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◇ ◇ ◇ ◇
帰ってきました、東のお屋敷!
巳鶴さんのお膝に座って、デジカメのフォルダを一緒に見ながらの綾芽待ちです。
「おそいねー、あやめ」
「もうじき帰ってくると思いますよ。……あ、ほら」
外から
それから玄関からしていたバタバタと駆けてくる足音が部屋の前で止まったかと思うと、次の瞬間、
「雅っ!」
「あ、あやめー! ただいまー!」
どちらからともなく駆け寄り、私は綾芽に飛びついた。
綾芽は若干たたらを踏んだけど、しっかり抱きとめてくれた。ちゃんと抱き留めてくれるって分かってるから、私も安心して飛びつける。
「どこ行ってたん!? 探したやろ!」
「ごめんなさーい」
やっぱり怒られちゃったかぁ。
でも、私、悪くないのよー?
「まぁまぁ。この子の非は最初にあまり知らない大人から菓子をもらおうとフラフラと外に出たことくらいです。そう声高に責めてはいけませんよ」
「うっ。ごめんしゃい」
「……はぁぁぁ。ほんま心臓に悪いわ」
私を抱えたままその場にストンと腰を下ろす綾芽の服だけど、確かに汗でびっしょりだ。額から流れ落ちる汗を服の
「さがしてくれて、ありがとー」
「……これからは気ぃつけてや?」
「あい!」
任せて! 私、イイ子にするの得意だもの。
「わたし、かみさましゅぎょー、もっともっとがんばるね!」
「なんや? えらいやる気やん」
「あのねー、おかあさんとやくそくしたの。がんばるって」
「……ほな、頑張りぃ」
「うん!」
でも、神様修行って具体的にどんなことしたらいいかまでは分かんないんだよねぇ。
……今度また会いに来るって奏様言ってたし、その時にでも聞いてみよう。
「そうだ。お前にまだ渡せてなかっただろ? 俺と綾芽から。ありがたく受け取るように」
「なぁに?」
「ハロウィン? それの菓子代わりだよ」
海斗さんが何かのチケットを差し出してきた。
ハロウィンってクリスマスじゃないんだけどなぁ。それに、まだトリックオアトリート言えてない。なにより、海斗さんにはイタズラしたかった!
でも、貰えるのは嬉しい。
えっと、なになに……ふぁっ!
瑠衣さんとこの甘味食べ放題券、ですとっ!?
「かいと、だいしゅき!」
「自分も半分持つんやけど」
「あやめ、あいしてるっ!」
ハロウィンってやっぱり素晴らしい!
ありがとう異国の行事、ありがとうお菓子を発明してくれた人達。
私は今、全力でその恩恵を受けてます。
「いついくの!? あした? あした?」
「まぁ、そのうちな」
「なら、あさって? それとも、しあさって!?」
「ちょい待ち。そんな焦らんでも、甘味は逃げへんやろ」
「でもぉー」
逃げはしないけど、私の頭の中は禁断症状が出ちゃうよ。見るもの全てがお菓子に見えてきちゃうだなんて、私にとってお菓子は麻薬だ。
……って、あーっ! 思い出した!
「みつるしゃんにもらったおかし、かえしてもらってない!」
「はい?」
巳鶴さんは目を丸くして首を傾げている。
違うんだよ、巳鶴さんは悪くないんだよ。
あのおじさん、後で返すって言ってたくせに、返してくれてない! 次に会ったら絶対返してもらわなきゃ! 私の飴ちゃんファミリーパック!
「とりあえず、今日はもう寝ろ」
「えー!」
「えーじゃない。今、何時だと思ってんだ。ガキはさっさと寝ろ」
「そうですね。もうだいぶ夜も更けてますし。そろそろ寝る時間ですよ」
「えー」
なんだか興奮しちゃって、眠気なんてどっか行っちゃったんだけど。
「さっさと寝ねぇと、その紙切れ、煙草の火で燃やすぞ」
「あーっ! なんだかねむくなってきちゃったなぁー! あやめ、ねよ!」
「……プッ。お休みなさい」
「みつるさん、おやすみなさーい。なつきしゃんとかいとも」
「あぁ、おやすみ」
「いい夢見ろよー」
この大切な大切なチケットを燃やされる!? 冗談じゃない! そんな悲しい目に合うくらいなら、私は五秒で寝れる!
……あ、やっぱり無理。三分はください。
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