1-2 「上陸」

1‐2 「上陸」





 かつて地上に住んでいた人間達が使っていたと思われるビンや缶、そして船や自動車の残骸が漂着した海岸。





 海から上がった私はまずゴーグルを外して頭部の圧迫を和らげた。私はゴーグルの下にずり落ち防止用のバンドを付けた眼鏡もかけているため、二重にこめかみを締め付けることになって頭がとにかく痛む。





 その次に軍用ブーツの上から装着できる特殊な足ヒレを外し、身軽になった体の具合を確かめるように歴史的遺物の残骸上を歩く。スデに防水仕様のミリタリーバッグから銃器を取り出して装備を整えている仲間達の元へと合流した私も同じく、バッグから自動小銃を取り出し、これから迎え撃つ[敵]の襲撃への備えを整える。





 私達が上陸した地の名前は[エリア112]。今から戦場と化すかもしれない場所だ。

「よーし、お前らよく聞け。先にも説明した通り、タイムリミットは1時間半だ。作戦の成功、失敗を問わずその時間内にこの場で合流できない者は見捨てる。分かったな?」

 私達隊員に語気を強めて忠告するニール隊長は、いそいそとダイビングマスクを外して曇り空でもしっかりと光沢を輝かせる頭頂部をあらわにさせる。





「大丈夫ですって、与えられたミッションは必ずこなすってのが俺ですから」





 コーディは返事をしながら小銃を構え、標準を確かめる。





「指定時間にいつも遅れるのもお前だぞコーディ」





 微笑みながら副隊長のビル・ブラッドはコーディに念を押す。





「大丈夫ッスよ! 今回はアリーと一緒ですからね! 」





 無責任な笑顔を私に向けたコーディ、こんな状況でも学生の部活動感覚でいる彼に、私はあきれた表情を作るしかなかった。





 ビルはコーディの肩を軽く叩いて「その為にお前とアリーを組ませたんだ」と一言。

 私はコーディのタイムキーパーとして抜擢されたわけだ。年齢はコーディの方が2つも上なのに。





 父親に叱られて恥ずかしさをごまかす子供のようなバツの悪い笑顔を作るコーディ。

 私を含め、他の隊員がビルとコーディのやり取りに微かな笑みを作る。





「アリー、あの筋肉バカを頼んだよ」





 光沢ある黒髪が眩しい同僚キャロル・パーマーに大きな子守を頼まれてしまった。私が「ハイ、お任せください」と言うと、そのやり取りを聞いていたコーディが、口の動きだけで『誰が筋肉バカだよ! 』と文句を垂れたのは言うまでもない。






「よし、お前ら!時計を合わせろ! 」





 やや緩み始めた空気に緊張感を取り戻させるようにニール隊長は声を張り上げ、支給された腕時計を付けた左手を突き出す。隊員達は各々の時間を隊長に合わせ、8km先で蜃気楼のようにぼやける【カーネル】に視線を向けた。





「【クジャク部隊】……ミッションスタート! 」





 ニール隊長の合図をスタートに、私達【クジャク部隊】は床にこぼした大豆のように散っていく。二人一組5つのグループは、それぞれ異なるルートで【カーネル】を目指して走る。





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