金)No.21「賃金闘争」タイ人と金

 私にとって、12月が一年で一番嫌な月になってしまった———。



 世間は、クリスマスだ、やれ師走だ正月だと浮かれ出す季節だ。タイも亡くなられた国王陛下の誕生日である12月5日(父の日)の前後の連休を境に完全に新年モードに入って、もはや仕事にならないのが一般的だ。


 この時期になると、ボーナス査定と、来年に向けての「賃上げ闘争」が始まる。大手の企業では、戦々恐々な毎日が始まるのだ。上手く妥協点、落とし所を探らないと、「スト突入」や「残業拒否」といった、日本で昭和の頃に盛んにあった労働争議になるのだ。


 さて、一般のタイ人ワーカー(中学、高校卒業の)にとって、「給料」に関する考え方はシビアである。例え1バーツでも食い下がる。

 一番困るのが、同僚の社員と比べてどうだこうだと言ってくるところ。

 タイ人って、自分の給料明細を見せることに何の抵抗もない。


 ——なんで、あの人より私の方が、昇給が少ないのですか?


 たった、100バーツだ(300円ほど)——。


 此処で、言っておくけど、たった100バーツじゃなく、彼らにすれば、100バーツ、なのだ。

 そういう苦情や具申を直接、経営者側に個別に言って来るのだ。


 我々、日本人なら、もし言うとしても、直属の上司か、総務の担当者とかにでしょ?まぁーめったに言うことなんかないですけどね。


 そんなだから、12月の「ボーナス査定」「昇給査定」の期間は、神経をすり減らしどっと疲れてしまう。

 一度、作ったリストを何度も見返し、そしてクレームに対してどう説明納得させるかのシュミレーションもする。


 此処で、もう一つ。


「儲かってる時」はいいのだ。ある程度、期待に応えてやれるから。しかし、さほど利益が出てない、もしくは、来年のことを考えると出来るだけ賃金コストは抑えたいって年は、もう胃が痛む思いである。


 これが終わって初めて、新年を迎えられるのだ。


 いや、厳密には、年明け従業員が全員出て来るか確認して初めてなのかもしれない

 タイでは、12月のボーナスを貰ってその足で田舎に帰って、年が明けてまたバンコクに戻ってくるとは限らない。もしくは、戻ってきても別の給料のいい会社を探す就活が始まる。だもんで、「新規採用」を出すならこの時期が一番効率がいいのだ。


 そんなこんなで、12月、1月は、タイの日系企業にとっては鬼門の月になっている。


【激生情報】


 優秀な人材や、ベテランの社員が給料に不満を持ってる場合は、注意が必要だ。そういう場合は、迷うことなく、「特別昇給」を秘密裏に約束もしくは実行する。どうせすぐバレるんだけど、一応「黙っとけよ」と釘を刺すのだが。


 技術職の人間を一から育てるのは時間も金も掛かるのはここタイでも同じであり、日本よりも時間がかかるのは当然で、そんな一度育て上げた人材を簡単には手放してはいけない(まぁー、悪いことする奴は別だけど)。きっぱり割り切って「特別昇給」してやるべし。(クレーム来ても、こういう場合はすぐに収束する、みんな知ってるのだ、奴は仕事ができるから……というのを。)




 |............λ    では、今日はこのへんで


                    by ピエ太

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