。



「はい、ここにすわって」

「……ん」

「いや、わたしはすわらんよ」



 手を広げたって無駄だ。私の今日の定位置は劉さんの横って決まってる。



「こちらに来れば、何でも願いをかなえてやろう」

「……」



 なんてこと。神様パワー使うなんて卑怯ひきょうじゃあるまいか。


 まぁ、仕方ない。

 座るだけで叶えてくれるなら座ろうじゃないか。



「すわるだけ。おさわりきんし」

「うむ」

「あのね、もとにもどりたいの。ちょっとのあいだだけ」

「元に? 元に戻るのはそなたの自由だ。平時は戻りたくないと思っているから戻れぬだけ。強く願えば良い」



 そういえば、そんなこと言われたっけ?

 でも、高い所の物を取る時とか、わりと元に戻りたいなぁと思ってるけど、それだと戻ってないし。


 戻れー戻れー戻れぇーぃ!


 ……ふぅ。ダメだ。



「だめです。もどれましぇん」



 力が抜けて、へにょっとなってしまう私の身体。


 前に戻った時は無我夢中で大変な時だったから、戻りたいなんて微塵みじんも思ってなかったし、戻れるとも思ってなかったからなぁ。



「あの時は確か、そこな人間を助けるためであったか。もう一度、誰ぞが怪我けがえばよいのではないか?」

「だ、だめだよっ!」



 いきなりなんてことを言いだすんだ、この人はっ!


 皆も、もちろんドン引いている。

 やっぱり神様の感覚は人のソレとは大違いだ。


 ……でも、人柱にされそうになっている人は実際にいる。だから、その人を助けたいって思えば。



「……んーっとこどっこいしょーっ!」



 ……戻れた! 戻れたぞーっ!



「……今の掛け声は聞かなかったことにします」

「ははぁ。ありがたき幸せ」

「……なーんかチビといると、神様に対するありがたみが一気に薄れるよね」

「それは面目めんぼくない」



 それにしても、前も思ったけど、元に戻った時に身体に合わせた服に着替えてるのすごいよねぇ。


 でなきゃ今頃、私全裸ぜんらだし。

 さすがにこの姿で皆の前で全裸は恥ずかしいし色々まずい。



「雅、ちゃん?」

「はい!」



 そういえば、瑠衣さんと黒木さんはこの姿では初めましてだ。


 それでは、改めまして。



「柳雅、今は十六歳です! ……この姿でも、仲良くしてくれますか?」

「んーっ! もっちろんよっ!」



 瑠衣さんは私の元ににじり寄ってきて、首の位置で抱きしめてくれた。


 瑠衣さんっ。お胸がやっぱりすごいっ。


 ……さて、準備も整ったし、いつでもカモンッ!

 悪いことするコは、大人も子供も引っくるめてお仕置きをさせていただきまっす!



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