第二十三話 小都市ゴラウ

 見えてきた小都市ゴラウは小都市とはいってもホラブとはあまり大きさが違わないように見えた。

 ゴラウの手前で駅馬車と別れ商隊は商業用の門へ向かい列に並び、入都税は必要経費としてベガルがまとめて支払ったのでギルドカードの提示だけですんなり入ることができた。

 門を潜ってすぐの開けた所でベガルに依頼書へ受領印をもらい、そのままギルドへと依頼達成の報告に向かうことにした。

 ギルドの中はそれほど混雑しておらず、受付に多少は並んでいたが割とすんなり順番が来た。受付にいたのは胸囲が凶器のお姉さんではなく、営業用スマイル眩しいイケメン青年でした。……残念!

 依頼の報告をし、ついでに試験の方は人が集まったのか聞いてみたがまだ集まっていないようで、さらにダンジョンの説明なども聞いたのだが、ダンジョン関連のことは直接ダンジョンの入り口にあるギルドの出張所の方へ行き、そちらで聞いて欲しいとのことだったので昼を食べてから向かう事に決めて、まずは何か依頼はないか見ることにした。

 依頼に関してホラブとは違い、依頼木板ではなく依頼書(羊皮紙)が張り出されていた。ブロンズランクの依頼の中から『キラービーx8討伐』 『キラービーの針x5』 『サーペントx6討伐』 『グレーウルフx6討伐』をとりあえず手に取った。


 えーと、ウルフ、サーペントは狼と蛇の魔物だからそれなりに強いのだろうと分かるんだけど、キラービー? ……蜂のことだよな? 蜂を八って駄洒落か! ってそうじゃない、たかが蜂の駆除がブロンズクラスの依頼なのか? スズメバチの駆除だって下手したら市役所の職員の仕事だぞ。ま、いいやとりあえずこれらの依頼書を全部持って行って聞いてみるか。


 ブロンズクラスの魔物だし、今の俺ならそんなに苦戦もしないだろうと全部受けることにし、キラービーとはどんな魔物でどのあたりに生息しているのか窓口の職員に聞くと、体長1mもある巨大な蜂で尻尾の針には毒があるから危険、西門の先にある林や草原にに多く生息していて、他の依頼の魔物もその草原の辺りにいるはずだと言うことを教えてもらった。


 いやいや、毒とか言う前にそんなでかい蜂の針なら頭とか心臓を刺されたらそれだけで死んじゃいそうだな。 ……あ、そうだ宿も探さないといけないな。ついでにおすすめの宿でも聞いてみるか。


「あ、すみません。この町でおすすめの宿はありませんか?」

「それでしたら手ごろな値段で料理もそれなりの海猫亭がいいですよ。場所はここを出て右に四軒目です。それと、ギルドと提携している宿でもありますから冒険者は優先的に泊まれるので受付でギルドカードを提示してください」


 教えられた宿に行きそこで昼食を食べて、部屋を取ることにした。


「すいません。宿泊お願いしたいんですが」 

「はい、いらっしゃいませ。何名様で何泊のご予定でしょうか?」


 宿のカウンターにいたのは色々普通な感じのお姉さんだった。


 どうするかな~。試験が開かれないとシルバーにはなれないからダンジョンにも入れないし。そうなるとゴウラにいる意味もあまりないんだよな……ん~、とりあえず一週間でいいか。


「一人、一週間でお願いします。あ、ギルドカードあります」

「はい、カードをお預かりします。確認いたしますので少々お待ちください」


 受付の店員がカードを魔道具らしき箱にカードを差し込んで問題ないこと確認してからカードを返してきた。


「一泊朝食付きで2,000ギリクで、風呂付ですと3,000ギリクになります」


 それを聞いて「風呂付の方で!」と、ちょっと食い気味に答えてしまった。


 おお、まさかここで風呂にはいることができるとは思わなかったな。ま、『浄化』があるから入る必要はないんだけど、精神的な意味で入りたかったんだよね~。うん、これだけでも来てよかったかもしれない。


 夕方に宿で食事をしてから宿泊するということで予約という形になり、前金に3,000ギリク支払い、宿泊時に残りを先払いということを説明された。

 宿の確保も無事に終え、この世界で初めて風呂に期待しつつダンジョンの事を知るためにギルドの出張所の場所を聞いて向かった。


 冒険者ギルド出張所という看板の建物へ入ってみると、中は人でごった返していてほとんどの受付に列をなして並んでいたが目的である案内所という受付だけは空いていていたのですぐにカードを出し色々聞くことにした。


「すみません。ダンジョンについて教えて欲しいんですけど」

「カードお預かりします。――えーと、初めての方ですね。まずそちらの立て看板をお読みください」


 立て看板がどこにあるのかと、キョロキョロと辺りを見回してみると、後ろの方にあったので見てみると。


  1・シルバーランク以上でなければ入る事ができない。(例外あり)

  2・入場料は一人大銀貨一枚とする。

  3・中での行動は全て自己責任にでありギルドはこれに一切関与しない。

  4・得たものはギルドに報告する義務を有する。

  5・許可なく得た物を売却などした場合は売却側はもちろん、買取側も罰せられる。

  6・他者を妨害するような行為を禁じ、悪質な場合は罪に問われる。

  7・魔法の使用などは細心の注意を払うべし。(密閉空間での火の魔法や、壁を壊すなどは危険である)

  8・救助などの依頼ががあった場合は、基本的に救助された者に依頼報酬などを支払う義務が発生する。

  9・必ず準備をしっかりしてから入ってください。

 10・五階層毎にボス部屋があり、扉を開いて中に入るともう戻ることはできなくなり、ボスを倒すか部屋に入った者が倒されるまで扉は開きません。

 11・ボスを倒すと次へ進む扉が現れ、その先の部屋にある魔法陣で地上に戻ることができ、魔法陣を使用せずさらに進むと次の階への階段があります。

 12・ボスは倒されて30分たちますと、同じボスが新たに出現します。 


 ……シルバーランク以上じゃないとダンジョンに入る事すらできないのかよ! おいおい、これで『人が集まらなかったので、試験は開催されません』とか言われたらゴラウに来た意味がなくなるな。こんな事ならホラブの町で試験の開催が決まるまで修行を続けて待ってればよかったかもしれないな……ま、風呂があっただけでも十分な収穫と言えるし試験が開かれなくてもここに来たことは無駄じゃないかったよな? とりあえず依頼をこなしに行くか。


 西門へ行くと衛兵に止められ、小都市ゴラウの全ての門には依頼などで外に出る場合の冒険者専用のものがあり、依頼を終えてゴラウに入る際にもこの専用門ならあまり待たずには入れるということを親切に教えてくれた。

 教えられた門から林へ移動しキラービーを探すと割と簡単に見つけ、こっちにまで気づいてなかったので強めの『ウィンドショット』で頭を撃ち抜き依頼の規定数倒して『倉庫アプリ』にしまっていった。

 サーペントとグレーウルフは見つからなかったので、奥の草原の方へ移動すると他の冒険者がパーティーを組んで狩りをしていたので、取り合いにならないように外れの方で目立たないように槍を使い倒していくことにしたのだが、サーペントはいたがグレーウルフを見つけることができなかったのでさらに奥へ行くと、いつの間にかグレーウルフの群れに囲まれてしまっていた。


 あれ、何で囲まれるまでシューティンググラスに反応なかったんだろ? おっと、とりあえず考えるのは後だな。


 囲んでいたのはグレーウルフの群れと確認し、すぐにハンドガン(CZ75Bサプレッサー)を出し、マルチロックで6体を射撃してすぐに囲いの崩れた方へ移動、振り返ってすぐに再度マルチロックからの射撃をしてからマガジンを具現化してハンドガンの残弾を撃ち尽くしてからマガジン交換をして残りのグレーウルフを撃ち倒した所で一分たちハンドガンが消えた。


 何とか倒せたけど、やっぱりある程度相手の動きの先を読んで撃たないと動いてる相手には当たらないな。ま、依頼書の分は全部完了したし、倒した魔物を『倉庫アプリ』に入れて安全な所に移動するか。


 林を抜けゴラウの近くまで移動してから『倉庫アプリ』にいれた魔物からの『能力複写』を試してみると、キラービーから[魔力感知]、グレーウルフから[気配遮断]という能力を得ることができた。


 ああ、[気配遮断]囲まれるまで気づけなかった原因はこれだな。この能力ってどうやって使えるようにすればいいんだろ?


 試した結果、自分自身には能力を付けることができなかったので、何故かと説明を見てみると魔力が無いと能力を得ることができないということが分かり、これじゃ能力複写しても意味が無いなと思っていたが、説明をさらに読んでいくと、スマホに能力をつけれるということが書いてあったので試してみることにした。


 『魔力感知をスマホに付与しますか?』YESをタップ『魔力感知付与に成功しました』失敗することもあるのか? 『ウェアラブル端末と能力同期しますか』これもYES『同期完了しました』

 [気配遮断]と以前得ていた[咆哮]も試したのだが、何故か[咆哮]の付与に失敗してしまった。


 [咆哮]は何で失敗したんだろ? [気配遮断]って、よく考えたら俺は魔力ないから普通にしてても半分くらい気配を遮断しているようなもんなんだよな、そこに[気配遮断]なんて使ったら姿を見られない限り誰にも気が付かれなくなるんじゃないのかな? てか、能力ってどうやって使うんだろ? 能力アプリとかないし……使い方がわらんな。ま、いいやもう夕方だしとりあえず依頼報告済まして夕食食べてから部屋で落ち着いてスマホを見てみるか。 


 門はカードを見せるだけですんなり入れ、その時に始めてゴラウに来た時にここは使えないのか聞いてみると、始めてきた場合は普通の門で登録をしないといけないという説明をしてくれた。

 そのままギルドに向かい受付は並ぶこともなく依頼報告を終わらせ、素材も一部買い取ってもらってから宿に向かった。

 宿の食堂で今日のディナーとあったシチュー、柔らかい白パン、サラダのセットを食べ宿のカウンターへ行き名前を言って宿泊代金の残りを前払いして部屋まで案内されカギを受け取り一息ついてからスマホを確認することにした。


 スマホの確認後とりあえずスマホレベルを15まで上げたみた。


  ・シューティンググラスにサーモ機能が追加。

  ・スマホを入れてるポーチの形が変わり、ポーチの外側に穴ができて入れたままで操作が可能にになった。

  ・スマホ本体のアプリなどは大きな変化は無かった。


 これといってめぼしいアプリも追加されなかったのでで残ったポイントは貯めておくことにした。


 レベル15なんだし、もう少し何かいいアプリとか出るかと思ってたんだけど、なにもなかったな。


 翌日、ギルドに行くとシルバーランク昇級試験が無事開催されることが決まったことが張り出されていた。


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