国)No.20「タイ全土大洪水」2011年の大災害

2011年、10月17日 pm7:00 弊社は大洪水に呑まれた———。



忘れもしない、タイ東北部から中部を襲った大洪水。10年に一度あるかないかの「洪水」だったらしい。その年は4月の早くから多くの雨が降っていた。普通なら雨季入りは5月後半なのに、やたらよく雨が降っていたのだ。


弊社が水没する10日ほど前だったろうか、弊社から北に15キロほど行ったとこにある「工業団地」の取引先から電話があった。


——浸かりました。これより避難します、ご迷惑をかけます。


 その翌日、テレビ画面を見て愕然とした。HONDAの工場が水没し、生産された新車が何百台も、水にプカプカ浮いていた。


それからは早かった、1日、1日と次々と工業団地が陥落していった。弊社が浸かる前の週の土曜日に、私は車を運転して被災状況を視察しに走った。これ以上は車では行けないというところで車を降り、歩いて高速道路の高架に上がった。


 タイの中部の平原が、一面水に浸かって、湖と化していた———。


ぞっ、っとして後ずさりしたのを覚えている。それから慌てて社に戻り、レッカー車と大型15トントラックを6台ほど手配をした。


———この分だと、来週初め間違いなくウチも浸かる


そう思ったのだ。


我々、製造業にとって命の次に大事な機械を水没させたら、ウチは潰れる——だから、逃げなきゃ。機械だけでもすぐに逃がさなきゃ………


 予感は的中し、月曜の朝から、じわりじわりとエイリアンみたいに水が侵食してきた。時間との勝負だった。何十台とある機械を全部トラックに載せきるのに夕方遅くまでかかり、やっとの思いでトラックを見送った時には、水は踝を超えて勢いを増していた。


自分たちが、乗用車に乗って工業団地の門を出た時には、乗用車のドアから水が浸水してくるほどの水位になっていた。


 危機一髪———、なんとか逃げ切った。


その翌日、工業団地の責任者から連絡が入った。


——浸水しました。水位は現在1m60cmです……


 ほぼ、間違いなく工場内は水没したと思った。


それから、工業団地の水が完全に引くまで、2ヶ月半を要した。タイの地形は滑らかでほぼ傾斜がない。それが災いして水が滞留し続けたのだ。


 とうとう、バンコク県境まで水が押し寄せ、旧国際空港の「ドムアン空港」が水没し、停留中の飛行機が逃げ切れず、プカプカ浮いているのを高速道路から眺めていた。それでも、まさかバンコク市内までは来ないだろうと高を括っていたのだけど……


11月1日、バンコク北部に水が押し寄せた。ここを越えると日本人居留区まで来る可能性が出てきた為、大手の日系企業では家族を日本に帰らせる命令が出ていた。事態はかなり緊迫していたが、政府が打てる手は少なく、最後の砦たる「スワンナプーム国際空港」を守ることが最重要使命になっていた。


——国際空港を2ヶ所も水没させては国の威信に関わる


軍や警察総掛かりで、空港周辺に鉄壁の土嚢壁を作っていた。我々はそれを避難先のホテルの窓から見ていたけど、突然そのホテルのトイレの便器から水が逆噴射してきた時は、もうアカン———と諦めましたね。


 今思えば、よくぞ乗り切ったと思います。そしてなんとも皮肉な話ですけどあれを乗り切れたんだから——、みたいな妙な武勇伝めいた自信ができたのも事実です(笑)


【激真相情報】


ただ、大きな声では言えませんが、あの大洪水は実は「人災」だったのです。

北部に大きなダムが二つあるのですが、そこに水を貯めて水危機に備えるのが例年のことだったのですが、この年は雨量が半端なく、ダムに貯水していたものが危うく溢れるところで、慌てて、一気に、放水したもんだから中下流域の川が氾濫してしまった——、っていうのが真相だったのです。


いかにも、タイっぽいというか、、、

だって、タイだもん——、では諦めがつきませんよ、ほんまに。



|.............λ    んじゃ、今日はこのへんで。


                   by ピエ太

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