二人の距離は……

イナロ

 プロローグ

 お父さん。お母さん。

 私は二人の元に生まれて来て本当に良かったよ。


 決して満足とは言えなかった人生だけど、良い人生だったと胸を張ってあの世に行ける。


 ……あはは。

 二人とも泣き過ぎだよ。


 ……ゴメンね。

 元気になって家で普通に暮らす事が出来なかったね。


 でも、数か月ぐらいだけど家で過ごす事が出来て本当に楽しかったよ。

 私の部屋もあってビックリしちゃった!


 可愛いぬいぐるみとかクッションとかありがとう!

 あ、お父さんが買ってくれた良く分からない変な人形は押し入れにしまっておきました。


 始めて家にに……。


 あはは。違うか。


 始めて家に時に懐かしい感じがしたのは何でなんだろうね?


 あぁ~。帰って来たんだな~。


 って思っちゃった。


 でも、当然だよね。

 私の家なんだもんね。


 数か月でいろんな場所に行ったよね。

 ただ、成人式だけは出たかったな~。


 知ってる友達も……。


 ゴホン。


 振袖を着たかったって事にしよう。


 友達いなかったわ。私。


 ……やっぱり最後はこの病室が不思議と落ち着くな~。

 二十年間この部屋にお世話になったな~。


 お母さん、我儘を言ってゴメンね?。

 最後はやっぱりここが良いと思ったんだ。


 さて、そろそろ……私の寿命が終わる。


 目の前で泣く両親に最後は笑顔を向けないと。

 

 ……お金がかかる子供でゴメンね。


 ……何も親孝行とか出来なかったね。


 ……肩を叩いて手の骨が折れたのは私的にはとても面白かった思い出です。


 ……吐血するドッキリをして引っかかった両親を大笑いして本当に吐血したのも楽しかったです。


 ……お父さんの買ってくる食べ物は何故かゲテモノで見た目通りの不味さで本当に驚きました。


 ……お母さん。結局、お母さんに教えてもらった男を落とすテクニックを使う場面が無かったよ。


 ……えっと。思い残す事はもうないかな?


 ……何か違うような気がするけど、これはこれで私らしいからこれで良いのかな?


 ……さようなら。お父さん。お母さん。


 ……今までありがとう。大好きだよ。

 

 ……私の部屋の机の中にある手紙に二人が気が付いた時の顔を思うと少し笑えてくるよ。

 最後にこんなサプライズをするのがお約束……だよ……ね……。


 病弱でベットの上でしか生きる事が出来なかった彼女の二十年という短き人生は終わりを迎え、両親に笑顔を向けて息を引き取った。


 両親は彼女の泣いた顔を見た事が無く、いつも笑顔でお茶目な彼女の表情を記憶と心に残し、彼女の死を悲しんだ。


 後日、娘の部屋の掃除で机の中を確認した母が手紙に気が付いた。


 手紙の最後にはこう書かれていた。


『あの世で二人の幸せを願っています』


 だが、彼女は運命か定めか。

 両親が思いもしない目に遭うのであった。


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