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 コンビニに着いたら、目指すはお菓子の棚一択。


 なくなったお菓子と同じのは……あったー! よかったー!


 しかも、絶妙な位置にある有能っぷり。



 「おかーさん、コレ、かってー」

 「ダメよ。お菓子は一個まで!」

 「えー! やだやだやだ」



 私より背が少し大きい男の子が、お母さんの服の裾を引っ張って駄々をこねている。


 床にまで転がりだしたから、ビックリしてついポカンと口を開けて見てしまっていた。



 「ほら、たーくんより小さな女の子が見てるよ!」

 「しらない! ほしい! たべたい!」

 「もぅ! 迷惑だから起きなさい!」



 両腕を掴まれて、無理やり起こされたたーくんとやらは当然ぶすくれたまま。


 私にもこうやってお母さん困らせたことあったのかなぁ。


 ……お母さん、かぁ。



 今まであんまり考えないようにしてたけど、お母さんどうしてるかな?


 心配、してるよなぁ。



 「……ふっ」



 あれ? おかしいな?


 目が急に熱く……



 「ど、どうしたの!? 大丈夫?」

 「いたいのか? どっかけがしたのか?」



 さっきまで喧嘩してた親子が、オロオロしながら私の前に膝をついて目線を合わせてくれた。


 男の子もさっきまでの駄々こねっぷりはどこへやら。


 まるで自分のことのように心配してくれている。



 一方の私も、自分が流した涙に驚いた。


 泣くつもりなんか、これっぽっちもないのに。



 「……ひっ。……ぐすん」



 止まれ止まれ止まれー。


 そう思っても、涙は止まらない。


 むしろ、増すばかり。



 「……けんかしたら、めっ、よ」



 泣いてる理由は違うけど、この親子を心配させちゃいけない。


 そして、小さな子供が喧嘩を目にして泣く理由なんて、とても限られてる。



 「おにぃちゃ、おかーしゃんに、ごめん、して」

 「……ごめんなさい」



 自分より小さな子供が泣きながら言う言葉に、男の子は素直に従ってくれた。


 お母さんも呆れ顔ながらも、すごく優しい手つきで男の子の頭を撫でている。



 「……ぐすん」



 私も早くこの涙を止めなきゃ。


 楽しいことを考えよう。そうすれば止まるはず。


 楽しいこと楽しいことー。


 綾芽のお土産何かなー?


 帰りにあの小川に寄ったら大きな魚いるかなー?


 今日の夜ご飯はなんだろー?



 ……と、止まったー!



 ご飯のこと考えて涙が止まるなんて……薫くんのご飯が美味しいからいけない。




 男の子がキョロキョロと周囲を見渡しながら聞いてきた。



 「おまえ、おかーさんは?」

 「……おしごと、いってる」



 ここでのお母さんは綾芽ってことにしておこう。


 うん、お母さん的立ち位置だし。


 ごめん、綾芽。



 「ひとりできたのか?」

 「うん。おつかい」

 「すごいな、おまえ」



 男の子は健くんというらしい。


 たける、だから、たーくん。


 住んでるところが意外と近くらしく、私と綾芽がよく遊びに行く公園にもたまにいるんだって。


 世間って狭いよねー。



 「危ないから、一緒に帰りましょう? 送っていくわ」

 「んーん。ひとりでだいじょうぶ」

 「でも……」



 健くんのお母さんはすごく渋っていたけど、二人は他にも行くところがあるみたいだった。


 行かなきゃならない場所があるのに、私のことを送ってもらうなんてこと、してもらうわけにはいかない。







 お菓子も無事に買えたし。


 後は綾芽が帰ってくる前に猛ダッシュで帰るべし!



 「たけりゅおにーちゃ、またね」

 「こんど、こーえんであそぼうな!」

 「うん! ばいばーい」

 「じゃぁな!」

 「車には十分気を付けて。寄り道しちゃダメよ」

 「あい」



 健くんと、健くんのお母さんに手を振ってコンビニを出た。



 何故か私達のやり取りを見ていたコンビニのお姉さんにも笑顔で手を振られる私。


 よくわかんないけど、とりあえず笑顔で振り返しておいた。



 笑顔は万国共通のアピールポイントだということは間違いないね。



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