トークと投球
誰かと喋ることは、キャッチボールをして遊ぶことと良く似ている。
公園で、友達と球を投げ合って遊んでいるとする。相手が速い球を投げてきたり、変化球を寄越してきたり、とびっきりのフライを飛ばしてきたりしたときは、それを上手くキャッチして、仕返しにと、もっと面白い球を投げ返す。相手がそれを取り損ねたら愉快だし、見事に受け取ってみせてもそれはそれでものすごく感心してしまう。
言葉の応酬だって、それと同じことだ。頭が良かったり、知識が豊富だったり、感性が独特だったりするひとの会話を聴くのは、楽しくって心地が良い。そしてそれに負けじと、自分もありったけのユニークな切り返しをお見舞いしてやろうと意気込む。それが上手くいって相手に良かったと認めてもらえれば嬉しいし、失敗してもくだらないなと笑ってくれたらそれだけのことでもやっぱり嬉しい。
──君も、そう思わないかい?
その言葉は部屋の壁を反射して僕の耳にだけ届きます。
何故なら、ここには僕の他には誰もいないから。
言葉のキャッチボールが苦手な僕には友達がおらず、だからいつも一人で壁当てをする以外にはやることなど何も無いのでした。
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