第33話ビエイラ
カイトは槍を構えるヒマもなく、ビエイラのレイピアは襲ってきた。
かいとは、なんとかかわすのが精一杯だった。
ビエイラは、突きを繰り出しながら笑っている。
「嬉しいね!有名人に!会えるってのは!」
「ああ…そうかい!…じゃサインあげるから!…この剣を!…収めてくれよ!」
カイトは、なんとかかわしながら、強がりを言う。
「ハハハっ!サイン!いいね欲しいねぇ!
ついでに!辞世の句も!書いておいてよ!
君の血で!」
男の突きのスピードは、速さを増してくる。
しかも、確実に急所を狙ってきている。
カイトは、得意の槍を振る為に、間合いをとりたかったが、男の速さは尋常じゃないため、
どんなに下がっても、間合いがとれなかった。
なんとか、一瞬の隙をついてビエイラを蹴り、
槍を構えた。
「いい槍だね、だけどここは廊下だよ?
狭い場所で、その長い槍は君の首を絞めちゃうんじゃない?
ま、そう思ってここに決めたのは、僕だけど…」
ビエイラの攻撃がくる。
なんとか槍で受けるが、剣先は一点のため、槍で受ける事も困難だった。
カイルは持ち前の身軽さで、剣先をギリギリでかわしていくが、
その度に、剣先は確実に目や、ノドといった急所をついてくる。
「どうした?ロデオソウルズの二番隊隊長、閃槍のカイトとは、
この程度か!」
長い廊下の中央で始まった戦いだが、ビエイラが繰り出す高速の突きにより、
避けてばかりのカイトは一気に廊下の端に追いやられた。
カイトはもう下がれない。
「行き止まりだねぇ、カイト…さぁチェックメイトだ!」
ビエイラが最後の突きを出した瞬間に、カイトは槍を後ろの壁に突き、
その反動で、ビエイラの頭上を越え、背後に飛び、距離を取った。
「面白いことをやるね…まだダンスを続けたいんだな!」
ビエイラは、疲れを知らないのか、再び高速の突きを繰り出す。
軽いレイピアだとしても、これだけ、連続で突きを繰り出せるとは、相当なスタミナだ。
避け続けるカイトだが、次第にビエイラの剣先はカイトの頬や首筋を傷つけ始める。
「おや?綺麗な顔に傷が増えてきたねぇ?
そろそろ、限界なんじゃない?」
カイトは、反撃に出たいが、狭い廊下のため、槍を振り回すことは不可能だ。
「君の、得意な槍技が見れなくて、残念だよ…
まぁ、ゆっくりと痛ぶってあげるから、傷だらけの天使にでもなりなよ!」
カイトはビエイラの突きを避けた瞬間、とっさに両側にあった窓ガラスを、槍を回転させて割る。
「何を!」
二人の身体には、ガラスの破片が飛び散り、ビエイラは一瞬だけ怯んだ。
その隙をついてカイトは、後方に全速力で走り出した。
「ははは、ついに逃げ出したか?
だが、残念だったね、
とっくに中央にある階段は過ぎてる、君の逃げ場はない!」
カイトは、廊下の端まで行くと振り返る。
ビエイラがこちらに向かって猛スピードで走って来る。
カイトは、先ほどの兵士に投げたように、
ビエイラめがけて、体をしならせて槍を全力で投げた。
槍はビエイラの身体に当たる……
その直前でかわされた。
「最後の抵抗で一本しかない武器を投げるとは…
勝負を投げたのと同じだ!
死ねカイト!」
ビエイラの最後の突きはカイトに届く五歩前に…
カイトの槍がビエイラの身体を貫く。
「…な……なぜ!?…槍は…一本しか…」
ビエイラは、自分に刺さっている、槍を引き抜いて気がついた。
「…み…短い………折ったのか?……ハハ……」
「見たかったんだろ?俺の槍…
それ記念にやるよ…じゃあな」
カイトは、頬の血をぬぐいながら、ビエイラの亡骸から離れて行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます