悪役令嬢の妹は最強です。

るりちよ

プロローグ

第1話 サブロ・アズマ・レグルス

 われの名は、サブロ・アズマ・レグルス。レグルス王国第三王子である。

 第三王子ではあるが、正室の長子であるわれが将来、この国を導いて行く事となるだろう。


 我がレグルス王家は、『邪神封印の英雄』タロ・アズマの血を受け継ぐ高貴な家系で、その威光により、この国に繁栄をもたらした。


 しかし近年、その繁栄に陰りが見えてきた。


 外因として『魔物』と『ヒガシ帝国』の存在があげられる。


 我が国の北から西にかけて広がる魔の森『オオモリ大森林』には、多くの魔物が生息しており度々、国内に被害をもたらしている。

 また東には軍事国家『ヒガシ帝国』があり、わが国の領土を搾取せんと虎視眈々と狙っている。

 つい数年前にも、大森林で魔物の大氾濫があり、まるでそれに呼応するかの様に帝国の軍事侵攻が始まった。

 幸い、魔物の氾濫は王家の力で鎮圧し、帝国の侵攻も我が母方の実家である『カナリ侯爵家』の武力をもって返り討ちとした。魔物の氾濫も、帝国が何らかの形で関わっているに違いない。


 内因は、継承権を狙う兄たちと国内に混乱をまき散らす貴族たちである。


 おそらく今も上の兄二人はわれから継承権を奪おうと画策していることだろう。


 王位など、くれてやってもいいのだがわれには守るべき者達がいるのだ。我と同年になる将来有望な者達だ。

 あらゆる分野の知識に通じ『賢者』と呼んでもよい大司祭の孫。市井に通じ、民から絶大な人気を博す宰相の四男など、才能豊かな人材が綺羅星のごとく存在する我が同年を人は『天才の世代』と呼んでいる。その才能を無能な兄どもに、つぶさせるわけにはいかない。


 そして王国を蝕む無能な貴族ども、その筆頭と呼べる『リンドベル辺境伯』。魔の森と接する領地を理由に、その守護を名目にして王家や近隣領主から膨大な物資をむしり取っている。

 そして、それをもとに軍備を固め、王家に向けて脅しをかけるという暴挙にでた。我が母は、それに怯え辺境伯の娘を我の許婚いいなずけにしてしまった。

 我が王となったなら、王国改革の手始めにリンドベル辺境伯の駆逐から始めたいと思う。


 我は今、『レグルス貴族学院』の舞踏会場にいる。われの入学を祝う催しに参加しているのだ。そして、目の前には我が同胞により組み敷かれた女がひとり。我の『元』許婚いいなずけ、リンドベル辺境伯家が長女カエデ・リンドベルである。

 あろうことか、この女は次期聖女と噂される我が同胞『ヤヨイ・モーリス』を階段から突き落としたのである。以前にもヤヨイ嬢を毒殺しようとしたとの噂もある。

 我と親しくしている事を嫉妬しての短絡的犯行ではあるが、リンドベル一族の凶暴性をかんがえれば、もっと注意しておくべきであった。

 他にも悪い噂の絶えないこの女をこの場で断罪しわれの決意を示すべきであろう。婚約を破棄し、この女を学院、いや王都から追放することでわれがリンドベル辺境伯の武力を恐れぬ事を示すのだ。そう、ここから始まるのだわれの国内改革が。

 組み伏せられた女の頭を踏みつけるため、足を上げた。


われの伝説が始まるのだ・・・」


 そして世界は白く染まった。   

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