15 夜空

仕事が終わって帰り道

人からも場所からも解き放たれて

イヤホンで音楽を聴く至福のひととき


ラジオからの生中継で流れてくるのは

ロベルト・シューマンの「ピアノ協奏曲 イ短調」


冒頭の叩きつけるような激しさにあっけにとられる

オーボエがうやうやしく手を差し伸べ

茫洋とした波間からピアノがきりりと抜き出て

あふれでる激情の音に恍惚として見上げれば

陽の落ちたばかりの空に金星が輝く


自然に足が止まったこの瞬間

わたしが人生に望む最高を感じた


音楽と天体を身体で受けとめる

生きていて良かった







***

シューマン 1845年:ピアノ協奏曲 イ短調 作品54

https://www.youtube.com/watch?v=NCeTl85p-WU


今日ラジオから流れてきた曲。添えられたこの曲の想い出が、さりげない日常の出来事で、だからこそとても素晴らしくて。

同じ曲を好きな人の言葉は特別な輝きがあり、その人と語り合う自分を容易に想像できたのです。


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