この思いの正体を君は知らない
杏仁豆腐
第1話 一億分の一欠片。
「優、ちょっと待てよ!」
そこは青葉台高校3年生の下駄箱。下平優は、自分の靴を取り出そうとした所、丁度声を掛けられた。僕を呼び止めるその声の主は、勿論振り返らずとも痛い位知ってる。だって、いつも心の中で反芻してしまう声だから。耳が赤くなって痛くなるのを身体中の全神経を集中させて、必死で我慢する。神様、どうか要にばれませんように。ーーそして僕はわざとそっけない振りをした。
「なんだよ、要おっせーな」
「そんなことないだろ、お前が早えーんだよっ」
そうやって仁藤要は僕に追い付いたところで、僕の髪をくしゃくしゃっと撫でた。要の指が僕の髪の毛を撫でて、すーっと抜けていく。そして手を放したところで、彼の綺麗な指が鮮明に目にはいった。これは不意討ちで心臓が痛すぎる。なんでこの男はこんな事が平気でできるんだっ!勘弁してくれよっ。まあ勿論何にも思ってないから出来るんだろう、そして要も僕の気持ちに気付いていない証拠だ。もし仮に要に僕が彼に抱いている感情の一億分の一欠片すら感じ漏れてしまっていたら、僕たちのこのお決まりのスキンシップはとうに成立してない。もし僕のこの重く熱い感情が要に少しでもばれてしまったら…とう思うと恐ろしい。僕はきっと心がぺしゃんこに折れてしまう。そんな妄想的考えを巡らせていたら、ボーッとしていた俺に要がすかさず話しかけてきた。
「おい、クラス発表張り出されてるの向こうだろ?見に行こうぜ」
「お、おう」
「どうかな~俺ら腐れ縁だからな、3年連続同じクラスとかあるかもよっ」
「それはそれでどーなのよ、そんなに、喜ぶ所か~?」
そして張り出されたホワイトボードを見て、俺は愕然とした。それに比べて優は対照的なリアクションだった。
「お、やっぱ同じクラスじゃーん」
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