第六十三話 何でも村民相談室?
村の子供たちにも勉強を教えると言う学習教室の様なものを開くと言う話もとりあえず終え、次の行商の準備などをして過ごしていたのだが……なぜか最近、孤児院まで来て俺に色々と相談にのって欲しいと言ってくる村人が増えていた。意味わからん。
――――とある晴れた日、この日の相談者は三名。
一人目ネコミミおばさん。
「ちょっと聞いてよ。子どもたちが寒いからって家に閉じこもっちゃってるんだけど、なんか外で遊ばせるいい方法ないかね?」
二人目クマミミ兄さん。
「最近雪多いだろ? スコップで除雪してたら腰が痛くなっちまってよ~、もうちょっと楽に除雪する方法ってないか?」
三人目クマのおっさん。
「あのよ~、子供に相談する話じゃねぇってのは分かってんだけどあえて相談させてもらうぜ。実はかみさんに浮気がばれちまってよ……このままじゃ血を見ることになりそうで……どうすりゃいいと思う?」
おい! 最後のやつ! こんな狭い村で何やってんだが……てか、本当に見た目子供(ちょっと悲しい)の俺に相談するような内容じゃないな!
一応、村の人たちには世話になってる事だし相談に可能な範囲で答えていくことにした。
「えーと、子供たちを外で遊ばせる方法ですが。後日、孤児院の子たちと一緒に村の子たちにもかまくらや雪だるまというものの作り方や簡単な雪遊びなんかを教えます」
「腰を痛めたりしない様に楽に除雪する方法ですか……う~ん、それでは何か役立ちそうな道具を作ってみますんで完成したら使ってみてください。それでだめなら改良づるなり新しいものを作るなりします」
「いや、本当に俺に相談するのはどうかと思いますけど……そうですね~、詳しいことが分からないので浮気相手の方にも問題が全くないとも言い切れませんが、基本的に浮気をしたあなたが全面的に悪いので奥さんに誠心誠意謝って許して貰ってください。浮気相手に関してですが――え、そっちは話しついてるんですか? じゃ、話が付いていることも伝えてちゃんと誤ってくださいね」
三人目の相談も終わり、なんか疲れたのでお茶でも飲んで休憩しようと休憩室へ行くと相談に来ていた三名が談笑していた。三人目のおっさんは『お前は談笑してる場合じゃねぇだろ』と思いつつもちょうどいいから何で俺の所へ相談に来たのか聞くことにした。
「えーと、最近なんで村長さんの所じゃなく俺のとこに相談に来る人が多いのか何か知りませんか?」
ったく、なんで俺のとこへ来たんだか知ってるなら教えて欲しい。
「村長の所へ行ったんだけど『孤児院に居るリン君を頼り相談した方がいい』と言われたわよ?」
「俺もだぞ」
「俺も村長に言われたんだけど子供相手に浮気がばれたって相談はどうなんだと思って聞き返したんだけど『リンくんなら大丈夫じゃろう』って言われてここに来た」
「………………」
村長ー! 頼られるのは嬉しいがこれはもう頼られてると言うより便利に使われてる感じだぞ! てか、なんで俺はそんなに村長に信頼されてんだ?
――――数日後
子供たちのために滑り台を作り、かまくらや雪だるまなんかはできたのを見るより実際に一緒に作る方が楽しいだろうと思い目の前で実際に一つ作って見せてから作り方を教え年長者に注意事項を伝えて小さい子がケガしないように気を付けるように言い聞かせてから手伝いながら作り遊ばせた。
除雪に関してはアルミなんて素材は存在しなかったので鉄製のスノーダンプを作ったが重くて使いにくかったので、軽くて丈夫な木材があったのでそれで木製のスノーダンプを作ったがブレード部の強度が足りなかったので鉄板を張って補強した。
浮気の件は俺にはできる事は無いので自分でどうにかしてもらうしかない。
「いやー、子どもたちが喜んで外で遊ぶようになったよ。本当にありがとうね」
「いえいえ。それで、それほど危ない事は無いとは思いますが、たまにでいいので子どもたちがケガなどしてないか大人が見守ってくれれば思います」
「ああ分かったよ。暇な時間にでも様子を見るようにするわ」
一応、ある程度安全面には注意して作ったし年長者の子供にも言って聞かせてるけど、何かあった時に対応できるように大人の目があった方がいいからな。
「スノーダンプの使い心地はどうですか?」
「おう、あんたか。いや~、このスノーダンプってのは便利だな。スコップでちまちま捨ててた時と比べて一回でいっぱい運べるから格段に腰にも体力的にも楽になったよ」
「作り方や修理の仕方などダイロさんに教えておくんで壊れたりおかしなとこ出たらダイロさんの所へ行ってください」
今の段階じゃ俺はここに定住するって決めた訳じゃないから壊れたり新しいのが欲しくなった時のためにも村の人たちで作成修理できるようになっておいて貰わないとな。断じてめんどくさいからダイロに丸投げするわけではない!
「かみさんに土下座して謝って、その後4時間正座してやっと許して貰えたよ。おかげで足がしびれてしばらく立てなかったけどな」
へ~、この世界にも土下座とか正座ってあるんだな、なんか変なとこで感心しちゃったよ。ま、許して貰えたのならよかったよかった…………二度とするなよ。
「もう浮気なんてしないでくださいね」
「……ああ……『次浮気したら土下座や正座ぐらいじゃ許さないからね! その足ちょん切ってログウルフの餌にしてやるから』って言われたよ。あいつなら本当にやるだろうから二度と浮気はしねぇ」
怖いなかみさん! なんか普通に狩りしてるよりよっぽど疲れるな、主に精神的に! ちょっとライドドッグのとこ行って癒されてこようかな。
なんか疲れたのでライドドッグ撫でに行こうかと席を立つと院長がやってきた。『まさか、院長まで俺に相談か?』と思っていると。
「あ、あの~、ええっと、なんていうかリン君すっかり村の相談役みたいになっちゃったわね。いっそ孤児院で本格的に相談室開かない?」
「開きません!」
「……と言いつつ」
「開きませんよ?」
「じゃ、ルブラって呼んでくれない?」
「呼びませんよ。てか、今それ関係ないですよね?」
勘弁してください。どう考えても面倒ごとの匂いしかしないし、そういうのは村長の仕事じゃないのか? ま、俺が面倒だからやりたくないってのが一番の理由だけどね。さ、とっととライドドッグをモフりに行こ~っと。
その後も相談に来る村人が多かったため相談料を取ると言うと、多少は相談に来る人は減ったがそれでも一日平均一人は相談に来たので、せめて村長に相談してそれでもダメな場合のみ来てもらうようにした。もちろん村長にはちゃんと相談にのりできるだけそちらで解決するように脅し――釘を刺しておいた。
金を払ってまで俺に相談に来るって、こんな狭い村でよくもそんなに相談することがあると感心するな。
「兄貴~、あんだけ色々変わった事したんだから相談に来たいって人は多いと思うぜ」
「ラウ、心の中を読むのは止めてくれ。てか、なぜ考えてたことが分かったんだ?」
「リン兄さん。あの、顔に出てますよ」
「……リンは……単純……分かりやすい」
なんかみんなひどい! でもそうか、俺って顔に出やすいのか……前はそんな事無かったと思うんだが、こっちの世界来てから変わったのかな? それとも若返ったことによる副作用かな? そこんとこ今度リュースに聞いてみるか……。
その後、相談に来る人もめっきり減り自分が使える時間が増えたので個人的にはいまいち使い勝手が悪いように感じていたスノーダンプの改良と他にも除雪道具をいくつか、移動道具としてスキーとストックもダイロに教えつつ一緒に作製。
スノーダンプの改良について当初は軽量化を図っていたのだが、強度が足りなくなってしまったのでまずは材料から見直す事となった。
その後試行錯誤の結果、本体の木材は軽くて強度が高いものに変更し底面に当たる部分を滑りをよくするために溝加工を施し焼加工をした後磨いてニスを塗る持ち手であるバーの部分は負荷がかかるので強度のある鉄製に変更し組み立てさらに全体的に強度を上げるため金具で各部を補強、本来ならこれで完成となりはずであったがダイロから『これって除雪以外、雪が無い時とかにも何かに使えるようにはできないか?』と言われたのでどうにかできないか考えることにした。
たしかにせっかく作ったのに冬の間だけしか使わないと言うのも勿体ないか。
あれこれと考えた結果、出来上がっていたスノーダンプに冬期間以外でも荷物を積んで運べる様にと車輪を取り付けて全体のバランスを見て持ち手部分にウェイトを取り付けて調整し完成。結局改良前より重くなってしまったが夏場に簡易荷車としても使える物となった。
使い勝手は良くなったけど、ちょっと重すぎるかな? でも、俺の持ってる知識とこの世界の材料じゃこの辺りが限界だな。でも、走行性を上げるためせめてゴムのタイヤを作りたかったな……ゴムが無いから無理だけど。
道具系以外では子どもたちの遊びとしてかまくらを作ってその中でいも餅を焼いて食べたり、雪合戦も教えたのだが……ラウに雪玉を投げさせたら雪玉が家の壁の板を割ってしまい最早凶器とそん色ない威力となっていたので村に被害が出ない内にラウには力のコントロールがちゃんとできるようになるまで雪合戦禁止とした。何やら文句言ってたがケガ人が出てからでは遅い。
てか、何気にラウの身体強化が凄くなってきてるな。最近じゃ自分の意思で使える様になって来てるらしいし……前の模擬戦のときも感じてたけど、これはもう接近戦だと勝てないかもしんないな。
次の行商が一週間後に迫り、前回町へ行くときには数が揃わず持って行かなかった木製ペレットや新たにスノーダンプなんかも売ろうかと村長に相談すると、かんじきが売れた事で俺の作るものは売れるんじゃないかと思ったらしい村長と村人たちが冬の手仕事を止めてまでそれらの作成に参加し短期間のうちにに十分な量が出来上がっていた。
なんか手伝ってくれた村人たちが怖かったな。あまり金に目が眩むようにはなって欲しくないんだけど……ちょっと調子に乗って色々作り過ぎたかも知んないな。
そして二度目の町への行商、今回約束通りルカも一緒に行く予定だ。ちなみに、レイのやつに簡易カイロを作って渡し、それがあれば多少寒くても大丈夫だろうから一緒に行かないか誘ったのだが、それでも外は寒いので嫌だと言って孤児院にあるストーブの前で丸くなって寝始めていた。その見た目はなんかもう狼と言うより猫を連想させる姿だったよ。
レイ、最近怠けすぎじゃないんだろうか? 狩りに誘っても似たようなこと言ってついてこないし、そんな生活してると太っちゃいそう――あれ? レイはなんでこっち睨んでるんだ? ま、まさか、心読まれてる?
仕方が無いからラウでも誘うかと思って探していると、ラウは孤児院の子供たちに捕まっており(ま、正確にはラウも孤児院の子なんだけど)一緒に遊んでいて楽しそうにしている子供たちからラウを引き離すなんて選択肢は選べるはずもなく、気が付かれない様にそーっと歩き孤児院をあとにした。気のせいかラウが助けを求めるような目をしていた気がするが多分気のせいだろう。だって、楽しそうな子供たちの声が聞こえてたし、きっとラウも子供たちと一緒に楽しんでるはずだ。
しゃーないな、ルカをサースちゃんと遊ばせてやりたいから今回の店番は一人でするか。
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