彼女を求めたらそこは地獄でした

悠油。

プロローグ

 其処はある建物の屋上。

 突き抜けるような風の音が、今も少しばかり騒々しい。

 街を照らす明かりは人の多さを鮮明にする。

 街行く人々は今も、のらりくらりとその中を彷徨っているように見える。

 その輝かしい光とは裏腹に、暗くしんみりとしたその場所は夜の冷たさをより一層加速させる。

 そんな中で1人寂しく、屋上の縁で座りながら足をバタバタとしている少女がいた。


「ここは寒いねー。」


 誰もいるはずのないその場所で、彼女は白い息を吐きながらそう口にした。

 踵を縁に打ち付ける音だけが聞こえる。

 少女はその街中を俯瞰しながら再度口を開ける。


「人間ってやっぱり勿体無いと思う。溢れるほど持っていても、それを全て広げることはできないんだから。———そして、結局最後には世界にそれをかえしてしまうのだから。」


 少女の顔はどこか寂しそうだった。

 その目はまるで世界を諦めてしまったかのようで——


「今回はもう少し暖かいところがいいなあ。それとも君はまた、これを徒労というのかい?」


 その声に応えるものはいない。

 それはそうだ。

 だってもともと、こいつは答えなんて求めていないのだから。


 此処はある建物の屋上。

 突き抜けるような風の音は、今はもう聞こえない。

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彼女を求めたらそこは地獄でした 悠油。 @mun4980000

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