第10話

そういえば…

家に灰皿がないって…もしかしてお家では禁煙なのかな?


私は慌てて火のついた煙草を灰皿に押し付けけた。



「菜月ちゃんて彼氏いるの?」

「付き合ってる人はいないですねー…」

なんとなく"彼氏"という単語を避けてしまう。







「飲み直すかぁ~」

浅川さんは部屋へ戻っていった。





「あの!私、カリンくんにご飯あげるの忘れちゃったし…もう、大丈夫なんで…今日は帰ります。

お家にまでお邪魔しちゃって、本当にごめんなさい」



「カリンくん?」

クスッと笑いながら小首を傾げて聞いてくる。


「あ、ネコです」


「そっか…菜月ちゃんと仲良くなれそうな気がしてたんだけどな…」

心なしか寂しげな表情にみえる。


「じゃあ…今日はありがとう」

ニッコリと微笑んで、私に向かって両手を広げる。

その頬は少し赤らんでいた。


心臓が鷲掴みされたように鼓動が高鳴る。

浅川さんの背中に手を回すと、どちらの心臓の音なのか分からなくなった。

頬が赤らんでいるのもアルコールのせいかな、と思った。

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