色々な短編集

青空リク

夢の中

人は夢を見る。

人が最後に見る夢は、どんな夢だろう。



ここは夢の中。

誰の夢…?

あぁ僕の夢だ。


懐かしいあの頃。あの日々。

流れるように過ぎていく。


仲の良かった友達。

優しかった先生。

好きだったあの子。

 

 

何故か涙が出てくる。

それを自覚して驚いた。

 

…あれ?何故驚いているんだろう?

…分からない。

頭の中はぼんやりとした何かに覆われて、何も見えない。

まぁ良いや。この幸せな日々に浸ってしまおう。


鬼ごっこ。ドッチボール。サッカー。

勉強。運動。クラブ。委員会。

遠足。運動会。音楽会。奉仕活動。

楽しい思い出。悔しい思い出。儚く散った初恋。


一年生。二年生。三年生。四年生。五年生。六年生。


楽しくて、楽しくて、楽しくて。

それでも僕は何かに怯えていた。

その恐怖の正体に僕は気付いていた。

それは、あっという間に過ぎゆく時間でもあり、夢の終わりに来るであろう“さいご”だった。


学校で過ごす最後の時間。

卒業式。


卒業証書を貰い、皆と最後の別れをする。

またいつか会おう!

そう笑う親友に僕も笑顔を返す。

楽しい思い出が浮かんでは消える。またいつか、会いたいな。


穏やかな日々に幕が下りた。


その瞬間、明るい情景が一気に黒くなる。


僕は思い出す。

これは夢だった。

 

夢というのは、幸せなもの、覚めたくないと心から願うものもあれば、辛いもの、心の底から覚めて欲しいと願うものもある。


僕の幸せなユメはもう終わった。



地獄の日々がまた繰り返されるのか…。



嫌らしく笑う同級生。

助けてくれない先生。

まるで僕が居ないかのように振る舞う好きだった人。



嫌な思い出が浮かんでは頭にこびりついていく。


嫌だ。逃げたい。

僕はあの日と同じように屋上へ向けう。

この地獄の日々に別れを告げるため…。


空は青く、白い雲が浮かんでいる。

僕にもう迷いはない。

どうか、次の世界では幸せに暮らせますように。



おい!!


後ろから声が聞こえた。

振り返ると親友が立っていた。

なぜここに?

そう聞こうとして驚いた。

親友は泣いていた。怒っていた。 


なんで言ってくれなかったんだ!

また会おうって言ったじゃないか。

早く戻ってこいよ。


そう叫んで親友は僕に手を伸ばす。

その手をぼんやりと見つめながら僕は思い出す。

楽しかった日々を。

またあの頃に戻れたら…。

そう何度願ったことか。


僕は泣きながら手を伸ばす。

ヒデェ顔。

親友は笑いながら僕の手を掴んだ。


人は夢を見る。

人が最後に見る夢は、どんな夢だろう。


楽しかった日々?

忘れられない大切な人?

それとも地獄のような生活?


僕はまだ知らない。


お前はどんな夢を見た?


地獄の日々から逃げたくて、高いところから飛んだあの時。

僕は深い深い眠りについた。

それが永遠の眠りに変わる前にお前が呼び起こしてくれた。


僕はお前を支えられたか?

苦しいときはお前が僕にしたように、救い出してやれたか?


お前は最期にどんな夢を見た?


どうか、幸せな夢を見ていて欲しい。


それじゃあな。またいつか会おう。








  

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