第三十九話 ラウ、シルバーランクへ・ルカの病気判明、そして完治

 翌日、朝食を食べたあと商店街などを散策したり公園で遊んだりして過ごし、ルカも久しぶりの外出に嬉しそうにしていたが、フードを取って遊ばせてやれなかったのがちょっと心苦しかった。

 最後に、ルカがギルドが見てみたいというのでギルドに寄ってみたら二週間後にシルバーランク昇級試験が開催されるという張り紙が出ていた。


「なぁ、ラウ。金なら出すからおまえシルバーランク昇級試験受けてみないか?」

「え、兄貴。受けていいのか? 俺は奴隷だぜ?」

「ああ、奴隷とかどうでもいい。おまえがシルバーランクになる意思があるなら受けてもいいぞ。条件はクリアしてるはずだしな」


 窓口で受験用紙をもらい、ラウに書き方を教えて書かせ提出すると、職員が記入内容の確認してラウなら筆記試験と軽い面談のみでいいと言われた。実地試験が無いのはどういうことかと聞くと、すでにダンジョン経験がちゃんとあるならいまさらダンジョンに入る必要もないということで、学力と最低限の礼儀作法があればいいということで、二週間後に規定の人数が集まれば受けれるとのことだった。

 そして、俺が試験を受けたときにも別室でダンジョン経験があるブロンズランクの冒険者が筆記と面接を受けシルバーランクに結構な人数が昇級していた事をいまさらながら知ったよ。


「ラウ、明日から勉強漬けだな」

「そんな~」

「リン兄さん。私も手伝ってお兄ちゃんに勉強教えます」

「そんな~、ルカまで……」


 翌日からは、ルカと一緒にラウに礼儀作法と勉強を徹底的に教え込んでいったのだが、ずっと勉強漬けでラウのストレスが溜まり勉強の効率が目に見えて下がってきたので、勉強の合間に狩りなどでストレス

を発散させることでガス抜きをさせて勉強効率を落とさないようきにしつつ日々を過ごしていたが、シルバーランク昇級試験の開催が決まったこという事を知ってからは、遅れていた礼儀作法を中心に追い込みをかけて行った。そして、いよいよ試験当日の朝がきた。


「お兄ちゃん。忘れ物はない? 受験票はちゃんと持った?」

「お、おう! ちゃんと持ったぞ」

「それじゃ、ラウ。そろそろ行くか」


 奴隷のしかも獣人であることから俺も付き添いでついて行くことになっていた。

 ギルドに着き、ラウが試験を受けている間はこれといってすることも無かったので、どんな依頼があるのか依頼書や依頼板を見たり、食堂で紅茶を飲んで休んだりして待っていた。


 さて、そろそろ試験も終わるころだし迎えに行くか。それにしても、こんなに一人でゆっくりするのは久しぶりだったな。


 ロビーへ行くと、すでに試験は終わっていたようでラウが俺を見つけてこちらへ駆けよってきた。


「あ、兄――リン様。受かっ……りました!」

「うん。よく頑張ったな、おめでとう。串肉買ってルカのとこに帰るか」

「やっ、あ、ありがとうございます。カードとプレートは明日だ、だそうです」

 

 昼食と夕食の分、頑張ったラウのために特に肉を多く使った料理を中心に買ってから宿の部屋へ戻った。


「「ただいま~」」

「おかえりなさい。リン兄さん、お兄ちゃん、試験はどうだったの?」

「おう! 受かったぜ!」

「おめでとう、お兄ちゃん」


 昼食後は自由時間としてラウはルカと部屋で過ごし、俺は商店街で夕食の料理や雑貨などを買って宿に戻り夕食はささやかなながら、ラウの合格祝いをした。


「ラウ、今日は好きなだけ肉を食べていいぞ」

「兄貴、いいのかよ。試験に受かってよかったぜ!」


 翌日からダンジョン攻略を再開、『地図アプリ』を使って地下20階層まで最短距離を割り出して駆け抜けて昼食を食べてからいよいよ地下21階層へ。

 階段を降りて地下21階層の最初の部屋に入ると、扉が閉まり閉じ込められてしまった。部屋は四角い普通の部屋でそれぞれの壁に扉があるだけで魔物などはいなかった。どうやって出ればいいのか部屋を隅々まで調べてみると、星型の石と丸い石、それと三角の三つの石が床にあるのを見つけて、その石がはまりそうな穴が入口以外の三面の壁それぞれに三角の穴、丸い穴が、星形の穴の三つの穴があった。じっくり観察をして何かヒントになるものはないかと見ていると、息が苦しくなってきて頭痛や吐き気を感じてきた。


 やばい、これって空気薄くなってるのか! この部屋、空気の循環がない密閉空間だったのかよ。とにかく早く別の部屋に移動しないと酸欠で倒れてしまう。


「あ、兄貴。息が苦しい」

「ラウ、とりあえず石をセットしてみるけど、何が起こるか分からないから覚悟しとけよ」


 一か八か適当に石をはめてみると、カチリと音がして正面の扉が開いたので急いで中に入ってみると、なぜか元の階段の場所に出てしまい、そして二人とも扉を潜ると扉が勝手に閉まった。


「あれ、ここは……上にのぼる階段だよな? ということは、戻ってきちゃったのか?」

「兄貴、どうなってんだ?」

「う~ん。穴に入れる向きが悪かったのか、順番があるのかもな……まさかとは思うけど三ヶ所同時にはめないとダメとかだと、もう一人連れてこないと先に進めないな」


 三つの石に何か法則性のようなものがあるのかな~? 三角、丸、星……分からん。ラウに聞いてみるか。


「なぁ、ラウはさっきの石の形を見てこの世界の常識から考えて何を連想する?」

「んー、三角って言うと山とか朝かな? 丸はスライム? 星はそのまま星?」


 朝か、なるほどね。それにしても、なんで朝が三角なんだかな……でも三角が朝だと仮定すれば、何となく答えが分かった気がする。


 左壁の左の穴に三角の石を入れ、正面の扉の真ん中の穴に丸い石を、最後に右壁の右の穴に星形の石を入れると。またカチリと音がして今度は入ってきた扉が開いた。

 その後も、行く部屋全てに謎解きや部屋の魔物を倒さないと扉が開かないなどの何かしらの仕掛けがあり、間違えると開いた扉の先が元の地下20階層への階段前に繋がってしまった。

 謎を解いて次の部屋へ行くとまた謎解きという事を繰り返したが、下への階段を見つけることのできないまま時間が過ぎ、夕方過ぎになっていたので地下20階層の転移魔法陣で地上に戻ることにした。

 ちなみに、出てきた魔物はレッドサーペント、角の部分が短剣のようになっているソードラビット、大きい牙が特徴のファングボア。


 地下21階層、謎解きとか……かなり厄介なフロアだな。ラウはこういう頭脳系は苦手だからあてにできないしな~、このフロアの攻略にはかなり時間がかかりそうだ。


 結局地下21階層は謎解き部屋か入ると魔物と戦うような部屋で普通の部屋は一つもなかった。面倒だから扉を爆破することも試したのだが何をしても事破壊することはできないようだった。結局攻略するのに二日もかかってしまい、ほとんど謎解きで魔物などもあまり出てこなかったためラウの出番はほとんどなく、謎解きばかりでラウにはストレスが限界近くまで溜まっていたようだったので、地下21階層攻略の翌日には普通に地上で好きなだけ狩りをさせてやりストレス解消させた。


 俺もストレス解消とスマホのレベル上げのため強そうな敵を何体か狩ったことでスマホのレベルが25まで上げれるようになったので、早速宿に戻りスマホのレベルを上げて内容を確認してみた。

 スマホ本体と各アプリは基本的には今までのレベルアップのときとほとんど同じだった。


 なんかレベル上げてもそんなに目新しい事が無くなってきたな。ポイント交換特典の方はどうだろう?


 現在のポイント交換特典。


  ・ウェアラブル端末タクティカルグローブのスマホとのレベルリンク。(P5)

  ・新規アプリの追加。タイマーアプリ・医療アプリ。(P5)

  ・ランダム獲得。(P5)


 あ、医療アプリ! リュースのメールに書いてあった『スマホのレベルが上がればクスノキさんにもそのうち治せるようになるかもしれません』ってのはこれの事だな。これは交換確定で、後はタクティカルグローブのスマホとのレベルリンクを交換で他は……今は別にいいな。


 医療アプリ


 ・自身に使う場合は本人アイコンをタップすると診断結果として現在の状態(病気の有無、血圧など)が表示されます

 ・他人に使う場合は診察アイコンをタップしてください。するとカメラモードに切り替わりますので対象から30cmほど離した状態で全体をムービー撮影していき、撮影し終えたら終了アイコンをタップすると診断結果として現在の状態が表示されます。

 ・診断結果でケガや病気が見つかった場合、それに関する対処法が表示されます。


 さっそく『医療アプリ』を使ってルカを診断してみると『病気:肝臓』と表示されたのでタップすると『魔法アプリ』が開き、画面に注射器の形をしたアイコンが表示されていた。

 次に指示通りに『回復』と『治癒』を注射器アイコンにそれぞれドラッグ&ドロップして『治療魔法』が完成した。


 手順通りにやったからこれでルカの病気を治せるはずだな。とはいえ、一応説明してから使わないとな。


 ラウとルカに説明をし、同意を得てから『治療魔法』をルカに使うことにした。まず注射器アイコンを右手でタップすると右手に魔法のときと同じ光の輪がつき、そしてルカの腹部、肝臓の真上辺りに右手を当てて『治療開始』と唱えると触れていた場所が光だし、手を放して様子を見ることにした。


「あ、兄貴。ルカは治ったのか?」

「いや、少し様子を見ないと何とも言えない。とにかく一晩様子を見よう」


 翌朝、ルカを『医療アプリ』で診断してみると『正常、異常なし』と表示され、ちゃんと病気は完治したようだった。


「よし、ちゃんと治ったようだな」

「あ、兄貴……本当にルカは治ったのか」

「ああ、病気は完治したし後遺症もないみたいだ。ルカはなんか違和感とか感じるか?」

「いえ、身体はだるいですが。苦し感じが昨日から一度もありません。リン兄さん、ありがとうございます……リン兄さんに買ってもらっていなかったら私は助からなかったと思います。このご恩は一生かけてでも返します!」

「俺もだぜ! 俺も一生かけてでもルカを助けてもらった恩を返すぜ!」

「恩を売った覚えなんてないから、あんまり気にするな」


 これならしばらく安静にしていれば完全に普通の子たちと同じようになるだろう。そうなればルカを一人宿で留守番させても多少は安心できるから、泊りでダンジョン攻略をすることができる。

 ダンジョン攻略終わったらどうするかそろそろ考えてもいいか……あ、そうだ!


「なぁ、二人とも。ダンジョン攻略が終わったらレオロイデ共和国に行かないか?」

「ん? 兄貴、いきなりどうしたんだよ」

「リン兄さん?」


 ルカの病気が治ったことだし、長距離移動にも耐えられるだろうと思って、獣人でも普通に暮らせるであろうという思いから出た話しだと説明すると、二人とも抱き着いてきて感謝してきた。とりあえずかわいかったので撫でておいた。


 翌日ギルドに素材を売りに行き、報酬を受け取っていたときとギルド内が騒がしくなり何事かと思ってると重症のハイルが運び込まれてきた。


 あれ? ハイル、なんで……何があったんだ?

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