第16話プレゼント

昨日はそのまま飯を食べてからすぐに帰ったので先日買った本を読んでいたのだが、どうやら読んでいる最中に寝てしまったらしい。本の一ページだけが完全に折れ曲がっていた。すぐに真っすぐにしようと試みたが残念なことにそれは不可能だった。

仕方がないので俺はあきらめて覚えているところからまた読み始めた。


昼前頃に電話が鳴った。

「久しぶり。元気?」

州夜の婚約者、繭魅からだった。

「ん?どうした?」

「今日ちょっと暇だったら付き合ってほしいんだ。だからお願いできないかな?」

「俺は大丈夫だよ。何時から?」

「今からだったら時間もあれだし、ご飯食べてからでも良い?」

「わかった。俺もこれから飯作って食べるとこだから、繭魅が食べ終わったら連絡してよ。」

「OK。また連絡するね。」

そう言って電話を切り、俺はキッチンへと向かった。

簡単に出来るインスタント麺が丁度あったのでお湯を沸かして煮た。俺はこういうたぐいのラーメンには卵を入れて食べたいので最後に割って落とした。

 

 ラーメンも食べ終わり後片付けも終わった時、繭魅から再び電話が来た。

「もうそろそろ大丈夫?」

「OK。どこに行けば良いの?」


 とあるショッピングセンターに呼び出された俺は繭魅を待っていた。

「わざわざ来てもらってごめんね。」

「俺も暇してたから大丈夫だよ。ところで今日はなんかの買い物かい?」

「うん。もうすぐで州夜の誕生日だからさぁ。」

「なるほどね。だから俺にアドバイスしてもらいたかった訳だ。」

「正解。私あまりそういうの選ぶの得意じゃないからさ。」

「そんなの気持ちの問題だと俺は思うけどね。お前の気持ちがあいつには一番のプレゼントだと思うよ。」

俺は笑顔で言った。

「そうなんだけど、やっぱりいつも私の誕生日にはいろいろやってもらってるからさ。私もなにか返したい。」

「わかった。まぁ、ここならなんでも揃ってるから良いものが見つかるはずだね。」


このショッピングセンターは俺たちが住む町の中でも一番大きなショッピングモールで、まだ完成してからそんなに月日が経っていない。テナントの中にアウトレット等もあり毎日客であふれている。

「やっぱ人数半端ないな。」

「そうだね。私結構人酔いしちゃうからこういうところは苦手なんだよね。」

見た目に似合わないギャップに女の子を感じてしまう。別に恋愛感情としてではないが。

「なにか欲しいものとかぼやいてなかったのか?」

「ううん。最近はこれからの事で頭がいっぱいだからそういった類の事は何も聞いてないんだ。」

「そうか。ま、仕方ないか。それじゃ片っ端から見て回るか。」

俺はそう言って歩き出した。


あいつは普段結構お洒落なところがあるから服とかは困っていないと思うし、アクセサリーだって結婚指輪を買って身に着けたばかり。それで別のリングとかはNG。もので残したいと繭魅がいうので食い物もダメ。靴の贈り物は縁起が悪いと聞いたことがあるし、仕事道具で使えそうなものはわからない。本当にこまったものだ.

 俺と繭魅でいろいろと見て回ったのだがこれといってピンとしたものが見つからない。どうしたものか。


「仕方ない。一つだけ提案がある。」

俺は決心して繭魅に言った。

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