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 結果、諦めた。


 いや、諦めたんじゃない。受け入れたんだ。だってどうしようもないんだもの。


 私、体が推定年齢三から五歳児くらいになってました。

 いやぁー何の冗談なんでしょうね。ワラエル~。



 ……笑えねぇよ。



 そのまま抱っこされ、着いた先はどでかい日本家屋の平屋建て。



 うわぁ……ヤのつく自由業な方達が住んでそうなお家なんだけど。


 奥から丸坊主頭で頬に傷があってばっちり入れ墨持ってる人が出てきたらどうしよう。



 体が縮んでる私からすれば見上げる程もある門がギギィっと音を立てて開かれると、門の向こうには一列に向かい合って並ぶ強面のオニイサン達が……いなかった。


 代わりにいたのは眉間に皺を寄せた鬼、もといお兄さんだった。



 「おやまぁ、夏生はんが自らお出迎えしてくれはるなんて。悪いもんでも食べたんちゃいます?」

 「……お前、膝をついたらしいじゃねぇか」



 初対面だけど分かる。ばっちり分かってしまうんだよ。


 この人、怒ってる、怒ってるよ?


 そんな話をはぐらかすようなこと言っちゃうの!? 大丈夫なの!?



 ちょっぴり心配になって見上げると、鬼の形相の夏生と呼ばれた人とは正反対にニコニコとイイ笑顔をしていた。



 「膝をついたなんて大袈裟やなぁ。あれは相手を油断させるための罠やったんですよ。それとこの子、今日からしばらくうちで預かりましょ」

 「はぁ!? うちは子供の託児所じゃねぇよ!!」



 いきなりの怒鳴り声に、思わず体がビクッとなってしまった。


 それを目ざとく見つけ、抱っこの手は今までよりもほんの少し強くなった。



 あービックリした。



 「夏生はん。この子が怯えてるやないですか。もぉちょっと声抑えてくれはります?」

 「なっ! ……す、すまなかったな」



 どう見てもその謝罪は私の目を見て言われたので、コクリと頷いておいた。


 とりあえず、私はどうなるんだろうか。帰れる、ん、だよ、ね? ね?



 「夏生はん、この子、親御さんが神様らしいですわ」

 「は?」


 

 ……………え!? そうなの?



 これには私も自分の無意識下での言動を覚えておらず目を見開いた。


 声には出さなかったけど。



 「その後も、神様に私何かしたっけ? 怒っちゃった? 怒っちゃったの? 怒っちゃったのねー!? 的なことを舌足らずな口調で

 「あーーーーー!」



 心の声、駄・々・漏・れ!



 一緒に来たもう一人のお兄さんの言葉を、私はあらん限りの声で封じた。



 私の黒歴史化するであろうことをそう無闇矢鱈と吹聴しないでくれ。



 しかも、私は神様の子供ではない。


 んん、神様が人間を作ったっていうキリスト教の考え方からするとあってるのかな?



 んー……難しいことは分からん!


 

 「……とりあえず中入らへん? 喉乾いたわ」

 「あ、あぁ」



 ちらりと私の方を見て、眉間に皺を寄せたお兄さんは玄関の戸を開けて中に入っていった。

 


 抱っこしてくれてるお兄さんもそれに続いて戸を潜った時



 「いらっしゃい。小さな僕らの神さん」



 そんな声がふわりと風に乗って聞こえてきた、気がした。



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