5
お風呂から上がり、歯磨きも済ませた。後は布団に入って寝るだけ。
オネエさんは
「雅はここね」
「えー。まんなかー?」
「小さい子供は寝る時真ん中って決まってるの」
「えー」
聞いたことないけどなぁ。まぁ、決まってるんじゃしょうがない。
でも、まだ眠くない。とりあえずは横になるけど、目はバッチリ
「ねーねー。なんかおもしろいおはなしして」
「面白い話? そうねぇ……私が話すよりも、雅の話を聞きたいわ」
「わたしー?」
何か面白い話あったかなぁ?
「面白い話じゃなくても、あなたが普段どういう風に過ごしてるとかでもいいのよ」
「ふだんー? まずあさおきて、あやめおこしてー」
「あやめ?」
「わたしのこと、ひろってくれて、おせわしてくれてるひとー」
「そう。優しい人?」
「うん! ちょっとなまけぐせがあるけど、やさしいよ!」
「そっか。それから?」
「ラジオたいそうして、かおるくんのつくったごはんたべて……すっごくおいしいんだよ!?」
「食い意地はってないでしょーね」
「は、ハッテナイヨ?」
「……怪しすぎよ」
「そ、それから、りゅーさんとしえーさんとにほんごのおべんきょーするの。それからちょっとあそんで、おひるごはんたべて、おひるねかおさんぽするよ!」
危ない危ない。
だって、みんながこれも食えあれも食えってくれるんだもの。だから、食い意地がはってるわけではないと主張したい!
「それがおわったらにっきかいて、おやつ! それからとうばんのおてつだいして、よるごはんたべるの。それからおふろはいって、みんなにおやすみなさいしてねる!」
「ちゃんとお手伝いしてるのね。逆に邪魔してない?」
「し、て、ない……と、おもう」
みんな私ができる仕事を選んで当番につけてくれてるし。
たまに仕事をサボらないよう見張る係なんてのも割り当てられるくらいだから。
「ねぇ、雅。……神様修行、頑張りなさいね」
「うん」
お母さんがぎゅっと私のことを抱き寄せる。
これが最後ってわけでもないのに、大げさだなぁ。
「もうよいぞ?」
「あら、やっぱりバレてましたか」
襖の向こうから聞き覚えのある声がして、すーっと襖が開かれた。
廊下に膝をついていたのは奏様だった。
明日また来るって言ってたのに、どうしたんだろう?
「明日、それなりに大きな捕り物が入ってしまって。ちょっと忙しくなりそうなんです。起きているようなら、今からでも構いませんか?」
「我は構わぬ。そなたらはどうだ?」
「だいじょーぶです!」
「……
お母さんは枕元に置いていた羽織を肩にかけると、部屋を出て行った。
奏様がその後ろ姿を見届け、部屋の中に入ってくる。
「親子の時間を邪魔してしまってごめんなさいね。どうしても貴女に教えておかなくちゃいけないことがあって」
「なんですか?」
「私達元老院は人と人外の調停機関――仲介役の一面も持っているの。もし、貴女が自分が持つ力を使って人に
「えっ?」
だ、大丈夫かなぁー? もう結構やらかしちゃってるよ!?
「まだ大丈夫よ。院則にも色々抜け道があるの。それは追々教えてあげるわ。でも、これだけは忘れないで。貴女が望もうと望むまいと、貴女は神の子。生まれてたかだか十何年とはいえ、神は神。神が持つ力を欲して寄ってくる
「……はい」
後ろからすっと脇に手を差し込まれたかと思えば、ズルズルと布団の上をお尻が
頭を上げると、アノ人もジッと私のことを見下ろしている。
「……なぁに?」
「優姫を悲しませるようなことだけはするな」
「わかってるよ。あなたもね」
全く似ていない私とアノ人。
でも、たった一つだけ共通点があった。それは、どっちもお母さんが大好きだってことだ。
ふと奏様の方を見ると、寂しそうなお顔をしている。気になるけど、私なんかが触れていいのか分からない。そっと視線をそらして、見なかったことにした。
月が天高く昇っている。
これで満月なら狼男の真似ができるけど、残念ながら今日のハロウィンでの満月はお預けだ。
本来ならば誰も見る者がいない刻限に、月明りが紅葉の葉にさらなる
神楽殿の
「デジカメは持ったか?」
「もってる!」
「よし」
透おじちゃんの持ち物チェックも終わり、アノ人と奏様が待つ方へタタタッと駆けた。
奏様はお仕事があるのだから、お待たせするのはいけない。
それに、もう布団に入っていたひいおばあちゃんも起きて見送りに来てくれてるしね。
門の前に立つと、改めてお母さん達がいる方を振り向いた。
「おかあさん、みんな、いってくるね!」
「……えぇ。行ってらっしゃい」
次帰ってくる時は、綾芽達の写真、いっぱい
あ、あと、薫くんにお菓子をつくってもらおう。お母さんにもあのお菓子の美味しさを味わってもらわなきゃ。
「それじゃあ、行きましょうか」
「あい」
綾芽ー! みんなー! 今から帰るからねー!
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