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それから十数分。
劉さんとしりとりしながら、蒼さんと茜さんを待った。
「遅くなってごめんね! ってあれ?」
「なんで分かれてるの?」
「おとなのおはなしってやつでしゅ。あと、ありがとーごじゃいましゅ!」
わーい! おかわりいただきましたーっ!
んん? なんだか、さっき食べたのと違うような……。
「あおいしゃん、これー」
「あ、それね。ふふっ。ほら、あっち見てみて」
「うん?」
蒼さんが指さす方を見ると、白いコック服を着たおじさんがこちらに向かって手を振っていた。
あれは確か……南の料理人さん?
「みやびちゃんの活躍を聞いて、うちの料理長がみやびちゃんにって。特別メニューだよ」
「ふぉっ! と、とくべつ。……いいんでしゅか?」
「もちろん!」
「さ、食べちゃって!」
お皿の上には三日月型にチョコレートソース。その上に葡萄や苺、それにクランベリームース、生クリームが並べられている。
フレンチとかのお店で出されていると言われても全く驚かない一品が、私にだけ。
食べた後で、やっぱりダメって言うのは無しだからね?
そ、それじゃあ、……お言葉に甘えて。
「いっただきまーしゅ!」
……んんーっ! 美味しーい!
このクランベリームース、お持ち帰りしたいかも!
薫くん、これ作れるかなぁ?
「ふぉっ!」
フォークでムースをすくっていた手が後ろ手に取られ、ムースはその手の持ち主の口の中へと消えていった。
「かおるおにーちゃま!」
「ごめん。後でまた作ってあげるから」
「えっ! いっかいたべただけでわかるんでしゅか?」
「うーん。大体想像してる作り方で間違いないと思うけど」
薫くんは唇をペロリと舐め、両腕を組んで何かを考えこみだした。
いやいやいや、一回食べただけで作り方まで普通分かんないよ? そもそも、材料すら分からないし。
薫くんって、やっぱり料理の天才なんだなぁ。
「おい、蒼、茜。そろそろ判定準備に入るんじゃないのか?」
「あぁ、もうそんな時間なんですね」
「じゃあ、僕達、仕事に行かなきゃ。雅ちゃん、バイバイ」
「ばいばーい」
薫くんの後ろからやって来た鳳さん達。
鳳さんに言われ、蒼さんと茜さんはヒラヒラと手を振りながら走って行ってしまった。
さて、今回の投票だけど、肝心の方法は、東西南北が書かれたカードのうち、自分がここだと思ったところのカードを用意された箱の中に皆入れていって、そのカードの数を審査員の人達が数えて優勝が決まる、らしい。んで、特別審査員の人達の持ちカードの数は二倍、なんだとか。
続々と投票は進み、もう私達の番になる。
それなのに……まだ決められてない。やばい。
東の一員だからって、無条件に薫君に投票するのはフェアじゃない。なにより、どこの料理も美味しかったし、今回のお題である“目を楽しませる料理”というのもクリアしている。西とは一悶着あったけど、作られた料理に罪はない。
あーもう! 全部に投票したいんですけど! ダメ?
「お、俺達の番か」
「海斗、どこにするん?」
「寿司もよかったんだけどなぁ。やっぱ、薫のやつだわ」
「食べ慣れてるいうのもあるしなぁ。で? 君は……大丈夫なん?」
「う?」
何が?
綾芽が手の甲を頬に当ててきた。
なんだなんだ? どうしたのさ。
「顔真っ赤やで? 熱は……ないみたいやな」
「ねつないよー。げんきもりもりー」
「はしゃぎすぎたんだろ。氷が入ったコップでも頬に当てとけ」
自分では全然気づかなかったよ。
もしかして、これが知恵熱ってやつですか?
高校入試の時より考えてるかも。うん、間違いない。
「うー……きめたっ! やっぱり、かおるおにーちゃま!」
「ならこのカードや。箱に入れるんよ?」
「あい!」
私もアイデア考えるの手伝ったし、愛着あるし。
イーブンなんだから、多少の
「たかが親善行事にそんな構えることねぇよ」
「た、か、が! たかがじゃねぇよ! 夏生さん!」
「……おぉ」
「親善だろうとなんだろうと試合は試合だ。負けは許されねぇ」
「賭けと」
「だぁーっ! とにかく、優勝しか俺達に
「ほぉ。日頃からそれくらいの情熱をもって仕事をしてほしいもんだぜ」
「やってるやってる!」
「どこがだ! 今回のことだって、賭けの対象にしてるのはとっくにバレてんだよ! ……帰ったら書類仕事の手伝い決定だからな」
「……マジか」
あーあ。ドンマイ、海斗さん。
お手伝いはできないから、骨は拾ってあげるよ。お供え物は、お酒でいいね?
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