彼女を求めたらそこは地獄でした
悠油。
プロローグ
其処はある建物の屋上。
突き抜けるような風の音が、今も少しばかり騒々しい。
街を照らす明かりは人の多さを鮮明にする。
街行く人々は今も、のらりくらりとその中を彷徨っているように見える。
その輝かしい光とは裏腹に、暗くしんみりとしたその場所は夜の冷たさをより一層加速させる。
そんな中で1人寂しく、屋上の縁で座りながら足をバタバタとしている少女がいた。
「ここは寒いねー。」
誰もいるはずのないその場所で、彼女は白い息を吐きながらそう口にした。
踵を縁に打ち付ける音だけが聞こえる。
少女はその街中を俯瞰しながら再度口を開ける。
「人間ってやっぱり勿体無いと思う。溢れるほど持っていても、それを全て広げることはできないんだから。———そして、結局最後には世界にそれをかえしてしまうのだから。」
少女の顔はどこか寂しそうだった。
その目はまるで世界を諦めてしまったかのようで——
「今回はもう少し暖かいところがいいなあ。それとも君はまた、これを徒労というのかい?」
その声に応えるものはいない。
それはそうだ。
だってもともと、こいつは答えなんて求めていないのだから。
此処はある建物の屋上。
突き抜けるような風の音は、今はもう聞こえない。
彼女を求めたらそこは地獄でした 悠油。 @mun4980000
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。彼女を求めたらそこは地獄でしたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます