第8話 ポイオーティア
「戦艦オリオン、戦艦オリオン。こちらチームゼロ戦略班ウエキセンカです。応答願います。」
「こちら戦艦オリオン通信室です。どうぞ。」
「只今チームゼロ、戦艦オリオンが停泊している小惑星ポイオーティア付近に到着しました。」
「わかりました。そのまま戦艦オリオンの着艦ハッチに向かってください。」
「ありがとうございます。」
8機のゼロが次々と戦艦オリオンに着艦する様子が、第一艦橋に報告された。
「スプ、ついにゼロがオリオンに来たよ……。」
戦闘長キドアヤカ、通称キッドが小さくつぶやいた。
彼女たちはかつてはスパイとして暗躍していた。そのころはコードネームを使うことが多かった。宇宙保安隊、そして宇宙防衛軍所属の今も、通称としてコードネームがよく使われていた。
「艦長に報告してきます。」
キッドはそういうと戦闘長の席から離れた。第一艦橋を出てすぐの階段を上がり、艦長室へ向かった。
「艦長、わたしです。失礼します。」
「キッドか。」
「艦長、報告です。」
「うん、聞こう。」
タカハシハヤト艦長、通称トニイが振り向いた。まだ若い艦長らしく、帽子も制服もしっかり身に着けていた。どうやらまっすぐ立って何かを見つめていたようだった。
「トニイ、チームゼロの8名が無事戦艦オリオンに到着しました。しばらく休養させた後、艦内の説明をして、まぁ業務に慣れさせようかなってところ。」
「チームゼロ、地球最後の防衛班の高校生たちか。」
「うん……。ハヤト兄にぃ」
「どうしたアヤカちゃん、暗い顔して。」
「あの子たち、ゼロの乗り手だよ。確かにこんな状況だけど、やっぱりコハルに申し訳ないよ……。」
「アヤカちゃんはコハルのこと、いつも気にかけてくれる。ありがとうね。」
「でもハヤト兄。コハルの事故みたいなことがあったらどうするの!? わたしあの子たちを失いたくない。」
「イバーノフが安全装置を開発してくれた。それをすべてのゼロにつけている。あれがあれば動きは制限されるが、動きの多様性を保ったままバランスも安定させることができる。大丈夫だよ。コハルが守ってくれるさ。」
「でも……。おまけにあの子たちまだ高校生よ。いくら人が足りないからって、あんな子供引っ張り出すなんて。」
「辺境戦争が正直厳しい状態なのは、アヤカちゃんが一番よく知ってるはずだ。けれど、今まで調査できなかった辺境の他の星々や移民団の様子を調べる遠征チームも必要だしね。太陽系に住む人間のためだ。仕方ないよ。一緒に頑張ろう、ね。」
「わかったトニイ。」
「あとでチームゼロの子と会いたいな。キッド、もしよかったらどこかで会えるよう取り計らってくれよ。」
「わかりました艦長」
「戦闘長、まだ慣れないなぁその呼び方。」
「わたしもですよ、艦長。」
キッドは少し笑いながら敬礼した。
キッドがいなくなると、トニイは飾っていた写真を手に取った。
「コハル、俺正しいことをしているのだろうか。」
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