TRPGの話
乃空 望
第1話 モルディギアン
食屍鬼(グール)、それはかつて世界中のありとあらゆる所に存在する怪物であった。
しかし彼らはフランスのエネルギー革命以降、急速に発達し続ける世界の成長によって、今まで密かに暮らしていた平地や森や山脈などの住処を奪われ、次第に社会に溶け込みながらも隠れて生きる存在となった。
彼らはどんな肉でも食べることができ、どんな姿にも変身することができる。
元々知性が高い彼らは、この現代社会で生きることに、何の苦労も感じてはいなかった。
日本もまた同様に、彼らが人々の生活に当然のように関わっていた。彼らにはもちろん、友人や恋人も存在している。
そんなという存在が唯一不満を持つとするなら、それは彼らが崇拝する神の不調だろう。
食屍鬼の神は慈悲深く、人を食べることを良しとはしなかったが、そのために神の力はどんどん弱まっていき。衰弱の一途をたどっているのは、彼らから見て明らかだった。
「人間は増えすぎた」
そんな変わり果てた神の姿を見て、とある食屍鬼が一言そう呟いた。
別の食屍鬼は、
「もう十分だろう」
と呟いた。
それらの言葉は合図だったのだ。彼らの神、モルディギアンをあるべき姿へと戻すための、合言葉。
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