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 るーんたったるんたった


 例の件は解決までもうちょっとかかるらしい。



 それでも私は今日もご機嫌です。なぜかって? うふふん。


 今日は薫くんと買い物当番の池上さんと神坂さんとお買い物〜。


 晩御飯の買い出しなのです。



 帝様が皆と同じものを食べたいとご所望になってから薫くんを除いた料理人さんの頭を悩ませていた食費問題は消えた。


 まぁ、その代わり毎回毎回緊張して料理に挑まなきゃいけないってプレッシャーはあるみたいだけどね。



 私? 私はもちろん美味しいご飯いっぱいで満足以外の言葉もありませぬ。


 グフフ。



「チビ。何してるの? 行くよ」

「あーい」



 てててっと走って行って、池上さんと神坂さんの真ん中に陣取った。二人の服の裾をチョンと摘む。


 すると上からンンッという何か詰まらせたような咳払いが聞こえてきた。



「どーかしましたかー?」

「歩き疲れたのかい?」

「んーん」

「抱っこかおんぶかしようか?」

「だいじょーぶ!」



 ニカッと笑うと、二人もニヘラッと笑い返してくれた。



 お散歩も兼ねてるとはいえ、二人は買い出しっていうお仕事中だからね。余計な力は使わせません。


 それでもどーしてもこれ以上ムリって時は……お願いしよっかな!



 いつもの業務用スーパーに着いて、神坂さんがカートにカゴを乗せた。


 一瞬小さい子供を乗せれるカートを見てこちらを見てくるものだから、首を横にフリフリ。もちろん、ノーセンキューですってば。



 さてさて今日のご飯はなにかなー?



「んー。おにくたべたいなぁー」

「そう? 良かったね。今日は陛下のご所望ですき焼きだよ」

「ほんと!? ねぇ、ほんと!?」

「本当だからはしゃがない。おやつ抜きにするよ」

「はしゃぎません。わたし、おりこうだからね!」

「よし」



 ピシッと右手は耳横。顔はドヤ顔。それが私。


 今、私の中の東のヒエラルキーでは綾芽や海斗さんよりも薫くんの方が上に位置してることは言うまでもない。



「あ、ちなみにチビは陛下と同じ鍋だからね?」

「えー? いいのー?」

「何言ってるのさ。チビだからいいんだよ」

「と、いうことは?」



 ニヤァ~と自然と口元がほころんでいく。



「一番美味い肉いーっぱいだ」

「ひゃっほぅ! ……はしゃがない。はしゃいでない」



 池上さんが親指を立てて教えてくれた嬉しいお知らせを聞いて万歳する私。


 それを薫くんがジトッとした目で見てくる。


 これはセーフだよねとキリッとした顔をしつつ、そろそろと両手を下げた。


 池上さんと神坂さんはそれを見てプッと笑っていた。



 それから野菜コーナーで薫くん達が野菜選びに入ると、私は手持無沙汰になった。


 基本的に何でも食べれちゃう私に好き嫌いを聞くことも必要ないから、どんどん自分達の目利きだけで籠に野菜を放り込んでいく。


 ここでちょっとは子供らしく人参いやーとか言ってみたほうがいいんだろうか。


 ……いや、駄目だな。


 日頃の行いからして私の好き嫌いのなさは薫くん達には知れ渡っている。


 そんなワガママを言ってみた日には野菜どころかお肉すら出されずに変な病気になったとお粥のみがだされるだろう。後は巳鶴さんの特製お薬もだね。


 そんな夕食嫌すぎる。


 だから私は黙って籠と薫くん達の手を目で追うだけ。あんまり楽しくない。



「はい。かおるりょうりちょー」

「なんでしょうか。おチビさん」

「わたしはおかしをしょもうします。なので、おかしうりばにいってまいります」

「ダメです。迷子になると面倒です」

「だいじょうぶです。まかせてください」

「任せたくないので却下です」

「……ひとりでおつかいもいったのに、げせぬ」



 薫くんは野菜に目をやったまま、こちらをチラとも見ずにおねだりを無きものにしてくれた。


 いくら広い業務用スーパーとはいえ、たった四つ向こうの棚に行くだけだというに。



 そろりそろりと離れていく。


 なぁに、さっと行ってぱっと帰ってくる。


 何にも問題はない。


 気付けばいつの間にか籠にお菓子が入っていたっていう手品があるだけだもの。


 問題ないな~い。



 というわけで……急ご。



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