40話 助けて下さい!

「あんた!!」

すっかりまともな姿を取り戻した女妖怪は、大福ねずみの姿を見て叫びました。

「小指は達者ですか~?」

緊張の再開です。

 女妖怪は、とりあえず自分の体をチェックしています。

「今度はどこも食われてないわね……」

一通りチェックし終えると、またしても存在を救われることになった大福ねずみを、じっと見つめました。


「その節は、すまんこってす~」

 大福ねずみは先手必勝で、女妖怪に謝りました。ちら見したところ、やはり女妖怪の小指の先はありませんでした。大福ねずみのうんこになった小指は、彼女のもとへ戻らなかったようです。

 女妖怪は、ため息を吐きました。

「また助けられたし、まぁ、いいわ」

案外寛大なようで、怒って暴行される心配は無さそうです。大福ねずみは緊張を解いて、思わぬ知り合いとの再会に、何か会話でもしようかという気持ちになりました。打ち解けてから、姉御の元へ戻るために力を貸してもらおうと言う算段です。


「すぐ消えかけるの~?」

「最近やばいわね。マジで忘れ去られまくってるわ。アンタも私のこと、すっかり忘れてたでしょ」

 大福ねずみは、素直に頷きました。ねずみ脳なので、記憶するのは苦手です。何度も消える恐怖に直面しているであろう女妖怪は、前会った時より、性格がやさぐれている感じがしました。見た目は前と同じく、色っぽくて巨乳でスタイルも抜群なので、かなり苦労してそうな派手な美人という印象から、水商売臭が漂って来ます。


「でもさ~妖怪らしくないよね~。人間とかわんないね」

大福ねずみの言葉に、女妖怪は頷きました。

「妖怪らしかった部分は、無くなっちゃったわよ。今の人間にとっては、下らないネタぐらいにしかならないだろうし。怖がったり笑ったり、そんな風に思えないみたい。そして、こんな人受けする姿になっちゃって消えかけてるの」

そう言って、場末のバーのママのような笑い方をしました。

 流行りもの妖怪の哀愁でした。


「と、言うことで、助けて下さい~~!!」

 話が長くなりそうだと危惧した大福ねずみは、空気を無視していきなり叫びました。

「何よいきなり! 勝手なネズミね!!」

バーママ妖怪はちょっと怒りましたが、大福ねずみが張り詰めた雰囲気を醸し出しているので、どうしたのよ、と話を振ってくれました。

 大人な対応に勇気づけられた大福ねずみは、姉御のこと、ギャルズのことなど、今までの経緯を遠慮なく説明しました。バーママ妖怪は、絶妙な相槌の聞き上手でした。


「姉御の所に帰りたいんだよ~」

必死に訴えました。

「へぇー。でも私、姉御の家なんか知らないわよ」

もっともな返答です。

「だよね~」


大福ねずみは、落ち込みました。

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