第十三話 薬草採集そして……

 部屋に入り明かりをつけようとスマホを出すと画面にメールの新着が一件あったので、とりあえず明かりをつけてからメールを見ることにした


 誰からだろうな? ってリュース以外からくることもないか。さて、今回のメールは何なんだろうな。

 

『前回書き忘れていましたが、クスノキさんの精神に関して生物殺傷に対しての忌避感軽減をしてあります』


 あ~、ちょっと気にはなってたんだよな。魔物とはいえ見た目は動物を殺すのに何の抵抗もなかったし、ましてや盗賊とはいえ人間を殺しても忌避感をあまり感じなかったもんな。でも、生き物を殺すことに忌避感抱かせないようなことするのは女神としてそれでいいのかな? ま、俺としてはそっちの方が精神的に楽だからいいんだけどね。ん、まだ続きがあるな。


『それとシューティンググラスですが、装着するだけである程度の使い方が分かるように設定しておきました。さらに追加としてクスノキさんは銃を使うようなので、目標を狙いやすくするために手に持った武器からポインターが出ているかの如く見えるようにしておきました。これは、銃以外の武器などにも対応しています。

 最後にこれは機能的にはあまり意味がないのですが、サイドのスイッチでサングラスのように曇った状態と、透明の状態を切り替えれるようにしました。あと、そちらからも私の方にメールが送れるようになってますので、電話だとあまり出れないことが多いので、何かあればメールでお知らせください』


 おお、ポインターか! これで狙いやすくなるな! 透明な状態でも閃光防御できるんだからサングラスになっても確かに意味ないな。そういえばこっちからもリュースに電話やメールできたんだっけ……すっかり忘れてたな。


 シューティンググラスの機能を色々試したい気もしたが、時間も遅かったので装着して寝ても問題ないかだけ試そうかなと思ったのだが、ここ数日風呂に入っていなかったので、肌がべたついていたり、髪がごわついていたりしたので、こういう異世界物の話によくある『浄化』とか言う魔法で綺麗にできないかと先に試してみると、イメージがしっかりできていたからなのか簡単に発動でき、身体はもちろんの事、服まで綺麗になった。

 おかげで風呂上がりのようなさっぱりした気分になったので、これならぐっすり眠れそうだなと思い、すぐにベッドに横になり寝ようとして、シューティンググラスを装着するのを忘れていたのを思い出し装着したのだが、装着するとすぐに頭の中にシューティンググラスの使い方が一気に流れてきて、すぐに使い方を理解することができのだが、情報量の多さに凄い頭痛に見舞われてしまい、痛みが治まるまで寝ることができなかったので後悔することになった。


 翌日の朝は、就寝前にスマホのアラームをセットしていなかったので、窓から差し込む日の光のまぶしさで目が覚めた。


 なんか、こんなにゆったりした朝は久しぶりな気がするな。てか、シューティンググラスつけたまま寝てもそれほど気にならないもんだな、これならうつぶせにでもならない限りは大丈夫そうだ。それに朝日くらいのまぶしさなら遮光しないみたいだし、使い勝手もよさそうだから基本は装着しとくかな?


 時計を見ると朝の七時を少し回った所だった。簡単に身支度を済ませ、装備は武器だけ装備せず、部屋にカギを閉めて、一階のカウンターにカギを預け一階の食堂で朝食を食べることにした。

 朝食はサンドイッチセット(サンドイッチ・サラダ・果実ジュース)800ギリクを注文し、味の方はサンドイッチは普通だったが、果実ジュースは数種類の果物を使ったミックスジュースの様なもので中々美味しく、サラダはとても新鮮で甘みもありかなり美味しかった。

 どうせならと、ついでに昼食用にもう一セットとサンドイッチを単品(300ギリク)で頼んで食器ごと持ち出したいと言ったら、洗って返してくれるなら食器の貸し出しの代金はタダでもいいと言われたので、それで納得し購入することにした。そして、代金の合計1,900ギリクを支払い、料理を受け取り倉庫に入れておいた。そして、寝る前に使った浄化の魔法の事を思い出し、皿などは魔法で洗ったりするのかと聞いてみたらそんな便利な魔法なんてあるわけないと言われた


 『浄化』って一般的な魔法じゃないみたいだから、人前ではしない方がいいかも知れないな。

 

 その後は、ギルドに寄らずに真っ直ぐ薬草採集に向かうことにした。

 昨晩ライラから教えて貰った薬草が生えてる場所は、町の南門から見える森の入り口付近にあるということで、薬草採集の際は必ず根を残しておくこと、それと根以外にも数本は残しておくのがルールだと教えられた。最後に、森の奥にも薬草はあるが魔物が多く生息するので決して入ってはいけないと釘を刺されていた。


 魔物か……そう言えば魔物の事に関してあんまり良く分かって無かったな……今晩にでも魔物のことについても聞いてみようかな?


 そんなことを考えながら歩いていたらすぐに南門に到着し、ちゃんと通れるかちょっと緊張していたが、門にいる衛兵にギルドカードを提示すると何の問題も無く通行許可が出た。ついでに門を通る時のルールを聞いてみると。

 ・門を通るには各種カード(商人カード・町民カード・ギルドカード・貴族カード・王族カード・特殊奴隷カード)が必要。

 ・一度入町税を払って町に入りそのあと外に出たた場合は一週間以内なら入る時に入町税はいらない。

 ・一度町を出てカードをなくした場合は、冒険者であればギルドに問い合わせの上、問題が無ければ新たに入町税を払えば町に入れる。

 という説明をしてもらった。


 門を出てすぐにナイフを装備し、念のためシューティンググラスの使い方などを再度確認し、依頼にあった薬草の生えてる場所へ移動して採集を開始する事にした。

 薬草の探し方は、まず目的となる薬草を見つけるため一つ一つの草を『鑑定』で確認し、目当てのミーリ草とヨムガル草が見つかったら、その薬草をじっくり観察して覚え、今度は『ターゲット』を発動し『ミーリ草』と発すると、目の前の草むらのどこにミーリ草があるのか矢印で示されていた。 


 これは便利だな、これで、一々探したり確認したりする必要が全くなくなったな。薬草採集チートだ!


 そう思いながら短剣で刈り取って『倉庫アプリ』に次々と入れていった。ヨムガル草もこの方法で探して採集した結果、ミーリ草x34、ヨムガル草x28を採集することができたのだが、もう少し採集したいのと、ちょっとシューティンググラスのポインターを使って魔物と戦闘してみたくて、ライラには止められていた森の奥へ少しだけ入ることにした。

 一応、短剣を構えて警戒して入って行ったが魔物と出会う事も無く、300mくらい進んだ所で草原に出た。確認してみると、辺り一面が探している二種類の薬草だらけだった。


 ちょっと行けばあるかと思ったけど、結構奥まで来ちゃったな。それにしても、なんでこんなところに群生してるんだろうな?


 そう思いつつ刈り取っていると、いきなり警報が鳴り、後方30m付近よりこちらに近づいてくる反応があった。振り返ってみると、そこには水色の楕円形の生き物がいた。


 おお! これって……あの雑魚キャラとして有名な魔物のスライムだよな?


 スライムに出会って感動して見ていたらスライムがいきなり突進してきて腹部にクリーンヒットされてしまった。


「うっ、痛ってー! なにこれ? スライムってこんなに攻撃力あるものなの?」 


 スライムなら攻撃されてもたかが知れてると思って舐めていたら、鎧を付けていたのに結構いいボディーブローを食らい、思いのほかダメージを受けて驚いていると、さらに左50m付近より新たな反応があったので、手早くスライムを倒そうと短剣を構え、飛びかかってきたスライムに対してカウンター気味に短剣を突き出して倒した。


 スマホを使わなくてもスライムくらいなら油断さえしなければ何とか倒せそうだな。おっと、もう一体なんかいたんだったな、今度はハンドガンを使いポインターとはどういう感じのものか試してみるか。ま、何となく予想はついてるんだけどな。


 すでに20m付近まで近づいてきた魔物は、商隊の時にも戦った事のあったアルミラージだった。

 スマホを出し、具現化アプリでハンドガンを具現化しようとしたが、銃声で他の魔物が寄ってきてしまわないようにサプレッサー(消音装置)を付けれないか試してみることにし、『CZ75Bサプレッサー』と打ち込み具現化して見ると、成功。いつものハンドガンの先端にサプレッサーが装着されていた。

 それをアルミラージに向けて構えて意識を向けてみると、銃口付近より赤いレーザー光線のようなものが出ているように見え、そのままアルミラージにレーザー光線戦を当てて引き金を三連続で引くと、レーザー光線の軌道をなぞるように銃弾が飛んで行き、狙った場所に三発が寸分たがわず命中した。


 おお! これは凄いな! これなら狙ったところに必ず当たるんじゃないのか? って、動かず止まった状態の相手だからあたりまえか。


 それでも十分な手ごたえを感じ、さっき倒したスライムとアルミラージを『倉庫アプリ』に入れようとしたのだが、スライムの方が溶けて小さなボールのようなものを残して消えてしまっていた。『鑑定』で見てみると、『スライム核』というものらしかった。ちなみにアルミラージは普通に死体として倉庫に入れることができた。

 その後、他の魔物と出会うことも無く薬草採集を続けた結果。合計がミーリ草x112、ヨムガル草x89となった。


 う~ん、薬草はとりあえずこれだけあればいいかな? 魔物はもう少し狩っていきたい気もするんだけどな~。この辺りを少し探索して『地図アプリ』の機能のこともあるし。


 時計を見てみると、まだ昼前だったのでせっかく昼食も買ってあることだしもう少し奥まで行ってスマホの地図アプリのマッピングの範囲を広げておきたいというのと、一人での魔物との戦いに慣れるためにも、もう少し戦って経験を積んでおきたいということもあり、森の奥へ進むことに決めた。

 そして、草原地帯を抜け小高い丘の林のような所に入り、『索敵』を起動すると前方約60m先から何かの反応があった。


 んー、木や草が邪魔でよく見えないな……あ、『望遠』使ってみるか。


 その場で身を低くして相手に気が付かれないように気を付けて、シューティンググラスの望遠機能を使って、反応のある方を拡大して見た。ちなみに望遠機能は『ズーム』と言うと拡大『アウト』と言うと縮小し、それぞれ『ストップ』と言うことで好きな倍率の位置で止まる。

 『望遠』でボアという大きい猪の魔物が一体いたのが見えたのだが、この望遠機能が不思議な物で、目では周りの景色が普通に見えているのに、頭の中ではボアのいるあたりが拡大された映像がリアルタイムで見えてるというもので、それを何故か違和感なく見ることができていた。


 この望遠機能ってのは、どういう原理か良く分からないけど便利なのは確かだな。狙撃スコープ使ってるるようなものだし、ポインターもあるからこれなら気づかれる前に狙撃できそうだな。


 ちょっと距離が遠いなと思いつつ、さっきと同じハンドガンを具現化して『ターゲット』を起動し、視界にとらえたボアの眉間の辺りを意識して『ロック』と言うと、意識した場所に緑色のマーカーが浮かんでいるように見えた。そのマーカーにーポインターの光線を当てると、マーカーが赤色に変わったので引鉄を引き狙撃すると見事に命中し、ボアが倒れた。それと同時に走って近づき、念のため頭に一発撃ち込み確実にしとめておいた。


 …………いまさらなんだけど、単発の狙撃なら別に銃とかじゃなくても『ストーンショット』とかの魔法でも良かったかもしれないな……これは具現化と魔法をその場にあった有用性で切り替えるなど色々と考えていかないといけないな。


 そんなことを考えながらボアから魔力を吸収してスマホの魔力を充填し、ボアを『倉庫アプリ』に入れ周りを警戒していると、周りより低くなっている窪地のような場所に何やら粗雑な建物が見えた。


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