いんすたんとら~めん

鐘辺完

いんすたんとら~めん

「――よーし、三分たった」

 男はカップのインスタントラーメンのふたを開けた。

 すると中からうにょろうにょろと麺がはいずり出てきて男の体にからみついた。

「うわぁああ」

 男は麺にからまれて声をあげる。

「いつもいつもびんぼー人にばかり食われとるのも、もう我慢の限界だ」

 麺が言った。しゃべった。

「まて、話を聞け。インスタントラーメンがびんぼー人に食われるのはびんぼー人のせいじゃない。うらむなら、びんぼー人より、びんぼー人に食われるような食い物にしたやつをうらめ」

 男は必死に言った。

 麺は彼からするりとほどけ、

「そんな食い物にしたやつは誰だ」

と、男に訊く。

「……インスタントラーメンを発明したのは日清製粉の社長か会長だぞ。会社は大阪にある」

「……そうか」

 そう言って麺はどこかにずるずるとはいずって去っていった。


 その麺が男の家から五十メートルほどのところでひからびて死んでいたのは、次の日になって分かったことである。

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いんすたんとら~めん 鐘辺完 @belphe506

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