猫を相手にくだをまく
やりきれない夜がある。仕事で失敗したり、仕事で怒られたり、仕事で失敗したりした夜。やりきれない。理由は置いといて、とにもかくにも飲まないとやってられない。
社会に出た大人にはそんな夜がある。
月に2、3回はある。みんなある絶対ある。私だけじゃない絶対。なんだったら週1である。
悲しいことに友人が少なく、その数少ない友人も多忙を極めたり家庭に入ったりで気軽には呼びつけられなくなってしまった。結果として、さして多忙でもなく家庭もない私は一人で飲み明かすしかない。だって選択肢の余地がない。
懐に余裕があれば行きつけの居酒屋で店主に優しくしてもらい、余裕がなければ自宅で晩酌を楽しむ。月末とか。
自宅、我が家、私の城、つまり私の王国で私がルールで法律であるからして、大概のことは許容範囲に収まる。日本国の法律内でお隣から苦情が来ない範囲でなら。汚そうが歌おうが片付けサボろうが私が良ければそれで良いのだ。
そんな自宅で飲む時には綺麗なキッチンでちゃちゃっと小洒落たつまみを作り、お気に入りの映画を流してソファーに腰掛け、バスローブ姿で優雅に宅飲みとかは、当然できない。当たり前にできない。できる要素がない。
そもそもソファーが無い。綺麗なキッチンもない。映画を流すにも十数年頑張ってくれているプレステ2さんは最近調子がよろしくないし、バスローブは今度買いたい。小洒落たつまみは作ってくれる人がほしい。
ないない尽くしの孤高の独り身は独り身ゆえにサツドラに酒とつまみを買いに行き、座布団に座ってちゃぶ台でテレビ見ながら晩酌するのです。大型ドラッグストアのありがたみを強く感じる今日この頃。ほんとありがたい。
これで本当に一人で飲んでたら早々に人生ドロップアウトしそうなアル中の完成まで秒読み入ってる所だけれども、あいにく私には一緒に住んでる扶養家族がいる。二匹もいる。
さて猫相手に愚痴を溢しながら飲んでると、こやつ私の話を理解してるんじゃないかと思うことがたまにある。こう、瞳に知性を感じる時が。
実際多分酔っ払いよりは猫の方がまだ知性的で理性的だろうという真っ当な言い分は置いといて、本当に話を聞いてくれてるような時がある。頷き、首をかしげ、こちらをじっと見つめて話を聞いてくれてるように見える時がある。
大概は私の口に収まっているチータラだのスルメだの鮭トバだのベビーホタテだのを見詰めてると分かってはいるものの。
ちなみに愚痴を聞いてもらったお礼に猫用おやつなぞ与えたものなら飼い主なんてもう容赦なく身限られる。猫なんてそんなもんよ。知ってた。
一国一城の主を気取ってても結局住民はさして敬ってくれる訳でもなしに、切なさと愛しさと心細さ抱えながら今日も猫に絡み酒と洒落込んで、腕に引っ掻き傷を増やすのです。
ほんともう猫なんてそんなもんよ。知ってた。
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