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 大広間に急いで布団が敷かれ、運ばれてきたおじさん達が寝かされていった。


 巳鶴さんを始めとして、治療の心得が多少なりともある人は皆バタバタと忙しなく動き回っている。


 元の姿であればきっとタオルをしぼるとか、傷口を消毒するとかくらいなら手伝えたんだろうけど。

 悔しいけれど、今の自分では邪魔にしかならない。部屋に戻って大人しくしてよう。

 ちびっこにできるこんな時の最大のお手伝いは、邪魔にならず、大人しくしていることだ。


 寝かされるまでの傷はないものの、腕に傷を負ったおじさんが部屋を出るまでの動線に座って手当の順番を待っていた。


 きっと効かないだろうけど、気休めでも……。



「いたいのいたいの、とんでけー」



 傷口に障らないように注意しながら手をかざし、みんなが知ってる魔法の言葉を言ってみた。

 すると、痛みに顔をしかめていたおじさんが目を丸くして自分の腕をジッと見つめた。



「……痛くない」

「えっ!?」



 おじさんが慌てて止血していた布を取り払うと、その言葉通り傷は跡形もなく消えていた。



「……い、いたいのいたいのとんでけー!」



 私は寝ている人達に片っ端から言って回った。








 最後の一人に魔法の言葉を唱え終わった時、急激な食欲に襲われた。


 こんな時、みんなのピンチを救ったヒーローとかは気絶するのがセオリーだし、何よりなんだか格好いい。


 なのに、私はお腹にきた。


 ……しょ、食欲も大事な三大欲求だもんね!


 グギュルルルルルルゥオォォォォン


 ……ちょっと。お腹の虫さん、あなたちょっと自己主張しすぎ。


 ギュルゥン


 え!? 今の返事!? 返事なの!?

 


「誰か薫さんを起こして、この子の食事をお願いしてください。……詳しい話は後にしましょう」



 おぅ。またお話しかぁ。嫌だなぁ。


 だってさぁあ、巳鶴さんが私を見てくる目つき。ちびっこを見る微笑ましいものから、完全に実験体を見つけた科学者のソレに変わってるんだもの。


 幽霊もおばけも怖いけど……今は巳鶴さんが一番怖い。



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