LEアイデアで小説家確定だね!!

ちびまるフォイ

ガチャガチャガチャガチャ

「あーーくそ。全然思いつかねぇな」


小説入力フォームの真っ白な画面を見てもアイデアはわかない。

何を書いても1行2行で終わってしまう。


「なにかないかな」


答えを求めるようにスマホを取り出した。

ネットをあさっても使い古したネタばかりで参考にならない。


その中で気になるアプリを見つけた。


「アイデアガチャ?」


インストールするとガチャの画面だけのシンプルなアプリ。

無料で回してみた。



SRアイデア 「怪獣テイマー」


カプセルから出てきたのは小説のアイデアだった。

読み進めると軽い設定やキャラなどの情報も載っている。


「これはいい! すぐ小説に落とし込めるぞ!」


さっそく小説にすると読者からは反応がよかった。

とくに褒められたのはアイデアで、普段異世界転生ばかり書いている俺なので

自分の発想力が褒められたことはなによりも嬉しかった。


「っしゃあ! この調子でどんどん書いてやるぜ!」


すっかりアイデアガチャの虜になった。


>この発想はなかったwwwww

>まじで作者どんな頭してんの。発想力ヤバイ

>頭の構造がすごいですね。創造力にはいつも驚かされます。


「ははは! アイデアガチャ最高だ!」


小説サイトですっかりアイデアマンとして立ち位置を確立した。

誰もが俺のアイデアを求め、誰もが俺の想像力を期待する。


そして、俺もアイデアガチャでその期待に100%答える。




『WEB小説コンテストのお知らせ』




「なになに……優秀賞は、小説家デビュー!?」


これを断る手はないだろう。

読者はもちろん、審査員も俺の想像力を期待してるに違いない。

ああ、見せてやるさ。感動させてやるよ。

俺の想像力で見たことのない世界を見せて!


Rアイデア 「パン屋さんの異世界制服計画」


「うーーんダメだ。コンテストに出すんだもっといいアイデアじゃないと」


PRアイデア 「仕送りされてくる恋愛」


「ダメだダメだ! もっとレアリティの高いアイデアじゃないと!!」


最高レアリティのLE(レジェンド)が出てこない。

何度ガチャを回しても、何度課金しても出てこない。


コンテストの締め切りはどんどん近づいてくる。


LEのアイデアさえ出せれば小説家になれる。

なのにどうしてこんなにも出ないんだ!確率操作してないか!?


「なに? 金を借りたい?」


「頼む!! 母親が病気で倒れたんだ!」


「いや昨日スーパーで会ったけど……」

「あーー父親! 父親が倒れたんだ!!」


お金を借りて、マンガもゲームも売り飛ばして、腎臓も売った。

通帳には信じられないほどの金額が刻まれた。


「うおおおお!! 出ないってんなら出るまでガチャってやる!」


すべてはアイデアのために。

アイデアガチャを回して回しまくった。


全財産を失うことになろうとも小説家になれるなら十分だ。



LEアイデア 「*******」



「きったああああああ!!」


嬉しさのあまり大声が出てしまった。

内容を読めば読むほど、恐ろしくユニークなアイデアだった。


「これならコンテストで優勝できるぞ!!」


小説を書き終えると、アイデアに震えた。

数日後、コンテストの結果が帰って来た。



――――――――――――――――

落選のお知らせ。


このたび優勝は「パン屋さんの異世界制服計画」となりました。

書籍化の折にはぜひご購入してくださいね。

――――――――――――――――


「ら、落選んんん!? なんで!? どうして!?」


しかも優勝はSRアイデアじゃないか!!

ありえない!! 俺のはLEアイデアだぞ!?


納得いかない。絶対に納得いかない。

俺は審査員のもとへ直談判しにいった。


「納得いきません!! LEアイデアの俺がどうして落選なんですか!?」


「わからないかい?」


「わかりません!! 納得できる説明をしてください!!」




「最高級の素材で作った素人の料理と、普通の素材で作った料理人の料理。

 君が食べたいのはどっちかね?」



「おふくろの味です!!」

「お前意味わかってないだろっ」


俺は審査員にひっぱたかれた。

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