5話 デリカシーの無い女
「飯食ってうんこばっかしてねぇで、外にいけよ。小動物らしく、走り回れ。善行を積め」
大福ねずみは、いきなり姉御に怒られました。Aカップと呼びすぎて吊るされまくったので、主従関係が確定し、姉御と呼ぶようになりました。
部屋の上のほうを見ると、横に洗濯干し用の紐が張られています。紐の左端の方の洗濯バサミには、「大福天誅用」という紙が挟まれていました。少し、しっぽがハゲました。
「雨だからお休み~」
雨は降っていませんでした。姉御は一瞬手を上げましたが、大福ねずみのスタートダッシュを見て、諦めました。姉御はずっとパソコンに向かっていて、仕事だから邪魔するなと言い張っているので、暇でした。
「精が出ますね~」
姉御の肩によじ登ってみました。
「エロサイトじゃねぇよ!」
大福ねずみはがっかりしました。
「そういやさ、お前は、今まで良いことしたことあるわけ?」
突然、痛い質問をされました。
「巨乳の美女を助けた。巨乳の」
一瞬、空気が張り詰めましたが、姉御は乳ネタに飽きてきたようで、「あっそ」と軽く流されました。
「お前さ、そんなことばっかり言ってるよな。やっぱ雄だよな、間違いなく」
突然姉御に、鷲掴みにされて持ち上げられました。
「イヤ――! 見ないで――!」
裏返しにされて、至近距離で恥ずかしい所を見られてしまいました。
もふもふ毛に覆われてはいても、明るいところで女にこんな屈辱を受けるとは、想像もしませんでした。
「よくわかんねぇな。小さすぎて」
しかも、言葉の暴力まで飛び出す始末。
大福ねずみは、ショックをやり過ごすために、部屋の隅でしばらく丸くなりました。案外ナイーブなのです。
「酷い、男の心を確実にエグったよ~」
「うわーウジウジうぜ――」
男のプライドを打ち砕いた本人は、明らかに逆切れしています。恨みをはらすにも、体格差がありすぎました。しかし、男の大福ねずみは、このまま事を終わらせるわけにはいきません。デリカシーの無い女に、正義の復讐を遂げることを決意します。ねずみ脳をフル回転させて、討ち死に覚悟の策を捻り出しました。
チャンスは、夜に訪れました。姉御の入浴です。大福ねずみは、風呂場に入る姉御の足元を静かにすり抜け、うまく忍び込みました。そして、姉御が浸かっている浴槽の縁に躍り出ました。
「パンナコッタ! 小さな森と、貧相な丘が二つ見えます!」
叫びました。
そして、むんずと捕まりました。
「シンクロとバンジーどっちだ。選べ」
新企画のシンクロに興味が湧きましたが、死の香りがします。
「向こうでお待ちしております~」
大福ねずみは、吊るされ慣れているほうの罰を選びました。所詮ネズミ脳から捻りだされたネタは、いつもの貧乳攻撃でした。しかも、生で女の乳を見たのに、全然心が躍りません。
「せめて、死んでもいいと思えるぐらい、見るだけで幸せになれるボディだったなら報われたのに~」
得たものは少なく、失ったものは多い一日でした。
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