第十四話 ゴブリン集落

 建物のある窪地をよく見てみると、周りを丘や切り立った崖に囲まれたような場所で、建物は一部を除いてそのほとんどが藁でできた簡素な建物が並んでいるという集落のようなものだった。


 こんな魔物が出るようなとこに集落ってなんか怪しいな。畑とか見えないから農民が住んでるとも思えない、かといって盗賊のアジトにしては建物がお粗末すぎるような気がするし……何がいるんだろ? ここからじゃ遠すぎるからもうちょっと近づいて『望遠』で見てみるか。


 音を立てないように慎重に近づいていき、見つからないように木の影に隠れて様子をうかがってみると、緑色の小さ目の人間のような生き物が確認できた。


 ん、あれって……もしかして、ゴブリン? ってやつなのかな? てか、この世界のゴブリンって魔物なのか亜人なのかどっちなんだろ? そうだ『鑑定』で確かめてみるか。


 『望遠』でズームし、ゴブリンと思われる生き物を視界にはっきりととらえ、『ターゲット』でロックしから『鑑定』で見てみると。


  【 名 前 】 ――

  【 魔物名 】 ゴブリン

  【 種 族 】 魔物

  【 性 別 】  男

  【 ランク 】 アイアン 

  【 レベル 】  5

  【 能 力 】 ――

  【 魔 法 】 ――

  【 称 号 】 ――

  【 備 考 】 ――


 やっぱりゴブリンなのか。そして魔物か、なら殺しても問題はないのか? というより結構町に近いから討伐しておいた方がいいんじゃないのかな? 


 現在地は集落までは約1㎞といった位置で、ちょっと遠すぎてゴブリンがどれだけいるかは確認できなかったため不明、この距離では具現化できる銃や魔法だと射程が足りず、ちょっと届きそうもない、仮に届いたとしても倒せるほどの威力が出ないであろう距離だった。ちなみに、『索敵』の有効範囲は約1㎞程度のようだった。


 う~ん、だめだな。せめて50mくらいまでは近づかないと確実に倒すことができるとは思えないよな……かといって近づいて行って囲まれたら生き残れる自信ないし……一旦町に戻ってギルドに伝えた方がいいのかな?


 そんなことを考えながら何かないかと辺りを見ていると、ゴブリン集落の入り口らしき道の反対方向にある崖の上からなら気づかれることなく催涙弾などを投げ込めるかもしれないと思い、少し危険だがゴブリン討伐することに決めて、崖の上に向けて慎重に移動を開始した。

 移動途中に、アルミラージやボアを見つけて素早く倒し、スマホの魔力を充填しながらなんとか目標としていた崖の上(集落より約30mの距離で、高さは約40mの位置)に移動することができ、そこから『望遠』で集落の様子を見ると、こちらに気が付いている様子は全くなかった。


 ここだと『サブマシンガン』でもなんとか届くとは思うんだけど、動いてるやつ相手だと命中精度落ちるだろうし、どうしたもんかな? んー、まずは『スタングレネード』を投げてゴブリンをおびき出し、次に『催涙手榴弾』を投げつけてできるだけ無力化、そこから近づいて行って『サブマシンガン』か『ハンドガン』で倒していく。と、こんな感じで行ってみるか。


 まずは『スタングレネード』を具現化したのだが、今回は試しに10秒後に起動することを強く意識して具現化し投げつけると狙い通りに10秒後に爆発し、光と音に驚いたゴブリンたちが建物(建物と言っても藁でできた粗末なもの)からわらわらとでてきたのを見て、今度は『催涙手榴弾』を先ほどと同じように10秒後起爆を意識して具現化し投げつけ、すぐに『イングラムM11』と打ち込んで、崖から集落へ安全に降りれそうなところに移動し、ガスがある程度引くのを待ちながら『索敵』でゴブリンの位置を把握していった。


 お、大分倒れたりうずくまってるのがいるぞ。結構催涙ガスが効いてるな~。さて、そろそろガスも引いてきたし一気に殲滅にかかりますか。


 先ほどの『サブマシンガン(イングラムM11)』を具現化し、すぐに移動しながら具現化アプリに『CZ75B』と打ち込んでおき、10m~20mの範囲にいるゴブリンの頭をポインターで狙って走りながら撃ちまくった。

 ポインターのおかげで走りながら撃っていたのにもかかわらず(ゴブリンが動きを止めていたのもあるんだが)銃弾は外れること無くゴブリンの頭に吸い込まれるように飛んで行った。


 ……なんかもう、これってもうリアルなFPSのゲームみたいだな。


 ポインターを敵に当てる・銃の引き金を引く・弾が敵に当たり敵が倒れて終わり・弾が切れたら銃を具現化してまたポインターを当てるの繰り返しという単純作業の合間にたまにゴブリンの死体から魔力を吸収して充填ということを繰り返していた。途中になにやら剣と盾を装備したゴブリン、杖を持ったゴブリンなんかも出て来きたが全てワンショットワンキルということを20分くらい続けていると周りに魔物の反応がなくなった。

 これで終わりかなと思ったら頭の中に一際大きい警報が鳴り響いた。見ると前方から2mほどあるゴブリンが大剣を右手に持ち、どこかサイズが合っていないように見える金属鎧を身に着けて大剣を持ち、その後ろに革鎧を着た2匹のゴブリンと普通のゴブリンたちを引き連れてこちらの方へと向かって来ていた。


 なんかでかいな……あれって、ここのリーダーって奴なのか?


 引き連れていたゴブリンどもは難なく撃ち殺せたのだが、大きいゴブリンの方は銃弾がことごとく金属鎧に弾かれ、頭を狙っても大剣でガードされて中々倒すことができなかった。


 げっ! あれを剣で防ぐのかよ! 何か他のゴブリンとは別格の強さだな……あ。


 銃弾を防がれてちょっと焦っていた俺に隙が生まれた。大ゴブリンはその隙を見逃さず、身体を左にひねり、大剣を腰だめに構え俺に向かって突進してきて目の前に来きて一気に大剣を振り抜くと、大剣は俺の頭を右側頭部から横薙ぎにした。そして俺は2mほど先の建物の中へ吹っ飛ばされてしまったところで一瞬意識が途切れた。


「――痛っってー! って、あれ? 頭を横から真っ二つにされて死んだと思ったのに、俺は何で生きてんだ?」


 吹き飛ばされ体中が痛かったが、斬られたはずの頭にはこれといって傷がなく、血も出ていなかったので不思議に思っていたのだが、まだ戦闘が終わったわけじゃないと気を引き締めて銃を具現化しようとスマホを見てみると、魔力量が大幅に減っていた。不思議に感じはしたが大ゴブリンがこちらに近づいてきているのを感じたので、残りの魔力で『ハンドガン』を具現化し、体中の痛みを押し殺して建物から飛び出し、鎧は銃弾が弾かれてしまうので、まずは大ゴブリンのむき出しの両太ももを狙い撃ち抜いた。

 大ゴブリンは太ももを撃ち抜かれ前のめりに倒れたが、すぐに起き上がろう両手を地面に着いたので、こちらも鎧に覆われていない両上腕部を撃ち抜き、起き上がれないようにしてから近づいていき、兜を蹴って外し、むき出しになったその緑色の頭に銃弾を2発撃ち込み止めを刺して、辺りを警戒したが魔物の反応はもう無かった。

 

 さすがに、死んだ……よな? 辺りにも……敵意があるものの反応とかは……無しだな。や、やっと終わったか……あれ? なんか力が……。


 やっと戦闘が終わったと気が抜けると、膝が震えその場に崩れ落ちてしまった。そして、元の世界から通しても初めて死ぬかもしれないと思った戦闘体験に今更ながら恐怖して体の震えが止まらなくなってしまった。

 震えが止まるのを待って、周りのゴブリンの死体からに魔力を吸収してスマホに魔力を充填し、自身に『回復』をかけ怪我を治すと、すぐに体の痛みは消えた。

 このまま少し休憩したい気分だったが、ここは一応森の中だし、ゴブリンの血の匂いを嗅ぎつけて他の魔物や獣が来てしまうかもしれないと思い、とりあえず目につくゴブリン全てを倉庫に収納しつつ辺りを『索敵』で回りを見てみると、この集落で一番大きな建物(この集落の中では唯一なんとか小屋と呼べる程度の建物)の中に複数体の生体反応があった。

 敵意がある反応はなかったが、警戒しつつ建物に近づき、用心のため銃を具現化して扉(扉と言っても布がかけられただけ)を開け中の様子を見ると、何と言うか……裸でひどい有様の女性が2人が藁の上に横たわっていた。とりあえず索敵で生体反応があったのは分かっていたので、死んではいないはずなのだが、一人は白目を剝き口からは泡を吹いて意識を失っているようで、もう一人は意識はあるようなのだが、生気のないうつろな目で中空の一点を見つめ、半笑いで何やらぶつぶつとつぶやき続けていた。

 目の前に全裸の女性がいるなど普段なら劣情を誘われてしまう光景なのだが、現状はとてもそんな気分にはなれず、むしろ目を背けたくなるほどだった。とりあえず小屋の中にあった何かの毛皮を2枚を取り、それぞれ女性にかぶせて、毛皮ごと浄化をかけて綺麗にし、次に『回復』をかけておいた。

 きれいになった二人を見ると、片方は茶髪ショートで日に焼けた肌のかわいいスポーツ少女といった感じの女性で、もう片方は赤髪で肩くらいまでのストレートの清楚な感じで中々の美人でともに20歳前後のように見えた。一応、サングラス状態だと怪しまれるかと思い、シューティンググラスを透明にしておいた。

 精神の方は分からないけど身体の方はこれで大丈夫だろうと思い、反応はなかったが他に捕らえられている人はいないか集落の建物を一つ一つ探してみたが誰も発見できず、そして最後の一軒となった。

 なぜこの一軒を最後にしたかと言うと、自分でも理由は分からなかったのだが、何故か近づくのがためらわれていたからだったのだが、他はすべて調べたので意を決してその建物に入り中の様子を見てみることにしたのだが、すぐに中を見たことを後悔することになった。

 その建物は他の建物より少し大きくさっきの小屋よりは少し小さい建物で、その中は木の実やアルミラージの死体などが置いてあり、どうやら食料を保存する場所だったようで、他に置いてあったのが……。


「え……あ……う、そ……ダルク、なの?」


 後ろから聞こえてきた女性の声に驚き振り返ると、先程ぶつぶつとつぶやいていた女性が毛皮を抱きしめた状態で入口に立っていた。そして、その女性の視線は建物の中に転がっていた男性の生首に注がれていた。そう、その建物に置いてあったのは成人男性の頭……傷だらけの生首だった。


「う、嘘よ……嘘、嘘――、ダルクー! なんで、どうして、ひどい、こんな、あああ、うわぁぁぁーーー!」


 女性は建物の中に『嘘』と言う言葉を繰り返しながら入ってきて、その生首を抱きしめて絶叫していた。俺はどうすることもできず、泣いている女性を見ていることしかできなかった。

――――――――

――――

――


 ひとしきり泣いた後、長い沈黙ののちに彼女が抑揚もなく「私は――」と、まるで機械のように語り始めた。


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