終焉の涙
☆☆☆☆☆
仕方がないこととわかっていた。
今思うと、はじめから言うべきことだったのかもしれない。
でも自分には言う勇気はなかった。
言ってしまえば、剛司に迷惑をかけることになるから。
迷惑をかけないためにも、できればこのまま進んでほしかった。
でも、運命は残酷だった。
偉い人は全てお見通しだったのかもしれない。
剛司が導いてくれたレールの上を進めば絶対にできると思っていた。
そんな自分の考えの甘さを知っていたのかもしれない。
これは試練だ。
偉い人が自分に課した試練なんだ。憧はそう思うしかなかった。
青羽と友恵に姿が見えないことは憧も知らなかった。
まさか対になるものが、ここまで意味のある物になっているなんて。
憧は自分に残された時間のことだけを剛司に隠しているつもりだった。
結果的にはもう一つ隠していたことが増えてしまった。
知らないからと言って、見逃せる内容ではなかった。
剛司が敷いてくれたレールを脱線させるのに、十分な効力がある内容だった。
自分のせいだ。
一生懸命、自分のことを考えてくれていた剛司の足を引っ張る形になってしまった。こうして剛司が知ってしまった今、どうすればいいのか本当にわからない。このまま以前と同じように、待ち続ける日々が続くだけかもしれない。何もなく、代わり映えのない日常が続くだけ。剛司と出会う前の状況に戻るだけ。
これで良かったのかもしれない。
これ以上、人様に迷惑をかける心配がない。
頼ってばかりで迷惑をかけ続けていたのだから。
これは甘えようと思った自分への罰。
だからそれを受け入れるしかないんだ。
本当にこれで良かった。
良かったんだ。
目から絶えず零れる雫だけが、真っ暗なログハウスで憧の胸中を告げていた。
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