2



 ちゃんとご馳走様ちそうさまもし、歯もみがいた私は今、夏生さんの部屋の前にいる。腰に手を当て、準備万端だ。



「たーのーもー!」

「うるせぇ!」



 おぅ。今日はいつにも増してカリカリしていらっしゃる。


 ……諦めないけどね!? だって、ハロウィン明後日だし。



「これー。あさって、これしたいなぁ」



 障子の隙間すきまから紙を差し出しておく。

 諦めないとは言ったけど、正面きって直談判するとは言ってない。だって、カリカリ怖いもん。



「……好きにしていいから、綾芽か海斗に言え。俺は今、猛烈もうれついそがしい」



 そういえば、もう月末かぁ。


 ハロウィンのことで頭がいっぱいだったけど、月末は夏生さんにとって書類の山がつきものだ。彼にとって、今の部屋の中はまさしく第二の戦場と言えよう。



「がんばってくだしゃい」



 巳鶴さんに栄養ドリンク作ってもらえるよう後で頼んでおくよ。薫くんのと違って味は保障できないけど、効き目はあるはず……たぶん。


 さてさて。なにはともあれ、夏生さんの許可は下りた。


 ……けどなぁ。

 

 今日に限って綾芽は外回りだし、海斗さんは出稽古でげいこだし、薫くんは黒木さんとこ行ったし、劉さんは仕事でどこかに行っちゃったし、子瑛さんもそれについて行っちゃっていない。巳鶴さんも今は研究で忙しそうだからダメ。


 うーん、弱った弱った。



「ごめんください」



 んん? お客さん?


 玄関の方から女の人の声がした。この屋敷に来る女の人といえば、まだ瑠衣さんくらいしか知らない。


 はいはい、御用聞きは私がやりますよー!


 興味八割、お仕事一割、残り一割暇つぶし。

 そんな私、雅がすぐ参りまーす。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る